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お前のためにしたんじゃないけど
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気がついたらベッドの上。目の前には職場の後輩の顔。こんな至近距離で見たのは、多分初めてだ。
数秒前の感覚を身体が覚えている。俺、もしかしてコイツにキスされた?
「えー……っ、と、」
「あ、起きましたか」
近いちかい。かかる吐息がくすぐったい。ついでに、ちょっと酒くさい。寝ている俺の上に、何故か覆いかぶさるような体勢で後輩がいて。多分、キスもしてて。それ以外何もわからない。
「ああ、えっと……おはよう? ていうか、これ、どういう状況?」
俺の発言に、彼は目を見開いた。もとより強力な眼力が倍になる。怖い。俺はどうやら相当やらかしたようだ。
「えっと、ごめ、」
「先輩、どこまで分かってますか? 俺と飲んでたこと覚えてます?」
謝罪の言葉を遮って差し込まれた声はあくまで優しく、非難の響きはないようだった。しかし、やはり眼が怖い。鋭い視線が、誤魔化しは効かないと言っている。
「どこまで……うーん……」
まぶたを閉じて、焦る頭の中をさらに引っ掻き回し記憶をたどった。
今日、俺は、仕事を終え自宅で一息ついたあと、予定していた約束を土壇場で取り消された。待ち合わせ場所で一人、宙ぶらりんになった心身を持て余し、ヤケになって彼を呼びつけ、半ば無理やり飲みに誘い、最初の一杯……結構強いやつだったかも……それを一気に呷って、他愛もない話を数分。そのあたりで、記憶は途切れていた。
「最初の一杯飲んで、ちょっと話したとこまでかな……」
俺がそう正直に白状したとたん、穴を開けられるかと思うほど強かった彼の眼差しが、ふっ、と緩んだ。そして俺の上に覆い被さっていた身体は、大きな溜め息とともに横に寝転がった。自分よりも一回りは大きな肉体が移動したせいで、ベッドが音を立てて軋む。
自由がきくようになった上半身を起こし、あたりを見渡す。男二人が余裕で寝られる大きなベッド、いかがわしい行為に必要なあれこれ、もしかしなくてもラブホテルの一室だ。
俺はシャツとスラックスを身に着けているが、目の前の相手は下着1枚。胸から腹にかけての見事な彼の筋肉美は、想像していたよりも遥かに整っている。……いや、見惚れている場合じゃない。
「なんで、こんな……」
一体、何がどう転んだらこんな事態になるんだ。俺は何をやらかしたんだ。あまりに恐ろしくて、真相を知っている人物に聞くことができない。
それに、何故か彼は仰向けのまま脱力しきって動かない。その目はただただ天井のほうに向けられている。焦点があっているようないないような、ぼんやりとした様子は、先程の鋭さが嘘のようだ。
「大丈夫か…………?」
声をかけつつ、ひらひらと、顔の前に手をかざしてみる。するとその手が突然掴まれ、引っぱられた。身体ごと傾いてしまい、また顔が至近距離だ。
「え、っ」
急な行動に驚いている間もなく、光を取り戻した眼に射抜かれる。
「選んでください、先輩。このまま何もなかったことにするか、何があったか聞いてこの後に進むか」
「は…………?」
究極の2択みたいな言い方をしているが、何があったかなんて気になるに決まっている。しかし、この後に進む? 一体、どこに向かって。ああ、考えるのが面倒だ。
「気になるだろ、何があったか教えてくれ」
「本当に、いいんですね」
「…………ああ、良いよ。頼む」
掴まれた手が解放されて近づきすぎた顔は離れたが、彼はこちらをしっかり見つめたまま、細く長く息を吐き、ゆっくりと口を開いた。
「じゃあ、言います。まず、俺を急に飲みに誘った理由の話をされました。……先輩、俺に電話する前の記憶はありますね?」
