半世紀生きて、やっと小説完成しました

さんかく ひかる

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勇気を出して、がん検診を

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 2024年、正月早々、能登半島の地震に飛行機事故と痛ましい出来事が続き、多くの人が亡くなりました。今でも懸命な救助活動が続けられています。一人でも多くの方が助かることを願います。

 今年の初エッセイは、予定を変えて小説とは関係ない話をします。
 タイトル通り、がん検診をちゃんと受けましょう、という話です。

 私は、がん検診をずっとサボっていました。数か月前から体調に不安を覚え、怯えてすごし、ようやく今年!に入ってがん検診を受けました。結果は、セーフでした。
 当たり前のことを当たり前に主張するだけのエッセイですが、この数か月どれほどモヤモヤしてきたかを、語ります。
 ふざけた筆致になったので、現在、がんで闘病中の方や、患者のご家族は、不快になるかもしれません。
 検査から逃げ回っているだけの話に耐えられる方は、お付き合いくださるとありがたいです。


 まず、病の告白から。
 私、八年前、職場の乳がん検診がきっかけでがんが見つかり、右乳房の一部を温存療法で切除しました。
 初期のがんだったので、形が一回り小さくなった程度です。手術痕は、注意深く見ないとわからないぐらいです。
 入院は四日間で、退院した二日後、職場復帰しました。
 抗がん剤は使用していません。放射線治療を一か月受けただけです。

 と、深刻な状態ではなかったので、私は普段、乳がん患者であることを意識していません。ただし一年に一度、マンモグラフィーと超音波の検査を受けてきました。
 がんは、治療して5年経つと再発の可能性が低くなると言われます。私も無事に再発することなく5年が過ぎました。


 ここから先は、恥の告白です。
 この数年、気持ちが泥沼状態です。もともと片付けられない人間ですが、職場の机も自宅のマイルームも、すごい状況です。
 結婚当初は朝ご飯を作っていましたが、現在、朝は寝ています。
 風呂も面倒で、朝、シャワーで済ませています。睡眠はメチャクチャです。
 仕事はもっとヤバいです。ギリギリにならないと取り掛からない体質が悪化し、明らかにパフォーマンスが落ちています。
 締切り前に徹夜で仕事をすることが常態化してます。徹夜は月に一度か二度。仕事の量が多いわけではありません。サボったツケが回っているだけです。

 泥沼に落ち込んだ原因を、無理やり挙げてみます。

・若い先輩社員の突然死
・更年期
・新型ウィルス

 しかしこれらの出来事は、だれもが経験することです。なので、私自身のだらしない性格が原因なのでしょう。
 ということで、一年に一度の乳がん検診もサボるわけです。

 検診をサボります。時間が経ちます。すると「一年に一度は受けろって言われているのに、今さら検診を受けても怒られるだろうな~」と怖くなり、ますます腰が重くなります。
 結局、一年飛ばし、二年ぶりに「すみません……」と恐縮しながら検診を受けました。
 いや、一年飛ばして受けたからって、叱られるわけじゃないけどね。ただ「一年に一度は受けてくださいね」と、明るく釘を刺されるだけなんだけどね。


 ともあれ一度は検診を受けたのですが、私はどんどん沼の底に落ちていきます。
 以前の検診から二年が経ち、右の乳房がチクチクしてきました。今から半年前です。


 泥沼気分でなんとなく乳がん検診をサボった結果のコレです。
 なお、八年前の手術では自覚症状ゼロでした。
 がんでは、症状が出るころには相当進行している、という噂を小耳にします。私は乳腺症で胸がコロコロしているため、触ってもよくわかりません。
 それでも私は、いや、それだからこそ、検診をずーっとためらっていました。

 だって、怖いじゃないですか。
 仕事や家事をサボれば、多くの人に迷惑をかけ、白い目で見られます。でも、普通は命までは取られません。
 しかし、検診をサボることで重大な病の進行を見逃し、結果、自分の寿命を縮める……そんなシビアな現実、突きつけられたくありません。

 自分はもう長くないんだと決めつけ、泥沼状態は悪化。
 夫にも八つ当たり。夫は当然、検診に行けと言います。


 私は、週に一度、老いた両親に顔を見せに行っています。母親のエンドレスなグチを、笑顔をキープして聞いています。
 が、情けないことに、このとき私、母親に対して強烈な嫉妬に駆られたのです。

 いいよな~、この人。ロクに健康診断受けていないのに、九十歳まで生きられたんだ。
 私、この人より長く生きられないだろうなあ、なんで私、時間がないのに、この人の愚痴をニコニコ聞いてるんだろう。泣けてくる……。

 今から思うと、身勝手過ぎて恥ずかしい。とっとと検診に行けよ、です。


 症状は進み、チクチクは首筋や手首まで広がってきました。私は、がんがリンパ節に広がったんだと思いこみ、先は長くないなと覚悟しました。せめてネットで症状について検索して調べろってことですが、それも怖くて逃げてました。


