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番外編 三毛猫を愛する者たちへ 第1章

第6話

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 俺は何がしたいのか、自分でもわからなくなった。

 この世界に来たのも俺の意思じゃない。



「迷える子羊よ」

 グレーキッズにグレーボーイがいた。



「何の用?」

「ミッケは捕らわれたようだね」

「そうだけど?」

「ミッケを取り返しに来たの?」

「来てない」



「なら‥‥何を‥‥?」

「元の世界に帰りたい」

「元の‥‥?」

「俺は人間世界出身者だけど、ミッケに転送されたらしい」

「なるほどね。

実は我らも人間世界出身者なのだよ」

「ミッケに転送されたの?」

「いいや、自分の意志で」

「瞬間移動ってやつかな」

「なら、俺を元の世界に帰してよ」



「帰してやるさ。

だけど、今我はやらなくてはやらないことがある。

グレーボーイ、帰してやれ」

「グレーキッズ、一人で大丈夫なの?」

「大丈夫さ。

それにグレーボーイが来てくれること、信じてるから」

「ありがとう‥‥」



 元の世界に帰れる‥‥。

 ミッケのことなんかどうでもいい‥‥。



 グレーボーイにお姫様抱っこされて、気がついたら見覚えのある場所にいた。



「我はここで失礼するよ」

「待って、人間世界出身者ならまた会えるの?」

「正体は明かせないがな」

「ヒントだけ」



「我は、小学生だ。

グレーキッズも学年は違うが、小学生である。

グレーではないが、ランドセルをしょっている」

「小学何年生?」

「それは教えてやれん。学校名もだ」

「身長は?」

「詳しい数値は内密にさせていただくが、

我は、学年一小柄で、

グレーキッズは学校一小柄だ」



「見つけられそうにないな。

他にヒントは?」 



「あんまり教えてしまうと、我らの日常生活に支障をきたし、仮面で正体を隠す意味がなくなる。



危険が迫れば、我はいつでも助けるぞ? 



我は人間世界を含め、異世界を守る使命を果たしたいのだ。



正体をいつか明かさなくてはならない時があったとしても、それは今ではない。



グレーキッズも、グレーボーイも本名ではないし、思いつきの仮名だから、事件が解決したら、正式な名前を考えなくてはならんな。



そして、次会うときは身長を伸ばしているかもな。



さて、柊菊の姉方とも会わなくてはな」



「柊菊のことを知ってるの?」



「柊菊には会ったことはないが、姉方とは知り合いだ」



「どんな人なの?」



「一人は中学一年で、一人は小学生だったな。

詳しいことは語れんが」



「今回の件は、ありがとう‥‥」



「礼には及ばん。

相方が今さらどうなっていることか、バイバイ」



 俺は手をふった。



 これで元の日常に戻れる。



 夏休みなのが幸いだった。

 夏休みの宿題終わらずぞー!
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