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Ⅲ
しおりを挟むジリリリリリリリリ――。
耳元で、目覚まし時計の音がします。
目覚まし時計を止めて、ベッドから体を起こしたまりあは、枕元を見てびっくりしました。
そこに、黒猫のぬいぐるみがちょこんと礼儀正しく座っていたからです。
ぬいぐるみは、まりあが昨日出会った黒猫のクリスにそっくりです。首には、クリスがしていたこと同じ色の鈴までついていました。
あたし、夢を見ていたの――?
まりあは枕元に座る黒猫のぬいぐるみを見つめて思いました。
ぬいぐるみはきっと、パパとママからのクリスマスプレゼントなのでしょう。
それで、あんな不思議な夢を見たのかもしれません。
でも、どこからが夢だったのでしょう。
まりあは首をかしげると、黒猫のぬいぐるみを抱きかかえて部屋を出ました。
階段を下りて、リビングのドアを開けると、ママがキッチンの向こうから顔を出します。
「おはよう、まりあ」
「おはよう」
まりあがあいさつを返すと、ママは後ろに何か隠しながら、にこにことまりあに近づいてきました。
「メリークリスマス! はい。パパとママからプレゼント」
「え?」
ママが差し出したのは、クリスマス柄の包装紙に赤いリボンのかかった箱でした。
まりあは腕の中の黒猫のぬいぐるみとリボンのかかった箱を交互に見てから、ママの顔を見上げました。
「この猫のぬいぐるみがママ達からのクリスマスプレゼントじゃなかったの?」
「ぬいぐるみ? それは知らないわよ」
ママがまりあに抱かれている黒猫のぬいぐるみをのぞき込んで首をかしげます。
「やっぱり夢じゃなかったんだ……」
「え?」
まりあのひとり言に、ママが不思議そうな顔をしました。
「その猫のぬいぐるみどうしたの? 誰かにもらったの?」
不思議そうなたずねてくるママに、まりあはにっこりと笑い返します。
「そう。サンタクロースからのプレゼントだよ」
そう言うと、まりあの腕の中で黒猫がニヤリといたずらっぽく笑いました。
チリン。
聞き覚えのある鈴の音が小さく鳴ります。
まりあは黒猫のぬいぐるみのやわらかな体を、やさしくそっと抱きしめました。
Fin.
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