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67話 冤罪
しおりを挟む「ヴィクトリア・メイスフィールド。貴方をクララ嬢の殺害容疑で拘束させてもう。」
「それは、いったいどういうことでしょうか?」
何故、いきなり犯罪の容疑をかけられているのか全く分からなかった。
「……今日、教会を出て過ぎに近くで爆発騒ぎがあった、こちらにも聞こえるほどの大きさだったと聞く。」
「はい、確かに聞きました。窓の外を見ると教会の近くで煙が上がっているのが見えました……。」
「その騒ぎに乗じて、私とクララ嬢が二人になったのを見計らって襲撃してきた者たちがいた。」
淡々と感情の読めない声で話すアレクに、すこしずつ自分の身に何か良くないことが起きているのが分かった。
「襲撃した男たちは私がすぐに撃退したし、捕縛することができたがその襲撃者達は今回の爆破事件も襲撃もすべて貴方から依頼されたのだと自白している。」
「そんなっ! 私はそんなことしておりません!!」
明らかに誰かが私を陥れようとしている。アレクの目が一瞬揺らいだのが見えた。
「……しかし、貴方が襲撃者の1人と密会しているところを見たという一般人が出てきた。」
「そんなことはありえません! 私は王宮に来てからは外へは出ておりません!!」
「それを証明できる者はいるのか?」
「メイがおります! 彼女はずっと私に付いておりました。王宮から出ていないと証明できるはずです。」
「しかし、彼女は君の……メイスフィールド家のメイドだ。口裏を合わせたのかもしれない。」
「そんなっ……。」
それまで黙って二人のやり取りを見ていたクララが口を開いた。
「ヴィクトリアさん!! 私がアレク様と仲良くしているのが嫌でこんなことしたんですよね!? だって、学園の時も婚約者だったジェフリー様と少し話しただけでも私に辛く当たってきたのだもの。」
今更、学園時代の事を持ち出してきた。あまりに彼女が無節操に男性に過剰なスキンシップを取るので少し窘めただけなのに、彼女にはそれが『虐めた』事になるらしい。
「……私は、男性との距離は節度を持って接するようにとご忠告しただけですわ。」
「またそうやって、睨みつける……。アレクさまぁ~、私こわいですぅ~。」
アレクの腕を両手でぎゅっと掴みますます体を寄せ付けた。
「とにかく、事件の詳細が判明するまで貴方を一時、拘束させてもらう。すまないがこちらの指示に従ってもらえないだろうか。」
「……わかりましたわ。」
これ以上、何を言っても疑われていることに変わりはないので素直に従うことにした。
「では貴族牢へと案内する。明日、聞き取りを行う。」
「貴族牢……。」
貴族牢とは文字通り、罪を犯した貴族が収監される部屋で、一般と違って簡素ではあるが部屋はそれなりに整えられている。しかし、窓の外は鉄柵がされ脱出困難になっており、扉の前には見張りの騎士が常時立っている。
つまり私はもうすでに犯罪者として扱われているのね。
「私が案内しますのでついてきてもらえますか?」
アレクの部下のロイさんが私の目の前に立った。
「はい…。」
ロイさんと私は、王宮を出て貴族牢のある塔へと歩く。
「ヴィクトリア嬢、こんなことになって申し訳ない。アレクもどうにかお嬢を助けようとしていたのだけど証人が出てきてからはどうしようもなかったんだよ。」
人気がいない廊下を二人で歩いていると、ロイさんが話しかけてきた。
「その証人の方は確かに私だとおっしゃったのですか?」
「学園の給仕の仕事をしている時があって、その時に君を知ったらしい。」
「そうなのですか……。」
「その証人が俺の知り合いでね。まさかと思って何度も確認したんだけど……。」
「………。」
確実に私の方に分が悪くなっている。それでも貴族牢に入れられては無実を証明する手立てがない。
「とにかく、今は大人しくしておいてね。俺達が何とかするから!」
ロイさんが私を元気づけるように明るい声で話す。
「私は今回の件に無関係です。それだけでも信じていただければ。」
「うん、わかっているよ。」
貴族牢に入ると意外と綺麗な部屋になっていた。ベッドにテーブルと椅子が置いてあり、紅茶を作るセットも置かれていてお菓子等もある。ただ、やはり窓の外へは出られないように頑丈な鉄柵が付けられていた。
「これからどうなるのかしら。」
窓の鉄柵の隙間から見える月を眺めながら、眠れない夜になりそうだとヴィクトリアは思った。
その日の夜、王宮でも事件が起きる。
アルフレッド王子の婚約者でもあるマーガレットが忽然と姿を消したのである。
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