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番外編 アクアマリン編集部

第12話

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 老元とは、サークルで出会った。
 老元は、孤児院で育てられたらしい。

 物心ついていたころから、母親からの暴力を受けていたけれど、虐待が発見されて、孤児院で育てられることとなったらしい。

「老元さん」
「呼び捨てでいいのよ」
「老元」
「あと、敬語禁止ね」

 老元は、社交的で親しみやすかった。
 オレは、話しているうちに老元と仲良くなった。
 老元と出会ったのは、大学1年生のころだった。

 公民館で行うサークルで英会話、スポーツクラブなどをしていた。
 老元は、体を動かすことが好きで、よくサークル活動をしていれば、老元と会う頻度は多かった。
 大体、中年の方はすぐに疲れて、明日にまで響くため、
 週一回とか週二回とかスポーツクラブの参加しかしないけれど、
 老元は週六で、ほぼ毎日、スポーツクラブでの活動をしていた。
 週一回だけ、スポーツクラブ自体が休みのため、その日だけ老元は、サークルに顔を出してこなかった。

 週一回だけ、駅前のカフェで、イケメンの店員さんと話しをすることが日課らしい。
 そのイケメンの店員さんは大学生アルバイトで、週一回だけの出勤らしい。
 バイトよりも、勉強を優先する考え方らしく、老元曰く「そこがかっこいい」とのこと。

 オレは、両親にアルバイト先を決められてたため、清掃のアルバイトか、在宅バイトしかさせてもらえなかった。
 清掃のバイトも依頼制のため、一日中アルバイトか、深夜のみのアルバイトか、アルバイトがない日が続くとか不定期だった。

 友達の話を聞くと、かなり稼げるホストのアルバイトしている人もいれば、
 スーパーでレジ打ちや、グロッサリーのアルバイトもいれば、
 介護アルバイトもいた。

 オレは、両親に許可されたアルバイトでないと禁止される。
 もちろん、オレから提示することもなく、気が付いたら両親に決められていることがほとんど。

 老元は、パートしながら、イケメン社員を眺めることを日課としているらしい。
 だけど、イケメン社員はだれひとり、老元に振り向きはしないとのこと。
 老元から告白しても敗れるだけなので、老元は次第に自分からの告白をやめて、アプローチで相手にきずかせる手段をとるようにしたけれど、
 だれ一人見向きもしないらしい。

 オレはというと、自分ではイケメンではないかなと思っている。
 そんなに不細工というわけでもないし、平凡な顔立ちで、何か特徴を持っている感じは、自分で鏡で見ても、見当たらなかった。

 老元は、イケメン限定なのかもと、この時は思っていた。
 いつもやることが、イケメンのおっかけだから。
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