今日も、由井くんに憑けられています…!

碧月あめり

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6.君のためならなんでもできます。

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「衣奈が会いに行ったのは、ほんとうは由井っていう男だろ。ほら、この前俺に話してたじゃん。大野に、由井って人のことを聞いてみてほしいって」

「え、あ~。うん……」

「そのときに、青南学院で最近事故や事件に巻き込まれた生徒がいなかったかも聞いてほしいって言ってただろ。だから大野から、衣奈が土曜日に青南学院に来てたって聞いて気になったんだ……。衣奈は、なんでその由井って人のことをそこまで探してんのかなって」

「探してるってわけではないんだけど……」

「で、土曜日は由井って人に会えたの?」

「うーん、と……。わたしが知りたいのは、由井くんがどんな人かってことなの」

 由井くんは今ここにいて、わたしが知りたいのは彼の正体。

 だけど、わたしの話を聞いたアキちゃんは、怪訝そうに首を傾げた。


「ん? なんか、よくわかんないんだけど。衣奈はすでに、その由井って人と知り合いってこと?」

「うーん、まあ……」

「なにその反応? 知り合いだけど、親しくはないって感じなの?」

 親しく……。もう一週間ほど毎日一緒にいるから、親しいって言えば親しいのかな。

 由井くんのことをちらっとさりげなく見る。

 わたしの視線に気付いているのか、いないのか。由井くんは前を向いたまま無反応だ。

 由井くんがわたし達の話に口を挟んでくることはないけど、一週間も一緒にいたのに親しくないなんて答えたら、由井くんは傷付くかな。

 仮にも、わたしのことが好きだと言ってくれてるんだし……。

 答えに迷っていたら、よそ見しているわたしに気付いたアキちゃんが「衣奈?」と横から顔を覗き込んでくる。


「親しいわけでもないのに、衣奈がその由井って人を気にしてるのはなんで? 最初は聞いたときは、どこかで見かけて一目惚れでもしたのかなって思ったけど、事件がどうとか言うってことは、由井って人のことが好きとかそういう感じではないよな」

 付き合いが長いだけあって、アキちゃんは結構するどい。


「衣奈って昔から、おひとよしっていうか。世話焼きなとこあるじゃん? それで無関係なことにも首突っ込んで、相手に勘違いさせちゃったりとか」

「勘違い?」

「うん。ほら、中学のとき、文化祭で体調悪くなった後輩を保健室に連れてってあげたら、そのあとしばらく校門前で待ち伏せされたりとか……。こないだも、駅のホームで高校生を助けて、あとからその人に告られたんでしょ」

 言われてみれば、中学のとき、後輩の男の子に一ヶ月くらい放課後に待ち伏せされたことはあった。

 なかなか無視もできなくて、あのときはちょっと困ったな……。

 でも……、最近駅で助けた男の子に告白されたことは、アキちゃんには話していないはずだ。
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