首筋が熱くなり、汗が滲む。まだ話は続くだろうに、この時点でかなりの動揺から返答がなかなかできず、やっと声が出せるまでに不自然な間が空いてしまった。
「理由……ああ、約束をドタキャンされたから」
「はい、そうですよね。でも、それだけじゃなかったですよ。約束していた相手がどういう人か、何をしようとしていたのか、そのために先輩がしてた"準備"のことまで、それはもう詳しく、こっちから聞いてもいないのに延々と」
まだ少しふわふわしていた頭を、思い切りひっぱたかれたような衝撃。
「は……嘘だろ……」
なんてことだ。終わった。開いた口が塞がらないとはこのことか。返す言葉が見つからないでいると、さらに彼は話を続けた。
「ほんと、情報量に頭がパンクしそうでしたよ。先輩が、その……男とこういう事する人で、入れられるのが好きで、とか」
「あー…………」
本当に全部言ってしまったんだな。絶望感でくらくらしてきた。思わず両手で顔を覆う。いっそこのまま寝てしまって、全部夢だったことにできないだろうか。
「……それで、じゃあ代わりに俺としましょう、って言ったら、いいよー、なんてあっさり言うんで、今の状況に」
「待て、……代わりに? どうしてそうなる」
「どうして、って……なんか可哀想だし、酔ってるとこ可愛かったんで、いけるなって思って」
余計なことまで洗いざらい吐露してしまった事への恥で埋め尽くされていた頭の中が、徐々に現状への疑問にすり替わる。
俺の話を聞いて、目の前の彼は、引くでも軽蔑するでもなく、乗ったと。つまりは、……俺を抱くつもりで一緒にホテルに入って、キスして……やっぱり、信じられない。
「無理してるんじゃないのか、俺なんか抱けないだろ」
もとより彼のルックスも性格も好みど真ん中なこともあって、俺が強く頼み込んだ可能性も残されている。しかし、次の瞬間には無用な心配だったと判明した。
「コレ見て、まだそんなこと言えますか」
視線を誘導された先――彼の下腹部には下着の布を押し上げるモノが存在を主張していた。
「うわ……」
あまりのことに思わず声が漏れる。そこにあったものが臨戦態勢である事実もそうだが、見た感じから予想できるその大きさがとんでもない。
「話、もう終わりでいいですよね。先輩も準備できてるってことで、もう、しましょう? 見ず知らずの男よりは安心でしょ」
まだ頭の整理がついていない状況で、改めて押し倒された。唇が重なったと思えば舌が入り込んで、自由にできない呼吸にまとまらない思考はさらに溶けていく。ざらついた感触が口内を蹂躙する。上顎を撫でられると、身体から力が抜けていく。
頬に触れる手は優しいのに、粘膜を侵す舌は容赦がない。
「っは、……お前な、俺は、まだ……っ、あ!」
「まだ……なんですか? こっちは少し反応してますよ」
布の上からねっとりと股間を撫でられたと思えば、もう、全部脱いじゃいましょうか。と、シャツのボタンを器用に外される。まだ動揺もあるし覚悟の決まりきらないまま、みるみるうちに上も下も全て剥かれていった。
「ホントにここから入れるんですよね……」
遠慮も何もなく俺の脚を開いた彼は、一度も触れたことのないであろう他人の後孔を見つめながら呟く。
「そりゃあ、他にないだろ……あっ、おい……っ」
返答の最中に、くちゅ、と小さな水音と共に指が侵入していた。思い切り良すぎだろ。ホントに男、初めてなのか。
「わ、もう2本入りますよ」
「まて、ちょっと、……んっ、ぁ」
念入りに準備していたとはいえ、無遠慮にかき回されては落ち着いていられない。指先が弱いところを掠める度にもどかしくなり、はしたなく腰が揺れる。反応から察したのか、探るような動きに変わってすぐに狙いを一点に集中された。
「はぁ、う、っ、や、そこばっか、……あ、あ゛ぁ」
「あれっ、……ダメですか、これ」
そう言ってピタリと動きを止められ、焦れた箇所が熱を持て余す。わざとなのか本気なのか、読めない。どう答えたら良いものかと何も言えずにいると、音を低めた声が降ってきた。
