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番外編 一生のお局様

第2話

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入社式の時から、一番最初に目をつけられていた。
どうしてかは、わからない。

基本、私は社内恋愛とか信じないことにしている。
三年ぐらい、この会社に勤めていたけど、社内恋愛なんて発展したことはなかった。
だから、社内恋愛とかないと思う。
だけど、噂では、社内恋愛がよくあるかのように話されるから、あまり聞かないことにした。
社内恋愛とか、私に関係ないし、今後もしないと決めていた。
恋をしたら、私らしくない気もしてきたから。

女同士は、秘密の話が好きだったりする。
「ここだけの話なんだけど」
「誰にも、言わないから」
「これは、二人だけの秘密ね」
こんな言葉こそ、信じちゃいけない。
明日には、会社中に知れ渡っているから。

私は、お局様が嫌い。
許せない、忘れられない。
多分、一生に忘れられないというか、忘れないと思う。

仕事がどうゆうものか知っているかのように語るし、
自分が悪口を言われていることにきずかないし、
ロッカーとかは鍵を忘れた日には、中を見られてしまうし、
人の給料明細を横からのぞき見するし、
ボーナスをもらったとわかった日は本当に最悪の日になるし、
「若いから、男を落とせるんでしょ?」と言われてしまうし、
「嫌いな人は誰?」と執拗に聞いてくるし、
ピンクが好きな新入社員をけなしてくるし、
社内恋愛には興味あるけど、社外恋愛には興味がない。ここはちょっと不思議。

新入社員は、後から入ってきた後輩は、必ずいじめられる。
自分が最初から知っているかのように語るし、
管理職には、頭が上がらないし、
嫌いなものが多いし、
嫌いな人の話で盛り上がるし、
煙草の匂いはいつもする。

あのお局様のせいで、私は人前で食べることができなくなってしまった。
一日三食食べていたご飯も、少なくて一日一食、多くても一日二食まで減ることとなった。

61キロまであった体重は、
今では56キロと一か月で減少することとなった。

物欲や食欲がなくなり、何も買う気力すらなくなった。
物が多いように感じてきて、積極的に物を減らすようになった。
片付けができないコンプレックスから、
全て物を減らしていけばいいという強迫観念に変わった。

大好きなものでさえ、興味がなくなっていた。
できることを増やしていこうと、そればからが躍起になっていた。

何も食べられない。
何もほしくない。

私は、固形物が食べられなくなり、
ゼリー飲料、ヨーグルトドリンクなどで飢えをしのぐような形となった。

自分は不潔なのでは?
部屋をきれいに掃除しきれてないのでは?
考えることは、いつもそればからだった。

自分で稼いだお金は、つらい思いをして稼いだお金。
自分を苦しめるため、手元から離し、銀行に預けている。

自分で稼いでいないお金を使うことにしている。
お年玉でもらったお金、
賞金としてもらったお金、
物を売ってお金にしたものなど。

仕事に行きたくないとさえ、思えてきた。
化粧とか、本を読むとか、大好きなことでさえ、興味がなくなってきた。

多分、うつ状態になってしまったんだと思う。
それで、診療内科に通うこととなった。

転職するための資格も、スキルもない。
勤続年数だって、長くない。

だけど、私には会社の先輩がいた。
そう、31歳となる彼氏だった。
私とは、かなりの年の差になると思う。

「そんなにつらいなら、俺と結婚して、寿退社しないか」
「いいの?」
「いいよ。俺も勤めて10年以上たって、社長にならないかと言われんだ。
社長になれば稼げるし、君を養っていける。
俺と結婚しないか?」
「はい」

そこで、私は会社の社長となる人と結婚して、寿退社をした。
今は、専業主婦。
体重も少しずつ戻った。
私、今は最高に幸せ。
お局様は、どうなるのか知らない。

旦那の異動も決まったから。
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