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2.離縁の雨
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しおりを挟むところが……。どういうわけか、四日目の朝を迎えても、雨は降り続いていた。
花嫁の誕生日から四日が経っても雨がやまない。
これは長年龍神様に花嫁を捧げてきた竜堂家にとって、初めての出来事だった。
異例の事態に驚いた竜堂家の当主が書庫に保管してある古い文献をいくつも漁ったらしいのだが……。
花嫁の十六歳の誕生日を三日過ぎても、離縁の雨が降り止まなかったという記録は見つからない。
それから五日が過ぎ、一週間が過ぎても離縁の雨はやまなかった。
雨はときに弱まったり激しくなったりしながら降り続き、ついには十日が過ぎたのだ。
降り続く雨は、美雲神社の外でひどい水害をもたらした。
川の増水や氾濫、家への浸水、田畑や家畜の損害。そういうことに困った人たちが、美雲神社に押しかけてきた。
多くの人が、一つ目の龍神が暴れているせいで雨がやまないのだと考えていて、「龍神様を沈めろ」「龍神様の花嫁に雨を止めさせろ」「そもそも、花嫁なんてほんとうにいるのか」と怒ったり、困惑しながら訴えてくる。
けれど、葵に雨を止ませる力などなく、ましてや一度も会ったことのない龍神様の気を鎮められるわけもない。
だいたい、降り続く雨がほんとうに龍神のせいなのかもどうかもわからないのだ。
葵が民家の部屋でじっとしていると、美雲神社に苦情を言いにくる人々の対応に困った神主が、助けを求めてやってきた。
「花嫁様のお力でなんとかしていただけませんか」
民家の玄関先で、神主が懇願する声が聞こえる。
「どうか、少しでいいので花嫁様に出てきていただきたい」
美雲神社の神主とは、葵が三つでここに連れてこられたときに一度話したきり。それ以来、神主が葵の住む民家に足を運んできたことは一度もない。
龍神の花嫁は、何か特別な事情がない限り、世話係の人間以外とは顔を合わせてはいけない。そういうしきたりがあって、葵を避けていたのだろうが……
今までずっと人目につかない場所に閉じ込めていたくせに。こんなときばかり「出てこい」などと、ムシのいい話だ。
「葵様はお会いになりません」
マキノが玄関のところで食い止めているが、それもどれくらい保つのかわからない。神主が民家の奥へと乗り込んでくれば、無理やりにでも葵を民衆の前に引き出すかもしれない。
葵は、先代の龍神の花嫁だった母の娘だったからここにいるだけ。ただの十六歳の娘でしかない葵に、雨を止めることなどできない。それがわかれば、人々の怒りは増すかもしれない。
葵は縁側に立てかけてあった蛇の目傘を手にとると、マキノや神主たちに気付かれないようにこっそりと外に出た。
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