「ちゃんと言ってくれなきゃ分かりませんよ、先輩」
あ、わざとだった。思ったよりもかなり意地が悪いなコイツ。職場では、尻尾が見えそうなくらい犬のように慕ってくるのに、こんな性質を隠し持ってたのか。
「……っ、そこ、いいからっ……もっと」
「はいっ、わかりました」
元気のいい返事が聴こえたと同時に、指が抜かれた。期待が裏切られたうえ、意図が読めずに彼の顔を見つめる。また、あの目だ。ギラついた色が滲む視線。
「先輩のいいトコ覚えたんで……今度はこっちで」
下着が脱ぎ去られたところで、モノの全貌が明らかになり、思わず息を呑んだ。こんなのが全部入ったら俺はどうなるんだ……。
「いや、もう少し解してから……、あ」
「もう、待てないです」
さっきまで指が入っていたところに、熱いものをを押し当てられる。いつの間にゴムまでつけたのか。最低限の理性は残っていても、呼吸の荒さからみると余裕がないのは本当らしかった。
「頼むからっ、一気に行くなよ!?」
忠告に曖昧な頷きで返した彼は、ゆっくりと体重をかけて押し入ってきた。楽に進めるよう少しは緩めてやりたいが、対応しきれない。
「くっ……キツ……っ、」
「っぐ、あ゛……はーっ、ぁ、……んん゛、ぅ」
あまりの圧迫感に、情けないうめき声しか出てこない。初めてではないけれど、これまでに経験したものの中では大振りなペニスは、思ったよりも強く内臓を押し上げてくる。
「だいじょぶ、ですか……ぁ、せんぱい、力抜いて……」
「んっ……無理、むり、いっ……」
想定外の質量と熱は、入り込んでそのまま動きを止めている。それにもかかわらず、腹の中はみっちりと埋まっていて、突き破られてしまいそうだ。
「おまえのっ、デカすぎ……動くなよ……まだ……」
「うっ……っく、はっ、ハイ……」
細く絞り出すような呼吸を繰り返し、馴染むのを待つ。繋いだ手の暖かさ、堪えながらもこちらを気遣う優しい目つき。余計な感情が芽生えそうになる。
「んっ、…………っふ、ぅ」
腕を伸ばし、後頭部から顔を引き寄せる。唇が重なった次の瞬間には、舌をねじ込んでいた。その感触に集中して、下半身で起こっていることから気をそらす。
それでも、少し身動ぎするだけで粘ついた音が立った。今まさに耽っている行為のために、俺自身が準備したもののせいで。予定とは違う相手でも、終わった後に気まずくなるかもしれなくても、より快感を得るためにはしっかりと役立っていた。
「っは、ぁ、……あ、ちょっ、待てって、」
激しくはないが、小刻みに揺すられて快感が溜まっていく。窮屈なのは変わらないが、腹の中は少しづつ、彼のものに形を馴染ませているようだ。
「っ、どう……ですか、そろそろ……」
「ふ、ぅ……っ、な、なんとか……ゆっくりなら、……っ、おい、」
「すみません、俺、もうむり」
「んあっ、あ、ぁ、っひ、ぐ、ぁ……っ」
入れる前までの、余裕ぶった意地悪さはどこへやら。結果的には似たようなものだが、首筋まで紅く染め汗を滴らせる様子はどこか可愛らしい。俺の中はそんなに気持ちがいいんだろうか。
「せんぱい、も、」
「んっ……? あっ、……そこは、触んな」
挿入の衝撃で一度萎えた俺の性器は、再び芯を持ち始めていた。先端を指の腹で撫でながらゆっくりと全体を扱かれると、瞬く間に硬度を取り戻す。前後から同時に受ける刺激で脳内がじわじわと蕩けていく。
「気持ちよく、ないですか?」
「あっ、あ、ぅ、やだ、やめろ、っ……」
要求はすぐには聞き入れられず、もう限界で、熱を吐き出す直前まで来てしまう。
だが、俺のものを甘やかしていた手は突然離された。ここまで行ったのに、良いところでまた止められてしまってはかなわない。解放されるタイミングを失ったまま、続けられる内側からの刺激でおかしくなりそうだ。
「先輩かわいい……一緒にいきましょ、もうちょっと、なんで」
「あ゛あ、ぅ、っぐ、あ、」
