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番外編 三毛猫魔法使いさくら先生

第2話

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「よくも、やってくれたわね」
 妻から、黒い影が現れた。

「正体を現したにゃ。これぞ、蛇黒神《じゃこくしん》」
「蛇黒神って、何?」
「人間の心に取りつく悪魔だにゃ。
これで、悪さをしていたのにゃ」
「お清めには塩と炎がいいと聞いていたので、レッドが炎で、ソルトが塩なので、これで化けの皮が剥がれたんだと思うのです」

 黒い影が言葉を発する。
「これで、負のエネルギーを回収できると思ったのに、残念だ」
「何のエネルギーだって?」
「蛇黒神は、人間の負の感情をエネルギーとして、食べて生きているのにゃ。
やっぱり、あの女には、蛇黒神が取りつかれていたのは、間違いなかったにゃ」

「レッドソルトハートアッタク」
 赤いハートが黒い影、目がけたけれど、効いているのか、効いていないのか、わからない。

「桜、ここは、思いっきり、炎を出していい気がするにゃ」

「よし、炎心《えんしん》」
 赤いハート型のステッキから、炎が出てきて、蛇黒神は燃えていった。
「これで、解決にゃ。
本当は浄化とかできばいいんにゃが、あそこまで来ると、難しいにゃろ」

「これで、妻は優しい妻になるのかな?」

「そこまで来ると、本人の問題だにゃ」
「そうなのです。取りつかれる方も、それなりの悪意があるから、取りつかれるのです。
そう考えると、てんしちゃまに何かしろの形にならない憎悪があったと思われるのです。
これから、どうするかは、てんしちゃま次第なのです」

 こうして、桜ちゃんと、さくらは姿を消した。
 あれは、何だったのだろうか?

 妻が目覚めても、家庭内暴力や、経済DVはなくなったけれど、
 妻は愚痴を聞かせてくるようになった。

「あんたのせいよ。
なんで、結婚しなくちゃいけなかったの?
本当は、結婚なんてしたくなかった」

 親同士が決めた結婚だけど、本当はお互いのことを嫌いでしょうがなかった。
「なら、離婚しよう」

 俺と妻は、離婚した。
 学校でも、離婚の話は、広まった。
 まず、結婚する時ではなかったかもしれない。
 実家の両親にはさんざん怒られたけれど、体のあざを見せたら、しぶしぶ承諾してくれた。

 そう、自分の人生は自分で、どう決めるかであって、
 親とか、人が決めることではなかった。

 元妻も最初から優しいわけではなかったし、
 元妻はいじめっ子のリーダー的存在で、俺はいじめられっ子だった。
 今回の離婚の件で元妻がいじめれっ子となってしまった。
 いじめというのは、いつどこでだれがターゲットとなるのかわからない。
 元妻は、高校を中退してしまった。

 俺は、通信制の高校に転入した。
 さて、バイトしよう。
 俺の人生は、ここからが始まりだ。
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