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6.君のためならなんでもできます。
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改札を抜けて駅のホームに向かうと、3両目の乗り場の近くで青南学院の制服を着た男子高生が三人たむろしていた。
青南学院に通っている生徒は、多少制服を着崩していてもマジメそうな雰囲気の子が多い。
だけど、その三人はみんな校則違反なんじゃないかなって思うほどに髪の色を明るく染めている。
彼らのなかで一番リーダー格っぽい人は、右耳にも左耳にもピアスをいっぱいつけていた。
青南学院の生徒とはたまに行き帰りの電車が一緒になるけど、あの学校に通っている生徒でこんなにガラが悪そうな人たちは見たことがない。
三人はそれぞれスマホに視線を落としながら、ちょっと気怠そうな声で話している。三人とも、ただスマホを弄りながら立っているだけなんだけど、雰囲気がすごく怖かった。
あまり近寄りたくないなと思いつつ、わたしは次に来た電車に乗るために3両目の乗り場の前に立った。
黒いオーラを背負ってずっとうなだれている由井くんと、その後ろにはちょっと怖い雰囲気の青南学院の男子生徒。
早く電車に乗って、ここから離れたいな。落ち込んでいる由井くんとも、そろそろ話したいし。
ちょっとそわそわしながら電車を待っていると、後ろから青南学院の男子たちの会話が少し聞こえてきた。
「そういえばさ、聞いた? あいつ、事故ってから一週間以上も目ぇ覚まさねーって」
「ああ、どういう経緯で事故に遭ったか、あいつの親が詳しく警察に調べさせてるみたいだよな。おととい、うちの親にももう一度話聞かせろっていう連絡が来たらしい」
「それ、うちも。前話したことと変わらないって、適当に言っといてくれてたみたいだけど……」
盗み聞きをするつもりはなかった。
だけど、ふと聞こえてきた会話が妙に気になって、耳をそばだててしまう。
ちらっと見ると、会話をしていたのはリーダーではなさそうなふたりで。そのふたりが、おもむろに顔をあげながら、「瑛士んとこは?」と話しかける。
ピアスの数も多くて、一番怖そうでリーダーっぽい雰囲気の人は、瑛士という名前らしい。
瑛士という人は、スマホに視線を落としたまま、「知らね」と面倒くさそうに返事していた。
その態度を見て、ほかのふたりがなんだか意味ありげに顔を見合わせる。
「いいよな、瑛士んとこは。どうせ、お前んちは何やったって親父が全部揉み消すんだろ?」
何やったって、全部揉み消す……?
なんだか物騒な話になってきたな。そう思って横目に見ていると、瑛士という人がようやく顔をあげた。
ちょっと目付きが悪くて怖そうだけど、大人っぽいかっこいい顔の人だ。そんな瑛士が、眉間を寄せて気だるげに息を吐く。
青南学院に通っている生徒は、多少制服を着崩していてもマジメそうな雰囲気の子が多い。
だけど、その三人はみんな校則違反なんじゃないかなって思うほどに髪の色を明るく染めている。
彼らのなかで一番リーダー格っぽい人は、右耳にも左耳にもピアスをいっぱいつけていた。
青南学院の生徒とはたまに行き帰りの電車が一緒になるけど、あの学校に通っている生徒でこんなにガラが悪そうな人たちは見たことがない。
三人はそれぞれスマホに視線を落としながら、ちょっと気怠そうな声で話している。三人とも、ただスマホを弄りながら立っているだけなんだけど、雰囲気がすごく怖かった。
あまり近寄りたくないなと思いつつ、わたしは次に来た電車に乗るために3両目の乗り場の前に立った。
黒いオーラを背負ってずっとうなだれている由井くんと、その後ろにはちょっと怖い雰囲気の青南学院の男子生徒。
早く電車に乗って、ここから離れたいな。落ち込んでいる由井くんとも、そろそろ話したいし。
ちょっとそわそわしながら電車を待っていると、後ろから青南学院の男子たちの会話が少し聞こえてきた。
「そういえばさ、聞いた? あいつ、事故ってから一週間以上も目ぇ覚まさねーって」
「ああ、どういう経緯で事故に遭ったか、あいつの親が詳しく警察に調べさせてるみたいだよな。おととい、うちの親にももう一度話聞かせろっていう連絡が来たらしい」
「それ、うちも。前話したことと変わらないって、適当に言っといてくれてたみたいだけど……」
盗み聞きをするつもりはなかった。
だけど、ふと聞こえてきた会話が妙に気になって、耳をそばだててしまう。
ちらっと見ると、会話をしていたのはリーダーではなさそうなふたりで。そのふたりが、おもむろに顔をあげながら、「瑛士んとこは?」と話しかける。
ピアスの数も多くて、一番怖そうでリーダーっぽい雰囲気の人は、瑛士という名前らしい。
瑛士という人は、スマホに視線を落としたまま、「知らね」と面倒くさそうに返事していた。
その態度を見て、ほかのふたりがなんだか意味ありげに顔を見合わせる。
「いいよな、瑛士んとこは。どうせ、お前んちは何やったって親父が全部揉み消すんだろ?」
何やったって、全部揉み消す……?
なんだか物騒な話になってきたな。そう思って横目に見ていると、瑛士という人がようやく顔をあげた。
ちょっと目付きが悪くて怖そうだけど、大人っぽいかっこいい顔の人だ。そんな瑛士が、眉間を寄せて気だるげに息を吐く。
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