射精を追い求める彼の激しい動きに、もう言葉ですら抗おうと思えなかった。余裕のない表情、普段は比較的おっとりしている彼が見せた、雄の顔。
「すご……っ、は、気持ちいい、……っ」
「んっ、あ、……そこ、ぁ、いい、っ、」
みっともなく垂れ流す声は掠れてきている。慣れていないはずの彼にきっちりと弱いところを責められて、休む間もなく追い詰められていった。
「せんぱい、も、俺……でる、出ます……っ」
「あ、ぁ――――っ」
腹の中で、大きく脈打っている。膜越しに注がれる熱の感覚こそ分からないが、目の前の彼が満足げな表情をしていて一つ安心した。後々になって後悔するのかもしれないけれど。
アルコールの影響も残っていたのだろうか、後始末をした記憶もないままに寝落ちていた。下着はなんとか履いている。後ろから俺を抱きしめる形で眠っている彼はどうやら、事後の世話をしてくれたらしい。視界の端に入ったデジタル時計の数値を見ると、バタバタとコトを起こしてから4時間ほど経過していた。
本当に、セックスしたんだよな、コイツと。背中に感じる体温、かかる吐息がくすぐったい。酒の匂いは無くなったが、今度は身体が汗くさい。
「おい……寝てんのか?」
「ん……あ、せんぱい、おはようございます」
なんて呑気な返答だろう。ちょっと前まで、俺の身体を好きにしていたえないユルさだ。
「忘れていいからな、こんなの。迷惑かけたのは俺なんだ」
「そんな! 忘れませんよ。勿体ない」
そう言いながら身体を起こした彼は、俺の方を見下ろしながらスルリと頬を撫でた。思わず顔を背けたが、結局逃げきれずに捕まってしまう。
「先輩の可愛いところ、いっぱい見れて良かったって思ってるんで」
かわいい。最中にも言われたが、改めて言われると気恥ずかしい。そこそこ年の離れたいい大人だぞ、俺は。
「おー……お前、せっかく立派なモン持ってるのに、入れてからは堪え性なかったよなぁ」
「溜まってただけですよ! 次の時は、こうはいきませんからね。覚悟しててください」
いやいや、次っていつだよ。なんて、笑いながら言ってはみたけれど。
内心では既に期待してしまっているのを、素直に言葉で出すことはできなかった。
数秒前の感覚を身体が覚えている。俺、もしかしてコイツにキスされた?
「えー……っ、と、」
「あ、起きましたか」
近いちかい。かかる吐息がくすぐったい。ついでに、ちょっと酒くさい。寝ている俺の上に、何故か覆いかぶさるような体勢で後輩がいて。多分、キスもしてて。それ以外何もわからない。
「ああ、えっと……おはよう? ていうか、これ、どういう状況?」
俺の発言に、彼は目を見開いた。もとより強力な眼力が倍になる。怖い。俺はどうやら相当やらかしたようだ。
「えっと、ごめ、」
「先輩、どこまで分かってますか? 俺と飲んでたこと覚えてます?」
謝罪の言葉を遮って差し込まれた声はあくまで優しく、非難の響きはないようだった。しかし、やはり眼が怖い。鋭い視線が、誤魔化しは効かないと言っている。
「どこまで……うーん……」
まぶたを閉じて、焦る頭の中をさらに引っ掻き回し記憶をたどった。
今日、俺は、仕事を終え自宅で一息ついたあと、予定していた約束を土壇場で取り消された。待ち合わせ場所で一人、宙ぶらりんになった心身を持て余し、ヤケになって彼を呼びつけ、半ば無理やり飲みに誘い、最初の一杯……結構強いやつだったかも……それを一気に呷って、他愛もない話を数分。そのあたりで、記憶は途切れていた。
「最初の一杯飲んで、ちょっと話したとこまでかな……」
俺がそう正直に白状したとたん、穴を開けられるかと思うほど強かった彼の眼差しが、ふっ、と緩んだ。そして俺の上に覆い被さっていた身体は、大きな溜め息とともに横に寝転がった。自分よりも一回りは大きな肉体が移動したせいで、ベッドが音を立てて軋む。
自由がきくようになった上半身を起こし、あたりを見渡す。男二人が余裕で寝られる大きなベッド、いかがわしい行為に必要なあれこれ、もしかしなくてもラブホテルの一室だ。
