上 下
109 / 113
番外編 三毛猫を愛する者たちへ

第6話

しおりを挟む
 俺は何がしたいのか、自分でもわからなくなった。

 この世界に来たのも俺の意思じゃない。



「迷える子羊よ」

 グレーキッズにグレーボーイがいた。



「何の用?」

「ミッケは捕らわれたようだね」

「そうだけど?」

「ミッケを取り返しに来たの?」

「来てない」



「なら‥‥何を‥‥?」

「元の世界に帰りたい」

「元の‥‥?」

「俺は人間世界出身者だけど、ミッケに転送されたらしい」

「なるほどね。

実は我らも人間世界出身者なのだよ」

「ミッケに転送されたの?」

「いいや、自分の意志で」

「瞬間移動ってやつかな」

「なら、俺を元の世界に帰してよ」



「帰してやるさ。

だけど、今我はやらなくてはやらないことがある。

グレーボーイ、帰してやれ」

「グレーキッズ、一人で大丈夫なの?」

「大丈夫さ。

それにグレーボーイが来てくれること、信じてるから」

「ありがとう‥‥」



 元の世界に帰れる‥‥。

  だけど、ミッケのことが気になる‥‥。

「今は、解決したいことがあるんだ。
そこから、人間世界に帰っても遅くないから?」

「いつでもいいぞ」
 グレーボーイが返事をした。

  俺は、ただひたすらに歩いた。
  そこで、青い髪と青い瞳の少女と目が合った。
  俺は、一目惚れしてしまった。

「あの」
「今、世界が大惨事になっているの。
雑談は受け付けない」

  何なんだ、この子は?

「大惨事?」
「三毛猫誘拐」
「これって、俺たちに協力できるってこと?」
「協力? 他者の願いを叶えることができる」

「じゃあ、三毛猫を取り返してください。
俺と付き合ってください。
元の世界に帰してください」

 俺は、迷うことなかった。

「え?」

  どこからか光がさし、三毛猫事件は解決した。
  俺と青髪の子は、付き合うことになった。
  俺は、元の世界に帰れた。
しおりを挟む

処理中です...