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79話 二人の転生者
しおりを挟む「ヴィクトリア!!無事か!?」
「アレク様!」
ヴィクトリアはアレクが助けに来てくれた事に歓喜したが、それと同時にクララも同じ馬に乗っていることに複雑な気持ちになった。
「アレクさまぁ~、私も降ろしてください~。」
アレクがさっと馬から降りてヴィクトリアの元へと向かおうとすると馬に乗ったままのクララが両手を差し出して下ろすようにとせがんだ。
「……。」
「キャッ。」
アレクは無表情でクララが下りやすいように片手を差し出したのだが、下にいるアレクへ抱き着く様に落ちた。アレクはすぐにクララを引き剥がしてヴィクトリアの元へ向かおうとしたのだが、またまた、クララに腕を取られる。
「アレク様、あちらは危険です!行かないでください!!」
「何を……。」
「ヴィクトリアさん、もうこんなことは止めてください!!」
「え?」
二人のやり取りを見ていたヴィクトリアはいきなりクララにそう言われて目が点になった。
「クララさん、いきなり何を言っているの?」
「私は、知っているんです!あなたとあなたの父親が古代竜を使ってこの国を乗っ取ろうと計画していることを!!」
「はぁあああ!?」
彼女は一体何を言いだすのだ。
「アレク様、以前にも言ったようにヴィクトリアさんのお父さんがアレク様のお母さまを毒殺した犯人なんですよ。騙されないでください!!」
「なっ・・!?」
あまりの突拍子もない話に言葉が出てこない。
「クララさん、言い掛かりは止めてください。私のお父様が何故、アレク様のお母さまを毒殺したとおっしゃるのですか?」
深呼吸をして気持ちを落ち着かせてからクララに聞いてみた。
「そんなの知らないわよ!私は聖女なのだから、すべてお見通しなのよ!!」
「はぁ…、お話になりませんわね。それにマジラバでは、黒幕にメイスフィールドの名は一切出てこなかったわよ。」
「っ!?やっぱり、あなた転生者だったのね!!」
ヴィクトリアの言葉に、クララの顔色が変わった。
「あなたもそうだったのね。最初からそうじゃないかと疑ってはいたのだけど。」
「だったらわかるでしょ!!この世界はヒロインであるクララのモノなのよ。それを邪魔ばかりして、モブはモブらしく大人しくしときなさいよ!」
クララは先ほどのアレクに見せていた可愛らしい表情とは打って変わって憎悪に満ちた顔でヴィクトリアを睨みつけた。
「勘違いしているようだけど、この世界は『ヒロインの為の世界』ではないわよ。」
「な、なにを言っているのよ。ここはマジラバの世界よ。だってだってアルフレッド王子もアレックス王子もいるじゃない、悪役令嬢のあなたも!」
「そうね。姿かたち、名前が一緒かもしれない。でもゲームとは違うわ、みんな心のある人間なのよ。それは前世の世界と変わらない。本当はわかっているのでしょう?」
「知らない!だって、ヒロインは幸せにならなきゃだもの。不幸な私の為に神様がプレゼントしてくれたんだから!私は誰からも愛されるヒロインになりたいのっ!!だから邪魔しないでよ!!!」
「クララをこれ以上、イジメるな……。」
「え…?」
後ろからジェフリーの声が聞こえて、いきなり腕を強く引っ張られた。
気が付いた時には体を魔法陣に突き飛ばされた後だった。
魔法陣の中に倒れ込むと、魔法陣の光が増してヴィクトリアの体がそのまま地面へ吸い込まれていった。
「リアッー!!!!!」
目が開けられぬほどの光の中、遠くの方でアレクが私の名前を呼んでいる声が聞こえた。
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