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第四章 魔法使いと大会
第四十三話 獣族
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その場の雰囲気で獣族が歓迎されていないのが大いに分かってしまった。
女魔法使いの頭…
オレンジだったはずが、真っ白に。
それに、ツノだと勘違いして羊かと思ったが、それは黒耳だった。
ウサギ…かな?
耳は案外短い。
「おい!なんで獣族がこんなとこにいるんだよ!?」
「出てけーーー!!」
わあっとその場が批判の声に満ちた。
女魔法使いは怯えたように縮こまり、ブルブルと震えていた。
その場に恐怖するかのように。
「………う、あああああっ!!」
女魔法使いは泣きながら出て行ってしまった。
「………」
「ふんっ!腰抜けめ…」
何故こんなにも獣族が批判を受けるのだろう。
やるせない気持ちで舞台から降りる。
そこには、予選をすでに終えたヒラルとナナカが立っていた。
ナナカも運良く暗殺部隊と勝負になることは無かったらしい。
二人とも大会出場メンバーだ。
「なあ、なんでこんなに獣族が不評なんだ?」
「………」
二人に聞くと、困ったような態度をとったナナカ。
が、ヒラルは答えた。
「獣族は昔とんでもないことをしでかしたんだよ。…魔族と手を組んで人間を沢山殺した。それはどれほど恐ろしいことか分かるでしょ…?だから、よ」
確かに納得がいく。
だが…
「魔族って話の通じる相手じゃないだろ?そんな簡単に手を組んだって…」
「昔はそうじゃなかったんだよ。魔族は話の通じる奴だった…」
そして、ヒラルの口から獣族の詳細が語られた。
昔、人と獣族は上手く共存していたらしい。
が、人間が引き起こした獣族の少年を誤って馬車でひき殺す、という悲惨な出来事から人間と獣族との間には深い溝が出来た。
やがて戦争が起き、炎に包まれた土地。
獣族が勝利を手にするためにとった行動は…
魔族と手を組む、という手段だった。
魔族、とは魔王の手足となる存在である。
本来ならば手を出すはずがないのだが…もはや、正気ではなかった。
獣族は数人の生け贄を出し、魔族と手を組んで人間との戦争に赴いた。
それは、獣族の圧勝に終わる…はずだった。
獣族は魔族との契約をかわしており、
その契約は己の心身を蝕む。
やがて獣族は幼い者を覗いて、姿を消した。
この戦争は、人間の勝利となったのだ…
「それで、一般市民として暮らす獣族と奴隷の獣族が出来たって訳。まあ、ほぼ奴隷だけどね」
「………そうだったのか」
「歴史だからね」
事実は変えられないよ、と続けるヒラル。
…なんとなくやはり女魔法使いが気になるので探すことにした。
「う…ぐすっ、へうっ」
「…いた」
「!?」
ざっと身構えた女魔法使いだったが、俺の姿を見ると緊張を解いた。
「…なにしに、来たの」
「ちょっと事情を聞きに来たんだよ」
涙を拭く女魔法使い。
目は真っ赤に腫れ上がっていた。
「こんなの、理不尽でしょ…?私は、ただ、お金が欲しかっただけ…妹たちを、助けたかっただけなのに…ぐすっ」
しゃっくりをあげながら話す姿はとても痛々しかった。
獣族は働く場所など与えられないのだろう。
それは、しょうがない…
だが、こんな場所でも自らの存在を否定されるとは身を裂かれる思いだろう。
「…おい」
「やだ!来ないで…あなたがお金くれるって言うの?」
「お金はあげられないけど…働く場所ならやる」
「え?」
うつむいていた顔があがった。
「…俺は商会をやっててな、グローフ商会っていうんだ。働きたかったらそこに来て」
「…う、え?」
戸惑う女魔法使い。
まあ、後ろめたさは無くなった。
これで、大丈夫だろう。
「…あり、がとう…」
別れ際に、そんな言葉を聞いたような気がした。
女魔法使いの頭…
オレンジだったはずが、真っ白に。
それに、ツノだと勘違いして羊かと思ったが、それは黒耳だった。
ウサギ…かな?