俺はシャツとスラックスを身に着けているが、目の前の相手は下着1枚。胸から腹にかけての見事な彼の筋肉美は、想像していたよりも遥かに整っている。……いや、見惚れている場合じゃない。
「なんで、こんな……」
一体、何がどう転んだらこんな事態になるんだ。俺は何をやらかしたんだ。あまりに恐ろしくて、真相を知っている人物に聞くことができない。
それに、何故か彼は仰向けのまま脱力しきって動かない。その目はただただ天井のほうに向けられている。焦点があっているようないないような、ぼんやりとした様子は、先程の鋭さが嘘のようだ。
「大丈夫か…………?」
声をかけつつ、ひらひらと、顔の前に手をかざしてみる。するとその手が突然掴まれ、引っぱられた。身体ごと傾いてしまい、また顔が至近距離だ。
「え、っ」
急な行動に驚いている間もなく、光を取り戻した眼に射抜かれる。
「選んでください、先輩。このまま何もなかったことにするか、何があったか聞いてこの後に進むか」
「は…………?」
究極の2択みたいな言い方をしているが、何があったかなんて気になるに決まっている。しかし、この後に進む? 一体、どこに向かって。ああ、考えるのが面倒だ。
「気になるだろ、何があったか教えてくれ」
「本当に、いいんですね」
「…………ああ、良いよ。頼む」
掴まれた手が解放されて近づきすぎた顔は離れたが、彼はこちらをしっかり見つめたまま、細く長く息を吐き、ゆっくりと口を開いた。
「じゃあ、言います。まず、俺を急に飲みに誘った理由の話をされました。……先輩、俺に電話する前の記憶はありますね?」
首筋が熱くなり、汗が滲む。まだ話は続くだろうに、この時点でかなりの動揺から返答がなかなかできず、やっと声が出せるまでに不自然な間が空いてしまった。
「理由……ああ、約束をドタキャンされたから」
「はい、そうですよね。でも、それだけじゃなかったですよ。約束していた相手がどういう人か、何をしようとしていたのか、そのために先輩がしてた"準備"のことまで、それはもう詳しく、こっちから聞いてもいないのに延々と」
まだ少しふわふわしていた頭を、思い切りひっぱたかれたような衝撃。
「は……嘘だろ……」
なんてことだ。終わった。開いた口が塞がらないとはこのことか。返す言葉が見つからないでいると、さらに彼は話を続けた。
「ほんと、情報量に頭がパンクしそうでしたよ。先輩が、その……男とこういう事する人で、入れられるのが好きで、とか」
「あー…………」
本当に全部言ってしまったんだな。絶望感でくらくらしてきた。思わず両手で顔を覆う。いっそこのまま寝てしまって、全部夢だったことにできないだろうか。
「……それで、じゃあ代わりに俺としましょう、って言ったら、いいよー、なんてあっさり言うんで、今の状況に」
「待て、……代わりに? どうしてそうなる」
「どうして、って……なんか可哀想だし、酔ってるとこ可愛かったんで、いけるなって思って」
余計なことまで洗いざらい吐露してしまった事への恥で埋め尽くされていた頭の中が、徐々に現状への疑問にすり替わる。
俺の話を聞いて、目の前の彼は、引くでも軽蔑するでもなく、乗ったと。つまりは、……俺を抱くつもりで一緒にホテルに入って、キスして……やっぱり、信じられない。
「無理してるんじゃないのか、俺なんか抱けないだろ」
もとより彼のルックスも性格も好みど真ん中なこともあって、俺が強く頼み込んだ可能性も残されている。しかし、次の瞬間には無用な心配だったと判明した。
「コレ見て、まだそんなこと言えますか」
視線を誘導された先――彼の下腹部には下着の布を押し上げるモノが存在を主張していた。
「うわ……」
あまりのことに思わず声が漏れる。そこにあったものが臨戦態勢である事実もそうだが、見た感じから予想できるその大きさがとんでもない。
