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番外編 天罰を受けた者たち

第7話

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 ユウヅキは迷子になって帰れなくなった。
 どこへ向かえばいいのかもわからない。
 帰りたいのか帰りたくないのか、今となってはもうわからなくなった。
 ユウヅキはユウヅキよりも背が高い男を見つけた。カントだ。
 嫌だ、今更傷が癒えた頃に会いたくない。
 だけどカントはユウヅキの存在にきずいてしまった。
「ユウヅキ‥‥」
 そう言い、カントはユウヅキを抱きしめた。
「会いたかった‥‥」
「会いたくなかった‥‥」
 カントは今となっては恋人ではないし、もう別れたんだからいいよね?
「カント、別れたよね?忘れたの?」
「憶えてる。だけど、別れた後も忘れられなかったんだ」
「忘れてよかったのに」
「どうして?」
「とにかくユウヅキのことは忘れて、カントは幸せになるんだよ」
「なれない、ユウヅキがいない世界に幸せはない」
 そう言うのなら、ユウヅキはいくらでも冷たくするよ?未練なんて残してほしくないから。
「カント、嫌い」
「ユウヅキ、大好きだ」
「今更何を言うの?」
「やり直そう、俺たち」
  光の天罰を受けたからなんて言えない。
「ユウヅキはどんなこと言われても変わらないよ?変えようとしないで」
「ユウヅキは裏切るの?」
「別れたんなら関係ないよね?」
  本当は関係なくない。
  今もカントが好き。
 だけど、いつどうなるかわからない特異体質のユウヅキを、カントは受け入れられるの?
「わからないなら、もういいよ」
「わかってくれるまでは何度でも説得するよ」
 カントはなんて諦めが悪いんだろう?
 ユウヅキが同じことを言われたら、きっと立ち直れなかったと思う。
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