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目覚めた生贄
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しおりを挟む由椰が寝かされていたのは、畳の敷布の上だった。ひさしぶりに目にする部屋の灯りが眩しい。目を細めながら由椰が体を起こすと、男たちの会話がピタリと止んだ。
見知らぬ場所で、三人の男たちからジッと凝視され、由椰は白い着物の袖をぎゅっと握った。
花嫁装束の由椰を見下ろす男たちは、それぞれに整った顔立ちをしており、由椰がかつて暮らしていた村の人たちには見られなかったような珍しい眼の色をしている。なかでも、真ん中に立つ黒髪の男の瞳は輝く金色で、三人の中でもとりわけ美しかった。
金眼の男の背中には黒い翼が生えており、見た目は人に近いが、彼が人ならず者だということがわかる。
その両脇には、栗色の髪に琥珀色の瞳の男と、黒髪に紫の瞳の男が従者のように控えている。紫の瞳の男の背には、金眼の男と同様に黒い翼があった。
(随分と長い間待たされたような気がするけれど、ようやく私が勤めを果たせるときがきたのでしょうか……)
ぼんやりとそう思いながら由椰が頭を垂れようとすると、栗色の髪の男が喜びに目を輝かせた。
「その瞳の色、やはり伊世様……」
栗毛の男の言葉に、由椰はドキリとして、慌てて自身の右側の目を手で覆う。
初めて会う人間は、まずだいたい、由椰の瞳の色に驚く。由椰の瞳は左右で色が異なっていて、左側は異国人だったという父譲りの青色、右側は獣の目のような金色だ。
生まれてから一度も鏡を覗いたことのない由椰にはわからないが、右側の金眼はときどき鋭く光っているように見えるらしい。村の人たちからは「呪いの瞳だ」と言われて不気味がられた。
幼い頃に病気で死んだ母は、由椰のことを可愛がり慈しんでくれたが、そんな母も、由椰のオッドアイについてはつねに気にかけていた。
『外に出るときは、なるべく右側の目は隠しなさい』
外に出るとき、母は由椰の金色の右目を前髪で覆うように隠した。
これは、人に見せてはいけないもの……。
幼い頃から、そんな刷り込みをされてきた由椰が、自ら右目を人前に晒すことはない。けれど、生贄として神無司山の祠に閉じ込められる前、化粧を施され、額を晒すようにして髪を結われため、今は右目を手で覆う以外に隠しようがなかった。
「見苦しいものをお見せして、申し訳ございません……」
膝を折って居住いを正すと、由椰は三人の男たちの前で頭を垂れた。
「何を言っておられるのですか。烏月様と同じ色のその瞳こそ、あなたが伊世様であるなによりの証拠ではないですか……! ですから、どうか、お顔をあげてください」
「烏月様の許可なく勝手なことをするな。無礼だぞ、アホ狸」
由椰の顔をあげさせようとした栗毛の男を、紫の瞳の男が冷たい目をして制する。
「誰がアホだ。お前だって見ただろう、この方の瞳の色を。この方は、間違いなく伊世様だ」
栗毛の男が言うと、目の前で跪く由椰のことをじっと見つめていた金眼の男が、ゆるりと首を横に振った。
「いや……、違う」
「ですが、烏月様……!」
金眼の男は、名を烏月というらしい。栗色の髪の男が納得のいかない目で訴えると、烏月が肩をすくめて息を吐いた。
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