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5 クリスティーナの買い物
しおりを挟む「リン、手繋ぐよ!」
そう言って私にキラキラとした顔で手を差し出してくる。かわいい。
王都は、地価が高いので金持ちしか住めない。その為、公共の場がしっかり整備されていて綺麗なのだ。
そんな広い道で3人並んで歩く。
「リン、そのバレッタ綺麗ね」
「ありがとうございます」
クリスティーナに褒められると、やはり嬉しくなる。
王子で不快になった気持ちが浄化するようだ。
「今日、リンキレイだね!」
「ウメもありがとう」
かわいい。
そうして、雑談をしながら歩いて行くと目的の場所が見えてきた。
「見えましたわ!」
そこは、煌びやかなドレスが並ぶブティックだった。
毎年行われる卒業パーティーには全生徒が招待されることとなっており、基本的に病気かドレスを手に入れる事が出来ない等の事情ない限りは参加しなければならない。
クリスティーナ曰く、今から注文しておかないとオーダードレスは間に合わないそう。
店内のあまりの豪華さに圧倒される。今までドレスなど見たことも無かったからだ。
高位貴族であるクリスティーナは丁寧にもてなされて慣れた手付きで着々とドレスの話し合いを進めている。
私はクリスティーナの護衛だと思われたようで、ウメと同じ所に案内される。
どのみちどうすることも出来ないのでウメと待機するが、かなり暇なのでウメに何気ない話を振る。
「ウメはしたいことはないか?」
「したいこと?」
「ああ。今じゃなくても将来したいこととか」
ウメは、うーんと考える素ぶりをして考える。
前世のウメくらい歳の時の夢は何だったか…
「一番の願いはクリスティーナとずっと一緒にいることだけど、魔法習ってみたい」
「なるほど…ん?じゃあ、ウメの耳と尻尾はウメ魔法で消している訳ではないのか」
「うん。これは、これで消してる」
そう言ってウメはペンダントを取り出した。
赤い色の綺麗な宝石のペンダントだ。少し触れてみると、魔力がこもっているのが分かる。
「これに魔力がこもっている。普通、魔力入りの道具…魔道具を作れるのはかなりの実力が無いと無理だ。それに、そんな人に依頼出来る何て高位貴族か王室くらい…まさかな」
「見せてくれてありがとう」と言ってウメの頭を撫でる。変な憶測は身を滅ぼしかけない。やめておこう。
魔法は、闇の精霊の加護を持っていない獣人が使えるもので、一旦獣人国で診断してもらわなければならない。
「じゃあ、いつか私と獣人国に行ってみるのもアリだな」
「ホント?」
「え」
「獣人国に連れて行ってくれるの?」
急にウメが詰めて、ぎゅむぎゅむと私に顔を擦り付ける。
「…っおう、連れて行くから、一旦離れよう」
びっくりした。
そんなに獣人国に行きたかったのか。…確かに、本当の親が居るかもしれないしな。
「じゃあ、約束して」
「ああ、約束だ」
私は右手を小指を立てた状態で出すが、ウメは訳が分からず首を傾げた。
「そうか、ここじゃ通じないか。ウメ、同じ様に右手をしてみて」
ウメは、素直に私を真似する。
その指に私の指を絡め、指切りげんまんとお馴染みの文句を言う。
「これは、約束の証。私が約束を破ったら、酷い事になるよっていう」
「そうなんだ」
ウメは、嬉しそうに離された小指を見つめる。
そんな中、クリスティーナから声がかかる。
「ねぇ、二人とも!色で迷っているの。アドバイスくれない?」
「分かりました」
「分かった!」
クリスティーナの近くにいくと、綺麗に描かれたドレスのラフがあった。
「このドレスにする予定なんだけど…」
「青!青似合う!!」
確かに、クリスティーナは落ち着いた雰囲気の青は絶対似合うだろう。
「うーん、この前のドレスが青だったのよ」
「じゃあ、エメラルド色はどうでしょう?落ち着いた雰囲気はそのままで、新しい印象を与えることが出来そうです」
「そうね!それに、エメラルドに濃紺の飾りが似合いそう!」
思いついたとばかりにさっそく店員と話を進め始めた。
そんなクリスティーナを見て、邪魔しないようウメと元の位置に戻る。
そうしてさっきと同じように待っていると、突然何か不思議な感覚に陥る。
感じた事のない心の騒めき。
不快感はない、それよりも自分が本当に待っていたような…会いたくてしょうがないような胸の疼き。
「リン、大丈夫?」
そんな私を心配したのか、ウメが心配そうに顔を覗き混んでくる。
「ああ、すまん。少し立ち眩みがしただけだ」
話し合いもだいたいまとまったようなので、店を出る準備をする。
かなり慣れたようで、マシになったものの未だに違和感がある。
今は、クリスティーナのお手洗い待ちだ。
「ご、ごめんなさい!待たせたわね」
急いでクリスティーナが戻ってきた。顔が少し赤い。トイレがかなり遠かったのだろうか?
「この後はどうしますか?」
「そりゃもちろん、カフェでお茶するのよ!」
カフェでお茶は友達とのお出かけの定番だ。私前世で良く行っていた気がする。
「いいですね」
クリスティーナといると良い前世の記憶を思い出せる。
さっきとは違う少し燻ったいような気持ちのまま、3人でお出かけを続けた。
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