 とっ散らかった部屋、片付けないとなあ。会社の机も片付けないとなあ。やりかけの仕事、どうなっちゃうんだろう?
 病気なら仕事、辞めていいよね。
 仕事やる気ないから、前から辞めたくて仕方なかった。仕事辞めたい、と言っても、夫は認めてくれなかった(家事をまったくやってないので当然ですが)。先が長くないなら仕事、辞められるよね。
 人生終われば仕事しなくて済む。やったー! これで仕事から解放される! 会社辞められる!
 やる気ないのに惰性で働いて、みんなに迷惑かけてきた。これで、みんなに迷惑かけなくてすむ。
 私みたいなどうしようもない人間が五十年以上生きられたなんて、すごいラッキーじゃないか。

 でも、十年後の北関東の皆既日食、見たかったなあ。
 あ、小説! 完結させないと!


 小説投稿に絡んだ話も、少しはしましょうか。
 今、私は小説を連載しています。思ったより時間がかかりそうです。が、自分の寿命が尽きたらどうなるんでしょう?
 いよいよ連載が危なくなってきたら、ざっくりとしたプロットをアップする、とかいかがでしょう?
 書きたい小説のアイデアメモをアップしておくのもいいかもしれません。

 待てよ?
 私がいなくなったら、アカウントもいずれ消さないとダメだよね。すると私の小説も消えてしまうのか……なんか寂しいが、それは仕方ないか……。


 小説はともかく、泥沼状態を言い訳にして、喪中の葉書を十二月二十日に出すという非常識なことをやらかします。
 チクチクの症状が進みます。さすがにこの状態で年を越すのは嫌になり、年末休みの直前、重すぎる腰を上げました。

 会社を午後休み、いつもお世話になっている乳腺外来のクリニックを訪ねます。
 症状があると伝えたら、年明け早々に検査してくれることになりました。いつも検査は一か月後ですが、症状があるおかげか?早くしてくれたようです。


 年明け早々、普通なら初出勤で「今年もよろしくお願いします」と職場で挨拶するところ、私は夫の運転でクリニックへ。
 夫に仕事を休ませクリニックへ付き合わせるなど、二十年近い結婚生活で初めてです。入院など家族の付添いが必要な場合はお願いしましたが、単なる検査や治療に夫を付き合わせたことはありません。
 乳腺外来なので患者は女性ばかり。彼は居づらかったかもしれません。

 予約しても時間がかかるのが病院。一時間後、二年と半年ぶりに院長先生にお目にかかりました。
 一年に一度の検診をサボっています。先生に叱られるだろうなと身を竦めたら、先生、笑顔で「今日は、超音波とマンモをやりましょうか」とサラっと受けてくれました。

 なんというのか……その瞬間、すごく救われたんです。
 こっちはこの二、三か月、もう死ぬんだとウジウジしていたのですが、先生(おじいちゃん先生です)が、ライトな感じに対応してくれました。
 検査技師の方も淡々と普通にこなしてくれて、その普通な明るさで私、大分、気持ちが軽くなりました。

 マンモグラフィーの検査はいつも通りでした。が、超音波では、症状があると伝えた右の乳房を念入りに検査された……ような気がしました。
 というのも、わきの下や首筋まで念入りに検査していたので。

 結果、シロでした。
 自分、喜ぶと言うより拍子抜けしました。漫画みたいに「え、あ、あの」と訴えますが、看護師さんは「ちゃんと検査したから大丈夫ですよ」と笑顔で答えてくれました。
 当然のように「一年に一度は検査を受けてくださいね」と、明るく釘を刺されました。


 私は食べるのが大好きです。泥沼状態で働いているので、帰りがとんでもない時間になります。自然、夕飯(というより夜食)はファミレスとなります。どうせ長くないんだから、と健康を気にせず、豪華メニューを注文し、クリームたっぷりのパフェを食べまくっていました。

 このように外食大好き人間でしたが、検査後、少し控えようという気持ちになりました。
 泥沼状態が完全に治ったわけではありませんが、翌日の仕事は以前より捗りました。
 普通の時間に風呂に入って寝るようになりました。
 でも小説や文章を書いていると、夜更かしするんだけど。
 相変わらず、机も部屋も取っ散らかってるんだけど。
 初期とはいえ一応がん患者だったんだから、少しは健康意識を持てよ、自分。


 やっぱりあと十年は生きて、北関東の皆既日食を見たいです。
 それと、一つでも多くの小説を完成させたい。
 部屋の片付けは……いつかやるでしょう……今やれよ!


 結論。
 多くの人が健康診断を受診しているでしょうが、私みたいに検査を怖がって引き延ばしている方。
 お気持ち、すごーくわかります。
 でも、だれもあなたを責めたりしないから、病院に行きましょう。ひとりで行くのが怖いなら、家族かお友達に思い切ってお願いし、付き添ってもらいましょう。
 大丈夫だなんて保証はできませんが、案外、私みたいに、なんでもなかった、という結論になるかもしれません。


 次回は、せっかくなので?8年前の乳がん手術について語りますが、その手の話題が苦手な方は、スルーしてください。
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