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番外編 アクアマリン編集部

第7話

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 道を踏み外した。だが、構わない。
 何回でも転生して、必ず報われてやる。

 こうして、転生した。
 次は克は女の子へと転生して、女の子だから名前は克見《かつみ》になったがな。
 今度こそ、報われるかもしれない。

 転生した経緯はわからないけど、気がついたら転生していた。
 
 克見とは幼なじみにはならなかったけど、中学に進学した時に初めて出会った。
 小学は男子校だったせいもある。

 克見がクラスの女子と馴染めずに、落ち込んでいたところをオレが声をかけた。
 何故?克見が克の生まれ変わりかわかったかって?勘というか直感というか、見ただけで克の生まれ変わりかどうかわかるんだよな。

 克見は、オレのことを好きになった…と思う。
 根拠がなくても、そうだと思いたい。
 
 克見とオレが付き合い、お互いの親の反対を押しきり、18歳で結婚した。
 高校を卒業したから。
 オレは高校を卒業したら、アクアマリン編集部に就職した。
克見は専業主婦。
 
 オレと克見の間に子供ができた。
 19歳で生まれた初めての子供は、経済的に大変だけど、克見となら乗り越えられそうな気がしたし、二人目も欲しかった。
 克見が産めるなら、いくらでも産もうと思うし、孫とかも育てていこうかなとも思っている。
 曾孫の顔も夢じゃないかもしれない。
 100歳でも200歳でも長生きしとこう。

 子供を15人まで産むことができたけど、克見は亡くなってしまった。
 オレは克見がいなくても、娘や息子を育ててける。 

 オレの幸せは、今は克見といることではなく、克見の子供を育てることだから。
 克見も、克見の子供も愛している。

 オレは50歳を迎えて、体の節々が痛むようになってきた。
 オレ、死ぬのかな?
 もう、転生しようとか思わないし、子供や孫の成長を見たい。
 克見の恋は報われたし、オレと克見の遺伝子は子供、孫、曾孫に代々受け継がれる。
 
 人生に満足した。
 最初からこんな人生を送れればよかったのに。
 
 アクアマリンの編集部どころか、社長にまで昇格できた。
 克見の墓参りもしている。

 愛してる。
 子供はみんな成長するけど、どんなに成長しようが、老いようが愛してる。
 この気持ちは変わらない自信がある。
 
 さあ、オレはやりたいこともなければ、やり残したこともない。
 オレの人生はここでゴールとなる。

 沢山の子供や孫に見送られながら、100歳になったオレは病院で、息を引き取った…。
 死因は心配停止。
 だけど、オレの人生、最高に幸せだ。

 オレは、ずっと見守っている。
 予想もしなかったのが、曾孫の代で一族は途絶えたけど、転生しようとか思わなかった。
 克見とはずっといるから。
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