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第一章
ヴィジーside
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「ミティス様には、他に愛している人がいるからです」
目覚めて早々、何やら不穏な空気がヴィジーの周囲に立ち込めていた。
嫌な予感がしたので眠っているふりをして、ヴィジーはそっと目線だけをベッドのほうへ向ける。
淡い金髪。
日に反射して、目が痛いくらいに輝いている。
その金髪は、レオーネの前に佇むクリスティーネのものであった。
「愛している人がいる……ですか」
「ええ、そうです。突然の話ですし、お辛いものかとは思いますが」
「いえ、その。他の皆さんもご存知なんですか?」
「……ご想像にお任せしますわ」
嫌な女。
反射的にヴィジーはそう思った。
ヴィジーはクリスティーネが嫌いである。
出会ったばかりだが、こちらを見下すような目が気に食わない。
レオーネのほうを見れば、何と返事をすべきか迷っているようであった。
ここは助け舟を出そう。
「お嬢様、おはようございます」
「ヴィジー……」
「あら、ヴィジーさん。お目覚めですのね」
「おかげさまで」
挨拶代わりにクリスティーネを睨みつけてやれば、いなすような微笑みが返ってくる。
「ヴィジーさんも目を覚ましたことですし、私はこれで失礼しますね。レオーネ様、どうかお大事に」
「あ、はい。お世話になりました」
クリスティーネが保健室を出て行った。
あの女の放つ、甘い匂いが鼻につく。
どいつもこいつも好き勝手言いやがって。
そんな不満を押し込めて、ヴィジーはレオーネの手を握った。
「お嬢様、お体は大丈夫ですか」
「ええ……ゆっくり眠ったら回復できたみたい。ヴィジー、あなたは疲れてないかしら」
「私は元気ですよ。体力には自信があるので」
レオーネを支えるように、そう力強く返してみせる。
こうすることでレオーネは落ち着いていられるのだと、ヴィジーは本能的に理解していた。
「ねえお嬢様。しばらく婚約破棄の件、お休みしましょうか」
「お休みって」
「このことばかり考えては参ってしまいます。お嬢様が心配なんです」
ミティスのことで頭を悩ませれば悩ませるほど、レオーネが弱っていく。
そのため、ヴィジーは中断の意思を下した。
レオーネが体力気力共に万全になることこそ、今優先するべきことだ。
「そう、ね……私、少し焦っていたのかも」
「休憩も大切ですよ。今日のところは帰りましょう」
レオーネに促すまま、ヴィジーはレオーネの手を取った。
白魚の手がやけに繊細に思えて、ヴィジーは力を込めないよう細心の注意を払う。
レオーネは主人の妹だ。
ヴィジーが守らなければなるまい。
◆ ◆ ◆
後日、ヴィジーはミティスに対して、しばらく接触を控えるように要求した。
レオーネの精神が不安定であることを伝えれば、ミティスは黙って頷いてみせた。
クリスティーネは意外なことに特に突っかかってくる様子も見せず、こちらを傍観している。
しかし、ヴィジーには気になることがあった。
「ミティス様、今日の授業終わりは空いていますか?」
「ああ、ちょうど暇だな」
「ではよろしくお願いしますね」
何やら意味深なやり取りを、ミティスとクリスティーネが執り行っている。
レオーネに対する、釘を刺すような物言い。
クリスティーネの目線。
その全てからひしひしと、嫌悪感が漂ってくる。
レオーネが倒れてから一ヶ月間、ヴィジーは大人しくしていた。
事を荒立てず静かにしていれば、レオーネが回復すると思ったからだ。
しかし、レオーネが万全な状態になることはなかった。
もう我慢ならない。
ヴィジーはレオーネを寮に送り届けてから、用事があると言って寮から抜け出した。
目指すはミティスの親友たる男の元。
「ケイ。少し、いいでしょうか」
指名をされたケイは、ヴィジーがいつか来ることをわかっていたように「そうだな」と口にした。
目覚めて早々、何やら不穏な空気がヴィジーの周囲に立ち込めていた。
嫌な予感がしたので眠っているふりをして、ヴィジーはそっと目線だけをベッドのほうへ向ける。
淡い金髪。
日に反射して、目が痛いくらいに輝いている。
その金髪は、レオーネの前に佇むクリスティーネのものであった。
「愛している人がいる……ですか」
「ええ、そうです。突然の話ですし、お辛いものかとは思いますが」
「いえ、その。他の皆さんもご存知なんですか?」
「……ご想像にお任せしますわ」
嫌な女。
反射的にヴィジーはそう思った。
ヴィジーはクリスティーネが嫌いである。
出会ったばかりだが、こちらを見下すような目が気に食わない。
レオーネのほうを見れば、何と返事をすべきか迷っているようであった。
ここは助け舟を出そう。
「お嬢様、おはようございます」
「ヴィジー……」
「あら、ヴィジーさん。お目覚めですのね」
「おかげさまで」
挨拶代わりにクリスティーネを睨みつけてやれば、いなすような微笑みが返ってくる。
「ヴィジーさんも目を覚ましたことですし、私はこれで失礼しますね。レオーネ様、どうかお大事に」
「あ、はい。お世話になりました」
クリスティーネが保健室を出て行った。
あの女の放つ、甘い匂いが鼻につく。
どいつもこいつも好き勝手言いやがって。
そんな不満を押し込めて、ヴィジーはレオーネの手を握った。
「お嬢様、お体は大丈夫ですか」
「ええ……ゆっくり眠ったら回復できたみたい。ヴィジー、あなたは疲れてないかしら」
「私は元気ですよ。体力には自信があるので」
レオーネを支えるように、そう力強く返してみせる。
こうすることでレオーネは落ち着いていられるのだと、ヴィジーは本能的に理解していた。
「ねえお嬢様。しばらく婚約破棄の件、お休みしましょうか」
「お休みって」
「このことばかり考えては参ってしまいます。お嬢様が心配なんです」
ミティスのことで頭を悩ませれば悩ませるほど、レオーネが弱っていく。
そのため、ヴィジーは中断の意思を下した。
レオーネが体力気力共に万全になることこそ、今優先するべきことだ。
「そう、ね……私、少し焦っていたのかも」
「休憩も大切ですよ。今日のところは帰りましょう」
レオーネに促すまま、ヴィジーはレオーネの手を取った。
白魚の手がやけに繊細に思えて、ヴィジーは力を込めないよう細心の注意を払う。
レオーネは主人の妹だ。
ヴィジーが守らなければなるまい。
◆ ◆ ◆
後日、ヴィジーはミティスに対して、しばらく接触を控えるように要求した。
レオーネの精神が不安定であることを伝えれば、ミティスは黙って頷いてみせた。
クリスティーネは意外なことに特に突っかかってくる様子も見せず、こちらを傍観している。
しかし、ヴィジーには気になることがあった。
「ミティス様、今日の授業終わりは空いていますか?」
「ああ、ちょうど暇だな」
「ではよろしくお願いしますね」
何やら意味深なやり取りを、ミティスとクリスティーネが執り行っている。
レオーネに対する、釘を刺すような物言い。
クリスティーネの目線。
その全てからひしひしと、嫌悪感が漂ってくる。
レオーネが倒れてから一ヶ月間、ヴィジーは大人しくしていた。
事を荒立てず静かにしていれば、レオーネが回復すると思ったからだ。
しかし、レオーネが万全な状態になることはなかった。
もう我慢ならない。
ヴィジーはレオーネを寮に送り届けてから、用事があると言って寮から抜け出した。
目指すはミティスの親友たる男の元。
「ケイ。少し、いいでしょうか」
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