幸薄令嬢リースベットは絶賛困惑中 〜拗らせ公爵の滾る愛は分かりにくい〜

美並ナナ

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12. アイゼルの苦難 ※

 思い返せば、この日のリースベットは夕食の時からどこか様子がおかしかった。

 心ここに在らずといった生返事が多く、視線はふらふらと彷徨い、どことなくソワソワしていた。

 昼間は庭園を散歩して、庭師に貰った花びらに大喜びし、私室に籠ってポプリ作りに精を出していたと聞いている。

 きっと久しぶりに好きなことに没頭して疲れているのだろう。

 それにこの二週間、抑えが効かないアイゼルは毎日リースベットを閨に付き合わせてしまっている。

 毎晩一回だけとはいえ、体に負担をかけてしまっている可能性も大いにある。

 だから今晩はゆっくりリースベットを眠らせてあげようと思い、アイゼルは一緒に寝るだけのつもりだったのだが……


 ……なんだこの扇情的な姿は……!!


 寝室でアイゼルを待ち受けていたは、肌の露出が多い真っ赤なネグリジェを身に纏ったリースベットだった。

 いつもは、リースベットの清純で可憐な美しさを際立たせる白やピンクといった淡い色のネグリジェなのに、今夜は真逆の雰囲気だ。

 非常に妖艶で、官能的で。

 見ているだけで、色欲がそそられる。

 しかもそれでいて、リースベットが恥ずかしげに頬を染め、もじもじとしているのにグッとくる。

 思わずゴクリと喉が鳴った。


「あ、あの、アイゼル様……?」
 
 こちらの様子を上目遣いで窺うリースベットの声を合図にしたかのように、アイゼルは本能のままにリースベットを寝台へ押し倒した。

 もう当初の予定など頭の中からすっかり消え失せていた。

 しかし、この晩のリースベットは、どこまでもアイゼルを誘惑する。

 いつもなら、リースベットが抵抗しないことをいいことに、このままアイゼルの思うがままに行為を進めるのだが、この日は違った。

「んっ……アイゼル様、ちょっと待ってください」

 珍しくリースベットがアイゼルを静止する言葉を告げ、拒否するように軽く胸を押し返したのだ。

 リースベットからの拒絶に胸が張り裂けそうになるアイゼルだったが、次の瞬間、そんな感傷もすぐに吹き飛んでいった。

「……あの、いつもアイゼル様にしていただいてばかりなので……今日は私からご奉仕してもいいですか?」

 ……は? リースベットが俺に!?

 一瞬冗談かと思ったが、リースベットの榛色の瞳は真剣そのものだ。

 これ以上この目で見つめられると、それだけで理性のタガが外れそうになり、アイゼルは視線をスッと逸らしつつ黙って頷いた。

 するとリースベットは、アイゼルを寝台の背にもたれかけて座らせる。

 そしてアイゼルの脚の間に身を滑り込ませたかと思うと、すでに硬くなったモノを服の上から恐る恐ると撫で上げた。

「………ッ」

「い、痛いですか……!?」

「……いや、大丈夫だ」

 ホッとした表情を浮かべるリースベットに促されて下を脱ぐと、アイゼルの雄は腹につきそうなほどもう立派にそり立っていた。

 それはそうだ。

 愛しいリースベットの白く細い手で優しく愛撫され、反応しない方がおかしい。

 アイゼルは戸惑いを感じる一方、どこかその先を期待する気持ちにも駆り立てられていた。

 そんな複雑な心の内にアイゼルが折り合いをつける暇もなく、リースベットの奉仕は次の段階へと進んでいく。

 リースベットは硬く熱い屹立に顔を寄せると、ペロペロと舌を這わせ出した。

 不慣れな愛撫は実にたどたどしく可愛らしい。

 時折アイゼルの反応を窺うよう見上げてくる仕草も、凶悪的に可愛くて蠱惑的だった。

 ……これは拷問すぎるだろ。

 カッと脳が焼き切れるほどに興奮し、幾度となくアイゼルは生唾を飲み込んだ。


 一方のリースベットは必死だった。

 エルマに教えられた内容を思い出し、忠実に実行していく。

 最初は間近に見たモノに慄き怯みそうになったが、自分の奉仕で少しでもアイゼルに満足してもらえるならと思った。
 
 それに奉仕していると、アイゼルが小さく呻く様子が見られ、それが気持ちいいからだと悟ったリースベットはもっとしてあげたい想いに駆られていた。

 ……えっと、次は口に含むのだったかしら?

 大きく口を開き、舐めていたモノを包み込むように咥える。

 そして口の中で舌を使って刺激を与えながら、吸い込み始めた。

 これにはアイゼルも堪らず、端正な顔を苦しげに歪めて息を荒げる。

「………くっ!」

 ついには我慢の限界を迎え、リースベットの口内に熱い飛沫を勢いよく放った。

 初めての経験に目をパチクリするリースベットだったが、次第にアイゼルが自分の奉仕で達してくれたのだと理解し、えもいえぬ喜びに胸を満たす。

 ……やったわ! これでいつも一人でご自身を慰めているアイゼル様も少しは満足してくださるかしら?

