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番外編 ハーレムな光の勇者の夢を見た

第5話

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 4姉妹がいた。

 長女。16歳。水の使い手。一人称「あたくし」。
 気が弱く、巨乳。
 俺のことは「ヤンゲル様」と呼ぶ。

 二女。15歳。氷の使い手。一人称「うち」
 氷の使い手とは思えないほど情熱的で、努力家。
 俺のことは「ヤンゲル」と呼ぶ。

 三女。14歳。炎の使い手。一人称「おいら」
 控え目。俺のことは「ヤンゲルさん」と呼ぶ。
 
 四女。13歳。雷の使い手。一人称「僕」
 明るい。俺のことは「ヤンゲル君」と呼ぶ。

「ヤンゲルさまー」
「どうしたんだ?」
「心配なさったんです。しばらく帰ってきませんから」
「悪い、悪い」

 何回目の転生だろう。
 ヤンゲルという名で、何回も転生してきた。
 俺はツインソウルで、人間世界とこの世界を生きている。
 俺の転生はいつ終わる?
 ヤンゲルという名は、永遠にひきずらなくてはならないのか?

 歴史は遡る。
 虎と獅子の戦いがあった。

 虎の名前は、虎王。
 獅子の名前は、獅子王。
 
 獅子王も、虎王も、お互いに罵り合っていた。

「我に歯向かうのか?」と獅子王。
「守るものがあるんだ」
「ほう、それがなんなのか聞かせてもらおうか」
「ねずみ達、牛達、虎の仲間達、うさぎ達、ドラゴン達、蛇達、馬達、羊達、猿達、鳥達、犬達、猪達だ」
「我はそんな者に手は出さん。興味すら沸かない」
「襲っても、襲わなくても、それを守る使命があると感じるから」
「なら、確実に襲われると思った者を守ったほうがいいのでは?」
「聞こえない。聞こえない」
「話をまともに聞かんか」
「獅子王、こんな無益な戦いをどうしてする?」
「神に認めてもらうのだ。我も仲間とな」
「仲間?」
「ふむ。我は獅子として生まれ、羊達、牛達、双子達、蟹達、ライオン達、乙女達、天秤、サソリ達、ケンタウルス達、山羊達、みずかめ、魚達を守りたい。ここで裏切りがいてな、蛇使いという神の息子なんだ。だから、父親である神に止めてもらう必要があるのだ」
「蛇使いは確か、神の後継者であるはず」
「そうだ。蛇使いは長男として生まれ、後継者が悪事に走ると大変厄介なこととなる。長男を後継者として引き継ぐか、二男を後継者候補とするか、神も決断に戸惑われておる」
「なら、三男を後継者として引き継げばいいではないか」
「なぜ、ここで三男が出てくる?」
「長男、二男にこだわらずに。長女を後継者にしてしまえばいいではないか」
「長女を選んでしまえば、女神の部類だな」
「長女は綺麗で、性格もいいし、ほれぼれとするな」 

 獅子王は神の娘で、蛇使いの姉である長女に惚れていた。
 俺も、長女が好きだった。

 長女の名前はエンジェル。
 蛇使いがシスコンになるほど、性格もよく、きれいで、頼りにもなる。

「ヤンゲル」
 俺とエンジェルは、恋人同士だった。

「エンジェル」

「こんなところで、どうなされていたんですか?」
「獅子王と虎王は、どこまで争うんだ?と気になっていたんだ」
「虎王も、獅子王も、些細な喧嘩なのですから、そもうちおさまりますわ。戦争になんかなりませんよ」
「虎王がちょっかいをかけるから、喧嘩になると思う」
「それもそうですわよね」
「この戦いは、全部虎王のせいな気もしてくるんだが」
「喧嘩する程、仲がいいなんて言葉があるのですから、それも全然不思議な話ではありませんわ。獅子王は12星座を守りたい、虎王は12干支を守りたい。ただ、それだけの話なんです。手段はそれてる感じはしますが、それでいいというなら、お互いが納得するまでさせてあげればいいんですよ」
「本当にそうなのか?」

 エンジェルらしい答えだった。
 実際、虎王と獅子王の争いを止める方法はなくて、ただ見ていることしかできなかった。

 それを仲裁するのは、虎王の息子の猫王だった。

「父上、獅子王殿」
 
「予想した通りですわ」

「父上、むやみな争いはやめてくださいませ。
皆様が困るではないですか」

 そう、獅子王も、虎王も、猫王には弱かった。
 でも、止め方は強引なので、獅子王と虎王が納得できるやり方ではないので、
 しばらくしたら、また争いは起こる。
 だけど、エンジェルはそこまで問題視していなかったし、
 いつか解決するだろうと気にも止めてなかった。
 だけど、どこかで納得した解決をさせるべきだった。 
 
 また、虎王と獅子王は、また喧嘩をする。
「誰にも邪魔されない喧嘩をしようではないか」

 そう、虎王と獅子王で、いろんな人を巻き込んで戦争を始め、
 ストッパーである猫王を抹殺してしまった。
 そう、ただの喧嘩から、憎しみへと変わっていったのだ。
 お互いに対する八つ当たりが、全然関係のない人を巻き込んでの八つ当たりへと変わった。

 俺も、エンジェルも巻き込まれた。
 
 そこで、俺は戦争に呪いに巻き込まれた結果、転生の呪いを受けた。
 俺は、何回も転生するようになっていた。

 会社員の俺は、目覚めた。
 夢か。
 一番最初の前世の夢だな。
 忘れていた俺は、ここで前世の記憶を思い出す。
 思い出したところで、どうしようもできないし、若いならまだしも、俺みたいなおじさんがこんな事実発覚しても、しょうがない気がしてくる。
 俺のもうひとつの魂は、異世界で何回も転生しているんだな。
 俺は、人間世界での生活を送っている。

 俺は、あと何回、転生すればいい?
 この呪い、どうやったら解ける?
 というか、この呪いを解いたら、どうなるのだろうか?
 二度と転生できなくなるのか、他の者に転生できるようになるのか。

 だけど、解決方法をどこかで見つけないと、
 ふたつに分かれた魂は、異世界と人間世界で、転生を繰り返すこととなる。
 同じ性別、同じ名前で。

 そもそも、エンジェルは、どこにいるんだろうか?
 巻き込まれた結果、転生するようになったのか、本当に生を終えてしまったのか。
 エンジェルの妹は、大丈夫なのだろうか?
 一緒にいたわけでは、ないのだから、知りようがなかった。

 俺は、今日もスーツを着て、会社に出勤する。
 まさか、俺の娘がエンジェルの生まれ変わり?
 そんな感じはしなかった。

 そこで、新入社員歓迎会で、上司が新入社員を紹介することが社内で行われ、
「紹介する。今日からこの会社に入社するー」
 上司の話を最後まで聞かないうちに、俺にはわかった。

 あの女性社員が、エンジェルの生まれ変わりだということに。
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