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番外編 美属性兵隊

第4話

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 ウチは、自分の名前呼びだった時期がない。
 「ウチ」という一人称となったのも、六年生の頃からだから。

 磨店が中学二年生の14歳で母親となり、妊娠が発覚したのは中学一年生の13歳。
 当然、怒られる。
 だけど、磨店は「お腹の子供を産みたい」と言うけど、「育てられるのか」という一蹴りだった。
 世間は磨店を若いママではなく、幼いママとして見ていた。
「幼いママ」「子供が子供を産んでいる」などと言われることとなってしまった。
 ウチも思う。幼くしてママになったんだな、と。

 最初は中学生のため、磨店が働くことができなかったから、ウチはずっと家で可愛がられることとなった。
 幼稚園にするか、保育園にするかの選択肢は2歳になるまでなかった。
 いざ2歳になっても待機児童が多いため、保育園に入れなかった。シングルマザーで、誰の援助も受けられない人は珍しくないからね。
 保育園に入れなかったから、結果として幼稚園に入ることになった。
 
 幼稚園の送り迎えは祖母で、磨店はウチが6歳になるまで一切子育てに参加しなかったから。
 高校は卒業した方がいいという祖父母の方針で、磨店は高校を卒業している。
 成人式は、磨店が参加して、ウチは祖父母とお留守番だった。

 祖母が「そろそろ自分のことは、自分でやりなさい」と言うようになってから、育児や入学準備とか磨店がやることになった。
 幼稚園の入園手続きとかも、祖母がやっていたから。
 入園手続きだけではない。出生届けや、母子手帳の手続きも、何から何まで祖母がやっていたとなる。

 ウチは、磨店には簡単に懐かなかった。
 懐かなかったというか、磨店とどのように接していいのかわからなかった。
 ママのようで、ママじゃない。
 年の離れたお姉さんのようで、お姉さんではない。
 まさしく、磨店は幼いママそのものだったと今ならわかる。

 磨店は、高校卒業してすぐに働いている。
 高校の時にアルバイトしていたとしても、社会人一年か二年しかない。
 子供を教育できる程、磨店にはいろんなものが備わってなかった。

 料理もできてないから、飯マズのものしか出されなかった記憶がある。
 磨店には、言いにくい。

 卵焼きとかすぐに焦がすし、
 ハンバーグは形が崩れているし、
 ご飯は水の分量間違えているし、
 ニンジンはしっかり煮えてなくて固いし、
 おにぎりは水が多くてビニャビニャになっているし、
 揚げ物とかは揚げれてないし、
 コロッケに中身が入ってなかったりするし、揚げ物するときに油は少なすぎる。

 これがウチの幼稚園までのおぼろげな幼少期。
 祖父母から聞いた話もあったりするけど。
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