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番外編 光の影武者と闇の影武者

第2話

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 俺は雷門《らいもん》ユルト。
 男だけど名前に漢字がない。だけどカタカナはまだいいほうなのかな?りとなんか男だけどひらがなで、女の子に間違われそうだ。
 俺は闇神《やみしん》に気に入られて、闇の力を与えられた。こいつは気に入ったやつに力を与えるのか?そうとしか思えなかった。
「お主が好きだ、可愛いぞ」
 可愛いって何だよ?俺のプライドは闇神によって傷つけられた。
「わしはお主が好きだ」
「あっそ」
 男に好きだと言われても「はい」って言うやつはただのホモでしかなくなる。闇神もじゅうぶんにホモだと思うが。
「わしはお主に惚れた。ユルトと少しでも一緒にいられるきっかけが少しでもほしい」
「それで俺に闇の力を与えたの?」
「そうだ」
「あきれた。こんなの天然っていう程の話じゃない」
 俺は受け入れるわけにはいかない。受け入れたら‥‥俺は男としてのプライドがなくなる。
「俺は闇の力なんて必要ない」
「わしはユルトと一緒にいられるきっかけがほしいだけ」
「一緒にいたいだけなら、闇の力なんて必要なくない?」
 「ある。闇の力を持っていれば居場所がいつでもわかる」
「ストーカーか」
「ストーカーでもいい。お主を好きでいたい。ユルトから愛されたい」
 こうして俺よりも背が高い闇神にキスされた。キス?今まで誰ともしたことがないのに?
 引き剥がさなきゃ。どんな方法でもいい。離れるんだ。だけど俺の体は石になったように動かない。なぜ?こいつにそんな力があるのか?
「浅いキスぐらいでこうなるとは」
 闇神が唇を離してくれた。
「大嫌い‥‥」
「そんな言葉は口にしちゃいけない」
「するよ。俺の気持ちを考えてよ。第一、一方的過ぎるんだ」
 俺は目に涙がたまった。泣いちゃいけない、泣くものか。こらえろ、ここで泣いたら男がすたる。
「悪かった。努力でどうしようもできないものがあるなら‥‥」
 闇神は俺に黒い粉をふっかけた。
「うわっ」
 頭がぼーとする。眠気が襲う。
「お主はこれでわしが好きになる」
「なるもんか‥‥」
 だけど、言葉とは裏腹に我慢が難しいものが働いた。こいつとディープなキスをしたい。何を考えてるんだ、俺は?
 歩けなくなった俺を、闇神がお姫様だっこをしてどこかに連れていく。
 今までしたこともされたことがないお姫様だっこ。
 こんなやつに初めてされることになるのか?そう思いながら俺の意識は遠のいた。
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