 嬉しさから口内に出された精液も躊躇うことなくゴクリの飲み込む。

 達成感に浸っていたリースベットは、すっかり気が抜けて、もはや今夜は終わったつもりになっていた。

 だが、そうは問屋が卸さない。

 ギュッときつく抱きしめられたかと思うと、次の瞬間には視界が切り替わる。

 気がつけばリースベットの体は寝台に深く沈められていた。

 リースベットを組み敷くアイゼルは怖いくらいに真剣な面持ちで、神秘的な灰色グレーの瞳には隠しきれない情欲が宿っている。

 ……あ、あれ? なんだかいつも以上に迫力がある気がするけれど……。

 本能的に危機感を感じ取ったリースベットの体がぶるりと小さく震える。

 まるで百獣の王に捕食される直前の小動物にでもなったかの気分だ。

「ア、アイゼル様……?」

「もう終わったと思っているだろ?」

「えっ……」

「今度は俺の番だ」

 アイゼルはそう静かに言い放って色気たっぷりに口の端を吊り上げると、真っ赤なネグリジェを剥取り、リースベットの両胸を可愛がり始めた。

「あっ……」

 大きすぎず、かと言って小さくもない白い膨らみの先端は、まるでアイゼルを誘うかのようにたちまちツンと立ち上がる。

 誘惑されるがまま、アイゼルはそこにむしゃぶりつき、舌先で舐め転がした。

「ああっ……んぅ……」

 見事に形勢が逆転し、今度はリースベットが甘い拷問に身を捩る。

 この二週間の間で快楽を散々教え込まれた体は、いとも簡単に火がつき、この先を期待して下腹部が疼き始めた。

 今しがた一度達したはずのアイゼルのモノもすでに復活しており、先程以上に滾りに滾っている。

「奉仕に対する礼を、たっぷり返さなければな」

 ……えっ! お礼なんていらないのに。私がしたかっただけだもの。

 そんなリースベットの心の声は、結局言葉にして伝えることが叶わなかった。

 アイゼルによる陰核への執拗な愛撫で何も考えられなくなり、口からは淫らな声しか発せなかったからだ。

 その夜は、アイゼルが果てるまでの間、「もうやめて」とリースベットが懇願するほど挿入前から何度も何度も高みに押し上げられ、最後は気絶するように意識を手放したのだった。



 その日の深夜。

 疲れ果ててスヤスヤと眠るリースベットの髪を撫で、頬に優しくキスを落としたアイゼルは、いつも通り浴室へ駆け込んだ。

 そしてもはや定位置となった椅子に腰掛けると、切羽詰まったように己のモノを取り出し扱き始める。

 脳裏に思い浮かべるのは、今夜見たリースベットの妖艶な姿だ。

 ……あの小さな口に俺のモノを咥えて、涙目になりながら一生懸命に奉仕する姿……目に毒すぎる。なんだ、あの可愛さは。

 上目遣いで見つめられた時には、本気で気がおかしくなるかと思うほどであった。

 しかも思わず口の中に出してしまった精液を、リースベットはなんの躊躇いもなくそのまま飲み干してしまった。

 不味いであろうアレをだ。

 それだけでもアイゼルは瞠目したのだが、その際のリースベットの表情を見てさらに度肝を抜かれた。

 ……まさか微笑むなんてな。しかも愛おしげに。

 自分のモノをあれほど幸せそうに目の前で飲み干されて嬉しくないわけがない。

 しかも儚げで清純な雰囲気のリースベットがそんな微笑みを浮かべると、さながら聖女かなにかのようだった。

 そんな神聖な存在を穢していると思うと、仄暗い背徳感がアイゼルを襲い、リースベットをめちゃくちゃにしたい衝動に駆られた。

 散々煽られ、渇きを覚えるほど欲情したアイゼルはもう歯止めが効かなかった。

 ……少々やりすぎてしまったな。

 それでも最後の理性を振り絞り、これでも我慢した方だ。

 際限なく求めてしまう本能を戒め、行為自体は一回で止めたのだから。

 その分、今こうしてまだまだ鎮まらない己を慰めている。

 通常でもまだ足りないと言わんばかりに元気であるのに、今夜の蠱惑的に誘惑してきたリースベットにあてられて、いつも以上に当分鎮まりそうになかった。

 アイゼルはリースベットの痴態を思い出しながら忙しく手を動かしつつも、頭の冷静な部分でふと考える。

 ……それにしても、なぜリースベットは急に奉仕なんかを? 

 加えてどうしても気になるのが「誰に」教わったのかという点だ。

 リースベットがそういった知識に疎いのは、この二週間閨を共にしていれば分かる。

 であれば、誰かが入れ知恵したと考えるのが自然だ。

 ……考えたくもないが、他の男に教えてられた、なんてことはないよな……?

 この二週間、リースベットが公爵邸から外に出ていないのは家令からの報告で把握している。

 だからその可能性は限りなくゼロであると頭では分かっているのだが、どうしてもアイゼルはモヤモヤとした感情を拭い切れなかった。

 もしもを想像するだけで、嫉妬に狂いそうになる。

 ……これは確認しなくてはな。

 その後、もうこれ以上は出ないという状態になるまでアイゼルは浴室に立て籠もり続けたのだった。
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