上 下
88 / 104
第七章 天使との関わり

第八十話 神々の物語

しおりを挟む
「リリーシュ様。お子がお生まれになりましたか」

映像の中の取得はそっと女神リリーシュに話しかけた。
ちょっと困った顔になりながらも、リリーシュは答える。

「ううん~。私の子供っていうのかしらねぇ」
「…それはどこから来る疑いで?」
「だってぇ。この子は私が生んだんじゃなくてぇ。私が造り出したんだから」
「造り出したーー?」

リリーシュの言った言葉を再度俺はつぶやいた。
その問いかけに、取得は答える。

『リリーシュ様は創造神でしたからね。婚約者など到底出来るものではありませんよ。それで、アリス様を「創造」したんです』
「ってことは…人間みたいに生まれるわけじゃないんだな」
『はい。「『ですが、そのような体を造り出すには己の血肉を分け与えることになりますし、自我という魂は存在いたします。アリス様はリリーシュ様のお子ですよ』」

途中で、今喋ってる取得と映像に映っている取得の声が重なった。
深く頭を下げ、リリーシュの腕の中に収まってスヤスヤと眠っているアリスを見つめる映像の中の取得。

「ああ。愛しい我が子…」

本当に愛しそうにアリスをリリーシュは抱きしめた。
そこから、映像は一度消え、また新たな映像が出てきた。
それは…少しばかり成長したアリスが、ハイハイをしている姿だった。

「あ、う、ばぶ」
「アリスーーーーッ!!こっちよぉーーーっ!!取得っ!!きっちりカメラにこの可愛い可愛いアリス映ってるわよねっ!?」
「はい!人間からちょっくら借りパクしてきたカメラでばっちし映っております!」
「………取得?」
『………いや、あの、そのですね』

その映像を見ながら、取得に話しかけた。借りパクって、おい。
すると。

『いや、すみません』

謝罪が帰ってきた。

「あうぅ」
「キャーーーッ!!可愛いーーーっ!!」

リリーシュに抱きついたアリスを猛烈な勢いで抱きしめるリリーシュ。

「なんか、こう、すっごい溺愛してるね」
『はい。今までは自分の創造した物は従者として扱ってきたため、年をとった姿で生まれてきたんです。そのため、初の我が子はアリス様です』
「へぇ~~~」

ギュム~~~と抱きしめられて少々苦しそうなアリス。
確かに、その美しい姿は似ていた。

再び映像が消し去り、またしても映像が飛び出す。
今度は、3歳ぐらいかな?

「しゅーちゃん!しゅーちゃん!」
「何でしょう。アリス様」
「…おかーたまは?」

首を傾げながらアリスは取得の着ているスーツらしき服の裾を引っ張った。
ニコッと笑い返し、アリスの頭を撫でる取得。

「リリーシュ様は現在会議中であります。他の神々ともご相談して、人間が目に余る行為をしているためにどうやって裁くかを相談中なんですよ」
「にんげん~?」
「ええ。確か…私は今アリス様といますが、それは人間の勇者が今いないからなんです。人間の勇者に仕えるのがこの私、取得の役目ーーー。ですが、人間は神に生け贄を捧げるとか言って同じ人間を崖から突き落としたり、炎で焼いたり、水の中で溺れさせるーーーいわゆる溺死というものをさせるなどしてとても神を困らせています」
「こ、こわいよしゅーちゃん…」
「………大丈夫です。アリス様がお一人で判断出来るようになるまでずっとそばにいますから」
「…やくそく、だよ」
「はい」

そしてまた、映像は移り変わる………
しおりを挟む

処理中です...