「話、もう終わりでいいですよね。先輩も準備できてるってことで、もう、しましょう? 見ず知らずの男よりは安心でしょ」
まだ頭の整理がついていない状況で、改めて押し倒された。唇が重なったと思えば舌が入り込んで、自由にできない呼吸にまとまらない思考はさらに溶けていく。ざらついた感触が口内を蹂躙する。上顎を撫でられると、身体から力が抜けていく。
頬に触れる手は優しいのに、粘膜を侵す舌は容赦がない。
「っは、……お前な、俺は、まだ……っ、あ!」
「まだ……なんですか? こっちは少し反応してますよ」
布の上からねっとりと股間を撫でられたと思えば、もう、全部脱いじゃいましょうか。と、シャツのボタンを器用に外される。まだ動揺もあるし覚悟の決まりきらないまま、みるみるうちに上も下も全て剥かれていった。
「ホントにここから入れるんですよね……」
遠慮も何もなく俺の脚を開いた彼は、一度も触れたことのないであろう他人の後孔を見つめながら呟く。
「そりゃあ、他にないだろ……あっ、おい……っ」
返答の最中に、くちゅ、と小さな水音と共に指が侵入していた。思い切り良すぎだろ。ホントに男、初めてなのか。
「わ、もう2本入りますよ」
「まて、ちょっと、……んっ、ぁ」
念入りに準備していたとはいえ、無遠慮にかき回されては落ち着いていられない。指先が弱いところを掠める度にもどかしくなり、はしたなく腰が揺れる。反応から察したのか、探るような動きに変わってすぐに狙いを一点に集中された。
「はぁ、う、っ、や、そこばっか、……あ、あ゛ぁ」
「あれっ、……ダメですか、これ」
そう言ってピタリと動きを止められ、焦れた箇所が熱を持て余す。わざとなのか本気なのか、読めない。どう答えたら良いものかと何も言えずにいると、音を低めた声が降ってきた。
「ちゃんと言ってくれなきゃ分かりませんよ、先輩」
あ、わざとだった。思ったよりもかなり意地が悪いなコイツ。職場では、尻尾が見えそうなくらい犬のように慕ってくるのに、こんな性質を隠し持ってたのか。
「……っ、そこ、いいからっ……もっと」
「はいっ、わかりました」
元気のいい返事が聴こえたと同時に、指が抜かれた。期待が裏切られたうえ、意図が読めずに彼の顔を見つめる。また、あの目だ。ギラついた色が滲む視線。
「先輩のいいトコ覚えたんで……今度はこっちで」
下着が脱ぎ去られたところで、モノの全貌が明らかになり、思わず息を呑んだ。こんなのが全部入ったら俺はどうなるんだ……。
「いや、もう少し解してから……、あ」
「もう、待てないです」
さっきまで指が入っていたところに、熱いものをを押し当てられる。いつの間にゴムまでつけたのか。最低限の理性は残っていても、呼吸の荒さからみると余裕がないのは本当らしかった。
「頼むからっ、一気に行くなよ!?」
忠告に曖昧な頷きで返した彼は、ゆっくりと体重をかけて押し入ってきた。楽に進めるよう少しは緩めてやりたいが、対応しきれない。
「くっ……キツ……っ、」
「っぐ、あ゛……はーっ、ぁ、……んん゛、ぅ」
あまりの圧迫感に、情けないうめき声しか出てこない。初めてではないけれど、これまでに経験したものの中では大振りなペニスは、思ったよりも強く内臓を押し上げてくる。
「だいじょぶ、ですか……ぁ、せんぱい、力抜いて……」
「んっ……無理、むり、いっ……」
想定外の質量と熱は、入り込んでそのまま動きを止めている。それにもかかわらず、腹の中はみっちりと埋まっていて、突き破られてしまいそうだ。
「おまえのっ、デカすぎ……動くなよ……まだ……」
「うっ……っく、はっ、ハイ……」
細く絞り出すような呼吸を繰り返し、馴染むのを待つ。繋いだ手の暖かさ、堪えながらもこちらを気遣う優しい目つき。余計な感情が芽生えそうになる。
「んっ、…………っふ、ぅ」
腕を伸ばし、後頭部から顔を引き寄せる。唇が重なった次の瞬間には、舌をねじ込んでいた。その感触に集中して、下半身で起こっていることから気をそらす。
