今日も、由井くんに憑けられています…!

碧月あめり

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6.君のためならなんでもできます。

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「心配すんなよ。俺の親父が出てくるまでもなく、あれは誰がどう見てもただの事故だよ」

「でもキッカケはさ……」

「キッカケとかじゃねーよ。勝手に飛び出して、勝手に事故ったのは由井ゆい あまね。それが事実だろ。いちいちビビんな」


 え、由井――?

 瑛士の唸るような低い声に、心臓がヒヤリとした。

 この人たちが話してる由井 周って――。

 ふと見ると、さっきまでわたしの隣で落ち込んでうなだれていた由井くんがいない。

 嫌な予感にドクンと心臓が脈打つ。

 慌てて周囲を見渡すと、わたしが立っている3両目の乗り場の最前列よりさらに前。ホームの白線の外側で、由井くんが背中を丸めてしゃがみこみ、ガタガタと震えていた。


「由井くん……?」

 慌ててそばに駆け寄ろうとすると、ホームに電車が入ってきて、白線に近付き過ぎたわたしは駅員さんに止められた。


「危ないので、下がってください」

「でも……」

 白線の外側でしゃがみ込んだ由井くんは、危険な場所にいるのに駅員さんには気付いてもらえない。

 彼の姿は、わたしにしか見えていないから。

 電車がホームに停車して、ドアが開く。

 乗り降りする乗客が、ホームのギリギリ端っこでうずくまっている由井くんに気付くことなく、彼の半透明の身体を通過していく。

 うずくまって震える由井くんの背中を見つめながら、わたしは思い出していた。


 これは、何ヶ月か前に見た光景と似ている。

 あのときは、たまたまホームに入ってくる電車はいなくて。わたしは、白線の外側で具合悪そうにうずくまっている青南学院の男の子の背中に声をかけた。


「大丈夫ですか……?」

 声をかけた男の子は、髪がボサボサで、長い前髪から少しだけ覗く目はおどおどと怯えるように左右に揺れていて。顔は青白く、唇も真っ青だった。


「さ、わらないで……。お、れ……」

 最初は具合が悪くなってうずくまっているのかと思ったけど、今にもホームから落ちてしまいそうなギリギリのところで、切羽詰まった顔をしている彼を見て、様子がおかしいと気が付いた。

 この人、もしかして――。

 確信は持てなかったけれど、彼からなんとも言えない危うさを感じて、膝を抱えて震えている彼の手にそっと手を置く。

 ビクッと震えた彼の手を怖がせないように、だけど絶対に離さないようにぎゅっと握ると、わたしはゆっくりとした口調で話しかけた。


「君は嫌かもしれないけど、離せないよ。あっちに座って、なにか飲み物でも飲もうよ」
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