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6.君のためならなんでもできます。
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瑞穂や先生に協力して保健室まで運んでもらったアキちゃんは、昼休みが終わってしばらくしてから無事に目を覚ました。
六時間目の授業が始まる前に教室の戻ってきたアキちゃんは、由井くんに操られていたときのことをすっかり忘れていて。
「俺、中庭で話してるときに急に貧血で倒れたんだってな。迷惑かけてごめん」
と、笑いながら謝られた。
普段から健康であまり病気をすることのないアキちゃんは、「でも、なんで急に貧血とかなったんだろう。昼メシもちゃんと食ったんだけどな」と少し不思議がっていて。
事情を知っていて苦笑いを浮かべるわたしのそばで、由井くんが青白い顔で縮こまっていた。
中庭で気を失ったアキちゃんが、けっこう長いこと眠ったままでいたので、由井くんは自分のしたことをめちゃくちゃ反省したらしい。
午後の授業のあいだ、そばにいる由井くんからはずっと暗くて冷たい落ち込んだオーラが出ていて。授業中、ちょっと寒かった。
由井くんの不思議な霊力みたいなものには驚かされたけど、アキちゃんがなんともなくてよかった。
それに、アキちゃんが何も覚えてなかったのもよかったと思う。
もしアキちゃんのなかに、わたしとキスしようとした記憶がうっすらとでも残っていたら。恥ずかしすぎて、もう二度と顔を合わせられない。
六時間目の授業を普段通りに受けたアキちゃんは、放課後は元気に部活に行った。
サッカー部の友達と一緒に歩いていくアキちゃんの背中を見送ってから、わたしも家に帰る準備をする。
「あの……、ごめんね。衣奈ちゃん……」
学校を出て、ひとりで駅のほうに向かって歩いていると、由井くんが落ち込んだ声で謝ってきた。
「まだ、怒ってるよね……。ほんとうに、ごめんなさい……」
由井くんが何度も謝ってくる。その声はずっと聞こえていたけれど、通学路にはほかにも同じ学校の生徒が歩いていて、すぐには返事ができない。
もう少し人がいなくなってから返事をしようと黙っていたら、わたしが怒っていると勘違いした由井くんが、ますます落ち込んで肩を落とす。
腕を前にだらんと下げて項垂れている由井くんからは、どんよりと黒いオーラが漂っていて。今までで一番ユーレイっぽく見える。
かわいそうだけど、一度本気で反省してもらったほうがいいかもな。
フラフラ~と左右に揺れながらついてくる由井くんを横目に苦笑いしながら歩くうちに、駅に着いた。
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