それでも、少し身動ぎするだけで粘ついた音が立った。今まさに耽っている行為のために、俺自身が準備したもののせいで。予定とは違う相手でも、終わった後に気まずくなるかもしれなくても、より快感を得るためにはしっかりと役立っていた。
「っは、ぁ、……あ、ちょっ、待てって、」
激しくはないが、小刻みに揺すられて快感が溜まっていく。窮屈なのは変わらないが、腹の中は少しづつ、彼のものに形を馴染ませているようだ。
「っ、どう……ですか、そろそろ……」
「ふ、ぅ……っ、な、なんとか……ゆっくりなら、……っ、おい、」
「すみません、俺、もうむり」
「んあっ、あ、ぁ、っひ、ぐ、ぁ……っ」
入れる前までの、余裕ぶった意地悪さはどこへやら。結果的には似たようなものだが、首筋まで紅く染め汗を滴らせる様子はどこか可愛らしい。俺の中はそんなに気持ちがいいんだろうか。
「せんぱい、も、」
「んっ……? あっ、……そこは、触んな」
挿入の衝撃で一度萎えた俺の性器は、再び芯を持ち始めていた。先端を指の腹で撫でながらゆっくりと全体を扱かれると、瞬く間に硬度を取り戻す。前後から同時に受ける刺激で脳内がじわじわと蕩けていく。
「気持ちよく、ないですか?」
「あっ、あ、ぅ、やだ、やめろ、っ……」
要求はすぐには聞き入れられず、もう限界で、熱を吐き出す直前まで来てしまう。
だが、俺のものを甘やかしていた手は突然離された。ここまで行ったのに、良いところでまた止められてしまってはかなわない。解放されるタイミングを失ったまま、続けられる内側からの刺激でおかしくなりそうだ。
「先輩かわいい……一緒にいきましょ、もうちょっと、なんで」
「あ゛あ、ぅ、っぐ、あ、」
射精を追い求める彼の激しい動きに、もう言葉ですら抗おうと思えなかった。余裕のない表情、普段は比較的おっとりしている彼が見せた、雄の顔。
「すご……っ、は、気持ちいい、……っ」
「んっ、あ、……そこ、ぁ、いい、っ、」
みっともなく垂れ流す声は掠れてきている。慣れていないはずの彼にきっちりと弱いところを責められて、休む間もなく追い詰められていった。
「せんぱい、も、俺……でる、出ます……っ」
「あ、ぁ――――っ」
腹の中で、大きく脈打っている。膜越しに注がれる熱の感覚こそ分からないが、目の前の彼が満足げな表情をしていて一つ安心した。後々になって後悔するのかもしれないけれど。
アルコールの影響も残っていたのだろうか、後始末をした記憶もないままに寝落ちていた。下着はなんとか履いている。後ろから俺を抱きしめる形で眠っている彼はどうやら、事後の世話をしてくれたらしい。視界の端に入ったデジタル時計の数値を見ると、バタバタとコトを起こしてから4時間ほど経過していた。
本当に、セックスしたんだよな、コイツと。背中に感じる体温、かかる吐息がくすぐったい。酒の匂いは無くなったが、今度は身体が汗くさい。
「おい……寝てんのか?」
「ん……あ、せんぱい、おはようございます」
なんて呑気な返答だろう。ちょっと前まで、俺の身体を好きにしていたえないユルさだ。
「忘れていいからな、こんなの。迷惑かけたのは俺なんだ」
「そんな! 忘れませんよ。勿体ない」
そう言いながら身体を起こした彼は、俺の方を見下ろしながらスルリと頬を撫でた。思わず顔を背けたが、結局逃げきれずに捕まってしまう。
「先輩の可愛いところ、いっぱい見れて良かったって思ってるんで」
かわいい。最中にも言われたが、改めて言われると気恥ずかしい。そこそこ年の離れたいい大人だぞ、俺は。
「おー……お前、せっかく立派なモン持ってるのに、入れてからは堪え性なかったよなぁ」
「溜まってただけですよ! 次の時は、こうはいきませんからね。覚悟しててください」
いやいや、次っていつだよ。なんて、笑いながら言ってはみたけれど。
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