最強の魔砲師が失墜して行き着いた200年後の世界

アカヤシ

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第8話 フィラデル様、お嬢様から騎士にジョブチェンジ!!!

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「バレット、その大剣をワタクシに譲ってもらえません?」

「フィラデル様、いい加減にしてくれますか?」

「その魔装具はダイヤルも操作ボタンもついていない。つまりは思考操作型の魔装具、魔力がない貴女では発動すらできないでしょ?その点ワタクシには思考操作出来る程度ですが魔力がありますわ」

「本来は操作できるようにするはずじゃったが、製作者が亡くなったからのう。未完成じゃ」

フィラデルはバレットの手から取り上げ、大剣を取ると起動する。

「おぬし、その大剣を持てるのか?素の力で?」

大剣の魔装具の重量操作を発動する前から持ち上げよった。儂はもちろん身体強化の魔法を使っているし、例え大人まで成長していてもこの大剣を魔法なしで持ち上げ、ましてや振り回すことは絶対にできないだろう。両手で扱う事を前提に作られた大人の身の丈以上のサイズを誇る巨剣を。しかも右腕は妙なギブスで覆われているので左手一本で軽々持ち上げ大剣の重量に負けず操り見事に使いこなす。大剣の刃に光が灯り魔法刃が伸び、魔法刃が消え、今度は大剣を振り下ろす。地面に衝突、地面は抉れ亀裂が入るが大剣は刃こぼれなし。

一連の動作を終えるとフィラデルは跪いて大剣を捧げ持ち。

「バレット様、どうかワタクシにこの大剣を譲ってもえないでしょうか」

ステラは信じられないものを見ているとばかりに目を大きく見開き口をパクパクさせている。周りにいる野次馬をざわめき始める。

「この場の全ての責任はワタクシが負います。無論後に貴方様に請求する事などいたしません。ワタクシに用意できる物なら全てを捧げます。勿論ワタクシ自身を欲するなら妻にでも愛人でも奴隷でも構いません。どうかワタクシにこの大剣をお譲りください。この大剣を持って友の仇を討つ機会をお与えください」

「仇を討つじゃと?その大剣で人間相手にするにはオーバーな、」

「相手は魔物です・・・ダンジョン32階層にて未知の魔物と遭遇しました。全身黒い甲冑を着ており両手剣を装備した魔物です」

「いや、それ人じゃね?」

「バレット、魔物の中には生まれた時から武器や防具を装備して出てくる魔物がいるんだよ」

「生まれる?え?魔物に雄や雌なんて性別があるのか?まさかダンジョンの中で交尾なんてやっとるのか?うっ、吐き気がするのじゃ」

「いやいや、魔物は壁や床や天井なんかから出てくるらしいよ。卵が割れたみたいに亀裂が入って魔物がわいて出て産み終わったらその亀裂が消える」

「はあ、ファンタジーじゃのう。摩訶不思議じゃな。なら武器や防具は魔物から奪えるのか?」

「いいや、魔石以外そのままの状態でダンジョンから出すと消えるみたい。白老師バーゼルがダンジョンを訪れた時に何かしらの方法で持ち出すことに成功したらしいよ」

「・・・・思っておったがオヌシ、さっきから重要そうなことのほとんどに『らしい』をつけとるのう。全部聞いただけか?」

「うっ、だって私、ヴィアインから外国にくること自体が初めてだし普段は仕事や習い事でほとんど城の外まで出ないし、王家お抱えの商人が城まで来てくれるし、私、嫌われ者だからお茶会なんてほとんど呼ばないから休みの日はずっと書庫で1人本を・・・・グスッ、」

「儂が悪かったから本気っぽくで泣くのはやめるのじゃ!」

ステラが目に涙を溜め泣き出しそうだったのでとりあえず儂が謝る。その間にも微動だにせずそのままの姿勢で儂の返事を待つフィラデル。正直儂は魔砲師なので大剣は使わんしやってもよいがこの大剣はダイダロに作らせ、それまでの開発研究費用は全部儂が支払っており未完成ながらもここまでの費用はちょっとしたこしゃれた城を余裕で建てられる金額、かといって王族のフィラデルを側に置こうものなら厄介事が湯水の如く湧いてくるだろう。非常に面倒臭い。
ここは『クレアボレアス』を使ってみるか。
この片眼鏡は儂が作ったものではなくある露店商から買ったもので本来の用途は文字や言葉を自動で翻訳してくれたり、ちょっとした計算もしてくれるのだ(試作機のため難しいと時間がかかり正確ではない答えが出る時もある)。
そしてもう1つ、面白い機能として選択肢を出してくれるのだ。
基本的に役に立たないがそこそこ上手くいく時もあるのでとりあえず試してみた。

1、『お前みたいなトウのたった女より若い女がいい。もっと愛らしく肌にハリのある女を差し出すがいい!』

2、『獣の分際で何服を着てやがる。全裸だ全裸。全部脱いで四つん這いで頭を低くして懇願してみろビッチが!』

3、『なら奴隷だな。今日からお前は俺の性奴隷だ。誠心誠意尽くせよこの雌猫が!』

儂はクレアボレアスを外し地面に叩きつけた。

『変わらんじゃろうが!!!何で鬼畜外道の答えで切り抜けられると思うてるんじゃ!!!』

が、片眼鏡は光の粒子となり散ると何事もなかったかのように傷がない状態で儂の掌の上に出現した。

どうなっとるんじゃ?いや、今はそれ所ではない。王族をいつまでも跪かせておくわけにはいかない。

「なら儂をダンジョンに連れていってくれんかのう。無論ダンジョンの外周にある店とかではなく中じゃ。儂にダンジョンを探索する許可をくれ。勿論儂がダンジョン内で手に入れたものは儂のものじゃからな」

魔物相手に儂の魔法がどこまで通じるか試してみたいしな。やはり動かない的を撃ち抜くより動く的を撃ち抜く方が楽しいからのう。人生の最終目標は星を撃ち落とすことじゃが前世の全盛期には程遠い今の儂には当然不可能。ならまずは全盛期の儂に追い付くことを目標にしよう。

「ダメだ、ダメだ、大却下!」

ステラは猛反対する。

「それじゃブライアンがまた『御前会議』で調子に乗らせることになるじゃないか!」

「御前会議?なんじゃそれは?」

御前会議、それはダンジョン支部の各支部長並び幹部クラスと各国の王族も交えた一年に一度の会議であり、議題内容はダンジョン内の新発見や魔石の入手量や各階層の異常報告等であるが、ここ十年間ほどは新発見もなく、魔石の質や量も総合的には安定しており、階層の目立った異常もない。

ただしブライアン支部は別。

ブライアンは他の支部より階層攻略が進んでおり、いつも新発見はブライアン支部の報告によるもの。しかも自慢気に報告するブライアンの支部長にヴィアイン・ガルシア・ゴルオレスの各支部長は苛立ちと焦りを隠せない。なにせ自国の王族も参加する会議において目立った成果を上げれていないのだから。実際に支部長をクビになり最前線、未到達階層に送られる者もいる。

「御前会議は1ヶ月後!今、各支部が会議に向けて調査兵団に追い込みをかけてる時期なんだよ!これで新種の魔物の討伐の手柄やその魔物から取れる魔石に加え、ブライアンの精鋭部隊にバレットまで加わったら32階層なんてあっという間に攻略してしまう!それはヴィアインの王族として見過ごせない!ヴィアインの王族の命を狙う者達も気になるけど本来の目的はこっちだから」
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