1 / 4
プロローグ
しおりを挟む
部下の報告に、はぁ……と、小さく女はため息を吐いた。
その部下に対し、女は実にシンプルで短い言葉で下がらせ、一人になったところで、ぽつり……と、つぶやく。
「気に入らないわね……やっぱり、あの国は」
大陸の西に広がる、巨大な砂漠の帝国。かの地に君臨する、第二代皇帝……異世界人のジュラン・エトー。
そして、彼に従う、『二人の妖魔』。
元来妖魔は、「人類の敵」だった。人に寄生し、人の精気を喰らい、かつては滅ぼす寸前まで追い詰めたことだってある。
はぐれ妖魔という者が、決していないわけではない。また、妖魔の中にもいくつかの派閥があり、自分に付き従っている者たちだけではないことも、重々わかってはいる。
が、妖魔が人間に……それも、異世界人に従うなどと、聞いたことがない。否、あってはならない。
「そうね。最近、調子にのってるみたいだし……」
ちょっとだけ、痛い目にあってもらおうかしら……。
まどろんだ意識が覚醒し、ジュッドは途端に不機嫌になった。
「……ったく、せっかく眠っていたのに、なんで起こし……」
た……と、ジュッドは最後まで言えなかった。否、異様な状況に覆わず言葉が出ない。
精気切れで眠っていた自分を起こすため、自身の精気を分け与えたであろうライヨウは、既に全身血まみれで、力なくぐったりと、ジュッドに覆いかぶさる形で倒れていた。
「な……何があった!」
「……うぅ」
ライヨウを激しく揺するが、呻くだけで言葉にならない。
普段、浅い切傷程度なら瞬時に治り、骨が折れようが致死レベルの全身大火傷を負おうが、数分で完治してしまうほど丈夫なライヨウではあるのだが、何故か、その傷は消えることなく、只人のように、そこに存在し続けていた。
一番深いであろう、彼の腹部と首元から、赤い血がどくどくと流れる。
ライヨウにとっての「例外」に、ジュッドは心当たりがあった。
ライヨウの、双子の弟……。
「ジュランの身に、何かあったのか……」
「う……ん……」
ライヨウの手に握られていた、一枚の紙が、はらりと石の床に落ちる。自分が眠っていた寝台に彼を横たえると、ジュッドはその紙を拾い上げた。
力強く握りしめていた故か、くしゃくしゃにシワが入っていたものの、透かしの紋様が入ったその繊細な紙には、流れるような文字が、一言だけ。
「ジュラン閣下と『会談』したく、我が国にご招待いたしました……か」
差出人の名を探し、ぎょっと、ジュッドは二度見する。
ライヨウの血で滲み、やや、読みづらくはなっていたが、間違いない……。
「ミーレイバースト・シェイラ・リェン・ラジスティア……だと……?」
その名が示す人物は、この世界において、唯一人。
滅んだ東の大帝国ラディアータの、ナーガ帝第一皇女。
妖魔が治める北の大地、アリストリアル皇帝を、裏で操る女摂政。
この世界において、「最強」とされる『妖魔王』の妻……。
そして……。
「……また、妙な奴に目を付けられたな……ジュラン……」
眉間にシワを寄せ、ジュッドは大きく、ため息を吐いた。
その部下に対し、女は実にシンプルで短い言葉で下がらせ、一人になったところで、ぽつり……と、つぶやく。
「気に入らないわね……やっぱり、あの国は」
大陸の西に広がる、巨大な砂漠の帝国。かの地に君臨する、第二代皇帝……異世界人のジュラン・エトー。
そして、彼に従う、『二人の妖魔』。
元来妖魔は、「人類の敵」だった。人に寄生し、人の精気を喰らい、かつては滅ぼす寸前まで追い詰めたことだってある。
はぐれ妖魔という者が、決していないわけではない。また、妖魔の中にもいくつかの派閥があり、自分に付き従っている者たちだけではないことも、重々わかってはいる。
が、妖魔が人間に……それも、異世界人に従うなどと、聞いたことがない。否、あってはならない。
「そうね。最近、調子にのってるみたいだし……」
ちょっとだけ、痛い目にあってもらおうかしら……。
まどろんだ意識が覚醒し、ジュッドは途端に不機嫌になった。
「……ったく、せっかく眠っていたのに、なんで起こし……」
た……と、ジュッドは最後まで言えなかった。否、異様な状況に覆わず言葉が出ない。
精気切れで眠っていた自分を起こすため、自身の精気を分け与えたであろうライヨウは、既に全身血まみれで、力なくぐったりと、ジュッドに覆いかぶさる形で倒れていた。
「な……何があった!」
「……うぅ」
ライヨウを激しく揺するが、呻くだけで言葉にならない。
普段、浅い切傷程度なら瞬時に治り、骨が折れようが致死レベルの全身大火傷を負おうが、数分で完治してしまうほど丈夫なライヨウではあるのだが、何故か、その傷は消えることなく、只人のように、そこに存在し続けていた。
一番深いであろう、彼の腹部と首元から、赤い血がどくどくと流れる。
ライヨウにとっての「例外」に、ジュッドは心当たりがあった。
ライヨウの、双子の弟……。
「ジュランの身に、何かあったのか……」
「う……ん……」
ライヨウの手に握られていた、一枚の紙が、はらりと石の床に落ちる。自分が眠っていた寝台に彼を横たえると、ジュッドはその紙を拾い上げた。
力強く握りしめていた故か、くしゃくしゃにシワが入っていたものの、透かしの紋様が入ったその繊細な紙には、流れるような文字が、一言だけ。
「ジュラン閣下と『会談』したく、我が国にご招待いたしました……か」
差出人の名を探し、ぎょっと、ジュッドは二度見する。
ライヨウの血で滲み、やや、読みづらくはなっていたが、間違いない……。
「ミーレイバースト・シェイラ・リェン・ラジスティア……だと……?」
その名が示す人物は、この世界において、唯一人。
滅んだ東の大帝国ラディアータの、ナーガ帝第一皇女。
妖魔が治める北の大地、アリストリアル皇帝を、裏で操る女摂政。
この世界において、「最強」とされる『妖魔王』の妻……。
そして……。
「……また、妙な奴に目を付けられたな……ジュラン……」
眉間にシワを寄せ、ジュッドは大きく、ため息を吐いた。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
二本のヤツデの求める物
あんど もあ
ファンタジー
夫の父の病が重篤と聞き、領地から王都の伯爵邸にやって来たナタリーと夫と娘のクリスティナ。クリスティナは屋敷の玄関の両脇に植えられた二本の大きなヤツデが気に入ったようだ。
新たな生活を始めようとするナタリーたちだが、次々と不幸が襲いかかり……。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる