上 下
365 / 393
番外編 愛が欲しくて

第3話

しおりを挟む
 オレと兄貴は兄弟だ。
 だけど、兄貴から異常なくらいに愛されてる。
 愛されてるなんてものじゃない。禁断の愛をきずいてる。兄弟だし、男同士だし。
「今日も、お前だけを愛してる‥‥」
「オレたち兄弟だよな?」
 実の両親も一緒なんだよ。
「わかってる。それでも‥‥お前しか愛せない‥‥」
 こうして、兄貴と一緒にベッドで過ごす。
兄貴にも自分の部屋にベッドあるんだから、自分の部屋で寝ろって!

 オレの名前は、市海道《いちかいどう》有《ゆう》。
 オレには血のつながった実の兄がいて、そいつは、市海道巴鳴《ともなり》。
 オレは生まれた時から兄貴と一緒にいるが、どうゆう経緯かわからないけど、兄貴に一方的に愛されてる。
 兄弟愛なんてものじゃない。
 兄貴はオレと一夜を共にしたがるし、キスはするし、恋人でしかしないだろうということを兄貴はオレにしてくる。
 男同士で愛なんか育みたくねえよ。

「有、大好きだよ」
「兄弟でそんなこと言うかよ?」
「有、可愛いよ」
 可愛いって‥‥オレ、男らしくないのかな?
 プライドは傷つく。
「殴られたいのか?」
 オレはもう子どもじゃないし、他の人と同じように女の子と恋愛もしたい。
「兄貴、別れよう‥‥」
 オレは付き合ってるつもりがなかったけど、兄貴はそのつもりだとなんとなくわかった。
「別れさせないよ」
 兄貴の目がぎらつく。
「兄貴は好きな人いないの?」
「好きなのは、有だけだから‥‥」
「男同士っていうのはわかってるはず‥‥」
「それでもお前が好き‥‥。
  世界中の誰よりも愛していたい」
「その愛は本物?」
 それは愛じゃない。
「本物だよ」
「オレは違うと思う」
「何がどう違うんだ?」
「オレたちはこのままでいられないから。
親の離婚も決まって、オレは母さんのところに行き、苗字が変わる」
 兄貴には言えなかった。
 両親の離婚が決まったこと。
「ということは?」
「オレたちはこのままじゃいられない。
もうすぐ離ればなれになる」
「追いかけてやるさ‥‥」
「追いかけれないと思う。
苗字も変わり、住所も変わり、父さんやその親族とも絶縁。
母さんも遠いところに引っ越すと言うし。
なら、兄貴は他の人と恋愛するしかないよ。
父さんと母さんによって、お互い婚約者は決まってるからね」
「聞いてない‥‥」
「父さんと母さんが隠してたから」
「何でそんなことを知ってる?」
「たまたま立ち聞ぎして」
「有がいなかったら‥‥」
「オレがいなくても頑張ってね」

 世間で言うヤンデレや近親恋愛は大袈裟になるかもしれない。
だけど、近親恋愛なんて大体依存に近いものしかないし、ずっと続くわけではない。
身近にそれしか見えてないから、そう感じるだけ。
現実にヤンデレなんて、ストーカー行為をできる程ではない。
現実、ストーカー行為なんてそんなに簡単ではないから。
しおりを挟む

処理中です...