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80話 古代竜の目覚め(side:アレク、ヴィクトリア)
しおりを挟む― アレク視点 ―
「リアッー!!!!!」
ジェフリーに投げ飛ばされて魔法陣の中へヴィクトリアが吸い込まれていく。未だに俺の腕を掴んでいるクララを乱暴に振りほどき、魔法陣へと走り寄り俺も中へと飛び込もうとしたが、見えない壁に阻まれて中へ入ることができない。
「ハッ、ハハハハハッ!!これで古代竜が復活するんだ!!」
「っ!!貴様!!!!」
近くにいたジェフリーを怒り感情と共に殴り飛ばした。どうにか中に入れないかと体当たりをするがビクともしない。
「クソッ、どうすりゃいいんだ。…いや、待てよ。」
そういえば、ヴィクトリアの近くにリュウがいたはず、辺りを見回すがリュウの姿が見えない。
もしかしてあの時、リュウも一緒に魔法陣へと入ったのか?
アレクの中で僅かな希望が見えてきた。
「アレクさまぁ~、突き飛ばすなんて、酷いです~。」
また、あの女が性懲りもなく俺に腕を絡ませてきた。
「ジェフリー、そしてクララ。お前達を捕縛させてもらう。もう、いいぞ、出てこい。こいつらを捕縛せよ!魔術師達も一人残らずだ!!」
木の陰に隠れていた部下達が一斉に飛び出してきた。クララに気づかれぬように部下達は距離を置いて俺の後をずっとついてきていた。
「何でよ!なんで私がこんなことになるのよ!!」
取り押さえようとする騎士に激しく抵抗して俺を睨みつけた。
「そんなこともわからないのか?お前達は二人で共謀してヴィクトリアを禁忌とされる古代竜の生贄にしようとした。立派な殺人未遂だ。そして、古代竜の復活を企てた国家転覆罪も適用されるな。後はリアに冤罪を着せようとしたのもあったな。」
「おい!いいのか、クララがいないと古代竜が復活した後にこの国は大変なことになるぞ!!」
ジェフリーもまた、騎士達に押さえつけられながら大声を上げた。
「それなら問題ない。本物の聖女がもうすぐここに来るからな。」
「は?何を馬鹿な!!」
「何を言っているのよ!本物の聖女は私なのよ!!」
俺の言葉を聞いた二人はより一層、ギャーギャーと騒ぎ出した。
「あらあら、ずいぶんと賑やかね。何か楽しい事でもあったのかしら?」
おっとりとした声が聞こえたかと思うと、年配の男女がゆっくりとアレク達の元へと歩いてきた。
「エマ様、ご足労おかけして申し訳ございません。」
「いいのよ~。こうなるじゃないかと思っていたわ。」
「おいっ、なんだこのババ…ぐふっ!!」
ジェフリーが『ババア』と言いかけようとして思いっ切り、夫であるアンドリューに顔を踏みつけられた。
「お前たちに教えてやる。この方が現在の聖女様だ。」
「なっ!?」
「そんなわけあるわけない!聖女は私よっ!!」
アレクの言葉にジェフリーが絶句し、クララは物凄い形相で食って掛かった。
「エマ様、ヴィクトリアが魔法陣の中に…。リュウも一緒らしいのですが、助けることはできますか?」
そんなクララ達の反応を無視して、アレクはエマにヴィクトリア状況を説明する。
「あら?リュウちゃんも一緒なら、大丈夫よ。だってあの子は……。」
その後のエマの言葉にその場にいる者が皆、仰天したのだった。
― ヴィクトリア視点 ―
(りあ、だいじょうぶ?)
目も開けられないような眩しい光の中でリュウの声が聞こえた。
「リュウ、あなたも一緒に来ちゃったの?」
(うん!だって、あんじゅとあれくにやくそくしたもん。りあをまもるって。)
体はどんどん下へとゆっくりと落ちていくような感覚だ。リュウが胸のあたりにそっと乗ったのを感じて両腕でやさしく抱きしめた。
『我を起こすとは何者かと思えば、愛しの我が子が会いに来てくれたのかの?』
突然、威厳のある声が響き渡った。
「え?愛しの我が子??」
恐る恐るヴィクトリアが目を開けるとそこには1匹の巨大な白い竜がこちらの覗き込むように横たわっていた。ヴィクトリアはいつの間にか地面に座っていた。
(やっぱり、おかあさまだったんだね!!なんだかそんなきがしたんだ。)
リュウがヴィクトリアの胸から飛び出してその竜の前へと飛んでいった。
『おお!我が子よ。大きくなったではないか。其方を聖女に預けたときはまだ卵だったのでな。うむ、私に似て、凛々しい顔つきをしておる。』
(えへへ。ぼくもね、おかあさまにあいたかった。)
竜の大きな頬にリュウが額を擦りつける様子をヴィクトリアは微笑ましく眺めていた。
『さて、そこにいる人間の娘よ。どうやら、聖女の血筋のようだが、なぜこのような乱暴なやり方で我を目覚めさせようとしたのじゃ。』
「申し訳ございません。古代竜様。良からぬ人間の仕業で私は生贄としてここに来させられたのです。決して私が古代竜様の眠りを妨げようとしたわけじゃありません。」
『…いつの時代も馬鹿な考えをする者がいるものじゃ。ところで、リュウは使役の契約を結んでいるようじゃが。契約主を知っておるか?』
「それは…。その。」
リュウをテイムしたのはアレクだが、それを正直に言ってもいいのだろうかとヴィクトリアは言い淀んでしまった。
『いやいや、我は怒っているのではない。子供とはいえ、竜を手名付けるほどの人間は誰か気になってな。』
(あれくはいいやつだよ!おいしいものいっぱいくれる!!)
「……リュウの契約主はこの国の第一王子のアレックス殿下です。」
ヴィクトリアは正直に話すことにした。この竜なら悪いことにはならないだろう。
(りあは、あれくのおよめさんだよ!!)
「こらっ!リュウ。まだお嫁さんにはなってないわよ!!」
リュウが飛んでもないことを言い出して慌てて訂正する。
『ああ、なるほど。先ほどより地上からお主らの事を案じている者がおるな。…ほう、聖女も来ておるではないか。ふむ、ならば少しの間だけでも、聖女とそのアレックスとやらに会いに行くか。娘、我の背中に乗るがよい。』
「は、はい!」
ヴィクトリアはリュウと共に古代竜の上に乗って鬣に掴まる。それと同時に古代竜が上へと飛び始めた。
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