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番外編 これだけ愛しても

第6話

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 いきなり、二人の娘を育てることになった私は、シングルマザーみたいなものなので、仕事と育児の両立が思った よりも大変で、私の職種は時間の融通はきかない。
かといって、正社員を辞めることはそんなに簡単にはできなかった。
 パートで働くようにしようにも、これからのことを考えるとそれはしにくかった。

 犬野さんと私は仕事で一緒になることが多かった。
 最近の私は子育てに疲れ果てていた。
 スケジュール帳は、子供の学校行事でいっぱいになっていた。
 一年間の行事は、前もって資料として渡される。
 だけど、仕事のことだって書かなくてはならない。
 仕事と育児、うまく両立できる人を尊敬する。
 そんな疲れている私をよく気にかけてくれている。

 最近は、猫のさくらちゃんは異世界とやらを転々としてくると言って、しばらく現れなかった。
 さくらちゃんが言うと、異世界が本当にあるかのように思えてくる。

 残業で、犬野さんと二人きっりだった。
 帰りが遅くなってもいいように、温めるだけの夕飯は冷蔵庫に用意してある。
「コーヒーでも飲むか?」
 犬野さんは最近、私に缶コーヒーを用意してくれるようになった。
「ありがとう」

「なあ、俺たち、付き合ないか?」
 犬野さんから、そんな言葉が出てくるとは思わなかった。
「ええ、付き合いましょう」

 私と犬野さんは付き合うようになり、長年の片思いが叶った。
 私の家に来ることもあった。
「この年でバツイチ子持ちか?」
「いえ、親戚の子供」
 親権は私になったけれど。

 そのうち、私と犬野さんは結婚するようになり、かねこちゃんとかなこちゃんも本当の娘となった。
 年齢差は、年の離れた兄妹とか姉妹と言っていいくらいだった。
 私も、犬野さんもまだ18歳だから。

 もう少し、落ち着いたら二人の間に子供を作ろうという話にもなっていた。
 だけど、かねこちゃんもかなこちゃんも、親の愛情をじゅうぶんにもらってないため、もう少しだけ娘も時間を作ろうと思っていた。
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