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番外編 Y戦士

第1話

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  俺は、青い髪で、身長159センチ。
  Bカップという貧乳だが、戦いやすくていいと思っている。
  あまり、大きいと戦いづらいから。

  俺が、誰なのかは今は語る必要もないだろう。


  あたしはどこにでもいる普通の‥‥一般人だったと思う。

「Y戦士にならないか?」
 スキンヘッドの子供に聞かれた。
唐突すぎる。

「そもそも、Y戦士って何?」
「特に深い意味はない。AからYまで戦士がいて、ワイが担当しているのがYなだけだ」
「なぜ、Zだけない?」
「ワイは、25人兄弟の末っ子でな、26人目が生まれなかった。ただそれだけだ。一番上の兄がA戦士担当、末っ子のワイがY戦士担当しとるだけ」
「あたしにやってほしい、と?」
「強制はできんでな。できるけど、そうしたらワイの会社の上司にクレームが来るんでな」
 会社の上司?
「まず、Y戦士なんか必要あるの?」
「なかったらどうする? 暇を弄ぶだけで終わらす戦士を希望しとるんか?
悪い奴らと戦う使命を適当に与えとるんや」
「適当なんだ‥‥」
「ワイの推薦は、勘を基準としかしていない。
戦士の数は世界の人口で考えれば、多くもなければ少なくもないとワイは適当に計算して思う。
だが、ワイらマスコットは兄含めて25人しかいないから世界中どうなっているか見て回ることは不可能かもしれん。
地球は25人だけではたりんのだよ。
たりない中、やってんだ。
ただ、推薦だけではなれん。Y戦士には条件があるが、どいつが条件備わっているのか見ただけではわからんのだ」
「適当に推薦してないで、確認してからでは?」
「確認しても、本人が忘れていたり、条件が備わっていることにきずいてないとかある。
それで何事もないように日常生活を送ることが多い。
ワイたちの敵となる邪悪な存在もそう。
自身が邪悪な存在ときずかずに進学したり、就職したり、結婚したりして人生を終える者もおる」
「これで、人生過ごせるならいいのでは?」
「良くないのだ。邪悪な存在はいつどこで覚醒するかわからんのだ。
適当でもいいから戦士を覚醒させて、救わなくてはならない」
「何を?」
「敵によって目的が違うかんな。一概には言いきれない」
 
 子供の言う作り話に付き合うつもりはない。
スキンヘッドで長いひげがあるかもしれないけど、明らかに子供だということは身長でわかる。
 多分、幼稚園ぐらいだろう。

 子供にしては辻褄が合うような言葉を並べられているし、小学生に入ってから使うような難しい言葉もそこそこは出てくる。
 幼稚園ぐらいの子供なんて先生や親が普段使うような言葉を真似してばかりいて、言葉の意味を理解していないことが多い。
 それに僕はその子を知らないし、身元不明な人物の言うことなんぞ、信じられそうにない。

「考え直してくれたか?一応、試しに交信してみるのだ」
「交信?」
「交信すれば当たりか外れかぐらいわかる」
「交信のやり方がわからない」
「適当でいいから」
「また、適当?」
 この子供はさっきから何なんだ?
 非科学的であり、非現実的なことしか言っていない気がする。
「多分、できないと思う」
「最初から可能性を諦めているということか?」
「諦めているというか、信じてない」
  交信なんか念じたところで、何をどうするのか具体的な指示もないし、ただ抽象的に押されているだけだ。

「気が向いたらでもいい。
他にY戦士がいるから、そやつを参考にするといい」
「Y戦士が近くにいるの?」
「ワイは基本この市内にいるからね」
「市内って見たことないが‥‥」
 スキンヘッドでひげの長い子供なんて目立ちそうだし、見つけられたら覚えているのでは?
「ないだろうな。漢字の読み書きが難しいワイが下手な買い物とかも行けないから一日中子供でも読めるような字で書いてある公園しかいなかったりする」
「漢字、苦手なの?」
「漢字が苦手というより、ひらがなやカタカタ以外読むことができない。
小学一年生で習うような漢字も含めて」
 この子供は小学にも入学してないということかな?
「ワイは次を当たることにするさ。
事件に巻き込まれんようにな」
 そう言って、子供は去っていった。

 あたしは家に帰る。
 子供の長話なんて、付き合ってられない。

 自分でも何をしたいかわからない。
 うん、きっとこれでいいのかもしれない。
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