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5.それは、デートってことですか?
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青南学院は、電車の駅から五分も歩かない場所にあった。
学校までの道中には、マンションのほかにコンビニやファミレスがあったけど、学校帰りに遊んで帰るような場所はほとんどない。よくも悪くも、あまり面白味のないふつうの街だ。
「学校が駅から近いのっていいよね。それに、中も広そう……!」
青南学院は中高一貫の有名私立高校ということもあって、わたしが通っている公立高校よりも随分と大きい。それに、外観もきれいだ。
青南学院の前まで来てもやっぱりなにも思い出さないらしい、由井くん。そんな彼と一緒にしばらく大きな校舎を眺めていると、正門の向こうから青南学院の生徒が何人か歩いてきた。
男子生徒ばかりで、みんな肩に大きなスポーツバッグかけている。午前中に活動していた運動部の生徒っぽい。
数人のグループに別れてしゃべりながら、ぞろぞろと歩いてくる彼らに場所を譲るため、正門の端によける。
この集団が通りすぎたら、由井くんに帰ろうって声をかけよう。せっかく来たけど、収穫はなさそうだし。
ぼんやり考えていると、青南学院の集団の中にいたひとりの男子が「あれ?」とわたしを指差した。
「三住だよな?」
その男子のひとことで、通りすぎて行こうとしていた男子集団の視線が、いっせいにわたしに集まる。
「え、誰? 知り合い?」
「うん。同中のやつ」
周囲に聞かれてうなずいたのは、同級生の大野くんだった。青南学院に進学した、アキちゃんの友達だ。
「ひさしぶりだよな。土曜日にこんなとこでなにしてんの?」
男子集団の中から抜けて歩み寄ってきた大野くんが話しかけてくる。
「あ、えーっと。ちょっと近くまで来る用事があったから」
「そうなんだ? 今日は部活の生徒くらいしか来てないけど。うちの学校の誰かに用事?」
大野くんが、不思議そうに首をかしげる。彼が不思議がるのもムリはない。
だって青南学院の最寄り駅周辺には特に大きな商業施設があるわけでも、高校生が遊べる場所があるわけでもない。
この近くに住んでいるか、学校があるか、仕事場があるか。そういう人くらいしか来なさそうな場所なのだ。
そんなところにわざわざ来てるってことは、青南学院の誰かに用があると思われても仕方がない。
「うーん、用事っていうか……」
「うん?」
話しかけてくれた大野くんにどう言えば変に思われないか考えていると、なんとなく視線を感じた。
ふと見ると、由井くんが大野くんのことを睨むように見つめている。
隣から漂ってくる、不穏な空気。その冷たさは、わたしがアキちゃんと付き合っていると勘違いしていたときの由井くんの気配と似ている。
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