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10.祝いの盃
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しおりを挟む「なぜ御蔭がここに……?」
「そうですねえ。早く葵の顔が見たくて、気が急いてしまったんでしょうか」
驚く葵に、御蔭がとぼけたように笑いかけてくる。それから、マキノへと伺うような視線を向けた。
「せっかくなので、御挨拶させていただいても?」
そのひとことで、葵は御蔭の目的に気が付いた。わざわざ羽織り付きの着物を着ているのも、そのせいだ。
「初めてお目にかかります、マキノさん。本日は、私の花嫁を迎えに参りました」
右手を胸にあてた御蔭が、マキノに向かって丁寧に頭を下げる。
御蔭は力を使って、マキノにもその姿を見せているらしい。目を見開いたマキノが、唇を戦慄かせた。
「まさか、あなたがひとつ目の龍神様……」
「私をご存知でしたか」
右目を細めた御蔭が、優美に微笑む。
肩まで届く白銀の髪。隻眼の青の瞳。ずっと葵の妄想だと跳ね除けてきた美しい男を目の前にして、マキノは時が止まったかのように静止していた。
柔らかな物腰の御蔭はあまり神様らしくはないが、それでも独特な雰囲気や人間離れした美しさは隠しきれない。
ようやく御蔭の存在を認めたのか、マキノが陶然とため息を吐く。御蔭はそれに穏やかな笑みを返すと、葵の肩を抱き寄せた。
「きゃっ……ちょっと、御蔭……」
不意打ちに顔を赤くする葵にふっと笑いかけてから、御蔭がゆっくりとマキノに視線を戻す。
「どうかご安心を。あなたがここまで守ってくださった花嫁は、私がこれから大切に守りますので」
澄んだ空のような青の瞳がマキノをまっすぐに見つめる。凛々しさと同時に神々しさをも漂わせる御蔭の横顔は、葵の目にひときわまぶしく映った。
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