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6.君のためならなんでもできます。
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しおりを挟む「ごめんね、衣奈ちゃん……。おれ、やっぱり、衣奈ちゃんが他の男にキスされるのはいやだ……」
膝を抱えた由井くんが、ボソボソとなにか話し始める。
「何言ってるの、由井くん……」
自分がアキちゃんを操って、へんな展開になるように仕向けたくせに。由井くんの言うことは、全部ワケがわからない。
呆れ顔でため息を吐くと、膝からちょっと顔をあげた由井くんが恨めしそうに、こっちを見てきた。
「そいつ、カノジョがいるけど、衣奈ちゃんのことも好きなんだよ……」
「そいつ?」
「その、アキちゃんてやつ……」
「何言ってんの。そんなわけないじゃん」
「そんなわけ、あるよ。だって、さっきふたりで話してるとき、そいつ、衣奈ちゃんのことをすごく気にしてた。それに、衣奈ちゃんのことをすごく大事に思ってるみたいだった。もし衣奈ちゃんが、カノジョができる前にそいつに告白してたら……。きっと、衣奈ちゃんがそいつのカノジョになってたと思う」
由井くんがそう言って、自分の言葉にまたドヨーンと落ち込む。
「衣奈ちゃんが、おれのことをなんとも思ってないのはわかってるよ。衣奈ちゃんが、アキちゃんが好きだってことも、そいつとカノジョがキスしてるのを見て傷付いたのもわかってる。だけど、それでも、衣奈ちゃんから離れる方法がわからないから……。だからせめて、衣奈ちゃんが望むことはなんでもしてあげたいって思ったんだよ……。でも――」
うつむいて話す由井くんの声が、少しずつ小さくなっていく。
声といっしょに身体まで縮こまらせていく由井くんの情けない姿を見ていたら、なんだか抗議する気持ちが薄れてきた。
だけど、由井くんに言っておきたいことはある。
「たしかに、わたしはアキちゃんのことが好きだったよ」
冷静な声でそう言うと、ハッと顔をあげた由井くんがショックを受けたように青ざめた。
「でも、由井くんに操られたアキちゃんに好きって言われても少しも嬉しくなかった。だから、勝手に暴走して変なことした由井くんにはすごく怒ってる」
「衣奈ちゃん……」
今にも死にそうな顔で、わたしの名前をつぶやく由井くん。
ドヨーンと、暗黒のオーラを放ち始めた彼を見て、わたしは苦笑いになってしまった。
「ただ……、わたしの気持ちに気付いて心配してくれてたことは嬉しかったよ。方向性は完全に間違ってるけど」
「衣奈ちゃん……」
わたしの言葉に、絶望しかなかった由井くんの瞳にわずかに光が差す。
わたしはさらに苦笑いをすると、ポケットからスマホを出して瑞穂にラインした。
《保健室の先生を中庭に呼んでほしい》
とりあえず今は、気を失ってしまったアキちゃんを保健室で寝かせてあげなきゃいけない。
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