耳は案外短い。
「おい!なんで獣族がこんなとこにいるんだよ!?」
「出てけーーー!!」
わあっとその場が批判の声に満ちた。
女魔法使いは怯えたように縮こまり、ブルブルと震えていた。
その場に恐怖するかのように。
「………う、あああああっ!!」
女魔法使いは泣きながら出て行ってしまった。
「………」
「ふんっ!腰抜けめ…」
何故こんなにも獣族が批判を受けるのだろう。
やるせない気持ちで舞台から降りる。
そこには、予選をすでに終えたヒラルとナナカが立っていた。
ナナカも運良く暗殺部隊と勝負になることは無かったらしい。
二人とも大会出場メンバーだ。
「なあ、なんでこんなに獣族が不評なんだ?」
「………」
二人に聞くと、困ったような態度をとったナナカ。
が、ヒラルは答えた。
「獣族は昔とんでもないことをしでかしたんだよ。…魔族と手を組んで人間を沢山殺した。それはどれほど恐ろしいことか分かるでしょ…?だから、よ」
確かに納得がいく。
だが…
「魔族って話の通じる相手じゃないだろ?そんな簡単に手を組んだって…」
「昔はそうじゃなかったんだよ。魔族は話の通じる奴だった…」
そして、ヒラルの口から獣族の詳細が語られた。
昔、人と獣族は上手く共存していたらしい。
が、人間が引き起こした獣族の少年を誤って馬車でひき殺す、という悲惨な出来事から人間と獣族との間には深い溝が出来た。
やがて戦争が起き、炎に包まれた土地。
獣族が勝利を手にするためにとった行動は…
魔族と手を組む、という手段だった。
魔族、とは魔王の手足となる存在である。
本来ならば手を出すはずがないのだが…もはや、正気ではなかった。
獣族は数人の生け贄を出し、魔族と手を組んで人間との戦争に赴いた。
それは、獣族の圧勝に終わる…はずだった。
獣族は魔族との契約をかわしており、
その契約は己の心身を蝕む。
やがて獣族は幼い者を覗いて、姿を消した。
この戦争は、人間の勝利となったのだ…
「それで、一般市民として暮らす獣族と奴隷の獣族が出来たって訳。まあ、ほぼ奴隷だけどね」
「………そうだったのか」
「歴史だからね」
事実は変えられないよ、と続けるヒラル。
…なんとなくやはり女魔法使いが気になるので探すことにした。
「う…ぐすっ、へうっ」
「…いた」
「!?」
ざっと身構えた女魔法使いだったが、俺の姿を見ると緊張を解いた。
「…なにしに、来たの」
「ちょっと事情を聞きに来たんだよ」
涙を拭く女魔法使い。
目は真っ赤に腫れ上がっていた。
「こんなの、理不尽でしょ…?私は、ただ、お金が欲しかっただけ…妹たちを、助けたかっただけなのに…ぐすっ」
しゃっくりをあげながら話す姿はとても痛々しかった。
獣族は働く場所など与えられないのだろう。
それは、しょうがない…
だが、こんな場所でも自らの存在を否定されるとは身を裂かれる思いだろう。
「…おい」
「やだ!来ないで…あなたがお金くれるって言うの?」
「お金はあげられないけど…働く場所ならやる」
「え?」
うつむいていた顔があがった。
「…俺は商会をやっててな、グローフ商会っていうんだ。働きたかったらそこに来て」
「…う、え?」
戸惑う女魔法使い。
まあ、後ろめたさは無くなった。
これで、大丈夫だろう。
「…あり、がとう…」
別れ際に、そんな言葉を聞いたような気がした。
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