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第一章
ミティスside
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少なくとも十回は繰り返したであろうある日。
レオーネの死因が全て偶発的なものであることに、ミティスは気がついた。
クリスティーネを呼び出し、彼女に質問をする。
「レオーネにはもしかして、死ぬ運命があるのではないか? だから、どんなに防ごうとしても、何度もレオーネは死ぬのではないか?」
「……その前に。もうわかっていると思うけど、私は悪魔よ。そして、あなたと交わした契約は、『レオーネ・アルデバランを救うまで、ひたすらやり直しができる』という内容。錯乱していただろうから、覚えていないだろうけどね」
「なぜ契約を私と結んだ。契約に対する代償はなんだ」
悪魔との契約に身を捧げたミティスは、己が無事でいられるとは思ってもいなかった。
くつり、と笑みを浮かべて、クリスティーネは分厚い唇を開く。
「レオーネが助かることで、私も助かるのよ。それだけ」
「……どうしてだ」
「それはこっちの事情。でも、全てに手を貸してちゃ面白くない。あなたなりに苦しんで、答えを見つけてほしい」
人間のもがき苦しむ様子を楽しむなど、やはり彼女は悪魔なのだと再認識した。
ミティスがどれほど嘆き、涙を流そうとも、クリスティーネはこれっぽっちも興味を示さなかったのだから。
「それで、さっきの質問なんだけど……これがわからなきゃ、あなた進めなさそうだものね。いいわ、教えてあげる」
レオーネの死因は、女神の嫉妬心。
そう、クリスティーネは告げた。
「あの子は女神から祝福を受けた。アルデバランの守護神はとても嫉妬深い。今まで女神から寵愛を受けるのは聖女だけだったから、こういったパターンは存在しなかったわね」
「……つまり、私と結ばれるからこそ、レオーネは死ぬと?」
「そういうこと。気づいてないでしょうけど、あなたは精霊に愛されている。精霊術師の適正があるわね。だからこそ、女神はあなたが気に食わないのでしょうけど」
凄まじい衝撃がミティスを襲った。
愛する人が、自分と結ばれるからこそ殺される。
レオーネを愛していたミティスにとって、事実はこれ以上ないほどの打撃を生み出した。
「じゃあっ、私とレオーネが、婚約破棄すれば……」
「あの子は救われるでしょうね」
「っ……」
まるで荒れ狂うような気持ちであった。
体がカッと熱くなったと思えば、芯は凍えるばかりに冷え切っている。
レオーネを助けるには、レオーネを失わなければならない。
それが身を引き裂かれるほど辛くとも、ミティスの答えは決まっていた。
「……レオーネに、婚約破棄を提案してみる」
ミティスの決断になんの意外性もなかったのか、クリスティーネはこちらに目を向けることなく、ふぅんと興味なさげに言うのみであった。
◆ ◆ ◆
結論を言うと、失敗した。
今までレオーネを溺愛してきただけあって、レオーネはミティスが何か企んでいることをすぐさま見抜いた。
「ミティス様、何か隠していますよね?」
「……いや」
「私に話してください。私はミティス様の婚約者なのですから」
レオーネの押しの強さに負け、ミティスは婚約破棄を取り下げた。
それと同時に、女神のこと、この先レオーネが死ぬ運命にあることも打ち明けた。
レオーネは、全てを疑うことなく飲み込んでくれた。
「わかりました……死ぬわけにはいきませんものね。私、女神の祝福を返却します」
「は、そんなことできるのか!?」
「教会で正式な手続きを踏めば、ですが。周囲からは残念がられるでしょうけど……これが私の価値ですし」
「レオーネの価値はレオーネ自身だ! 女神の祝福なんかじゃない」
ミティスがすぐさま反論してみせたので、レオーネは嬉しそうに頷いた。
「待っててください、ミティス様。私必ず、あなたと結ばれてみせますから」
ーーそう頼もしく言い切った矢先、教会に出向く道中でレオーネは死んだ。
今度はミティスが横でついていたのにも関わらず、だ。
一緒に街中を歩いていると、急にレオーネが横で刺されることになった。
血を流し倒れる婚約者に、ミティスは縋ることしかできなかった。
「ミティス、様……」
「レオーネ! 死ぬなっ、気をしっかり持て!」
「……愛してます……他の誰よりも、ミティス様のことを……」
か細い声でそれだけ残して、レオーネは事切れた。
ミティスはまた、繰り返した。
レオーネの死因が全て偶発的なものであることに、ミティスは気がついた。
クリスティーネを呼び出し、彼女に質問をする。
「レオーネにはもしかして、死ぬ運命があるのではないか? だから、どんなに防ごうとしても、何度もレオーネは死ぬのではないか?」
「……その前に。もうわかっていると思うけど、私は悪魔よ。そして、あなたと交わした契約は、『レオーネ・アルデバランを救うまで、ひたすらやり直しができる』という内容。錯乱していただろうから、覚えていないだろうけどね」
「なぜ契約を私と結んだ。契約に対する代償はなんだ」
悪魔との契約に身を捧げたミティスは、己が無事でいられるとは思ってもいなかった。
くつり、と笑みを浮かべて、クリスティーネは分厚い唇を開く。
「レオーネが助かることで、私も助かるのよ。それだけ」
「……どうしてだ」
「それはこっちの事情。でも、全てに手を貸してちゃ面白くない。あなたなりに苦しんで、答えを見つけてほしい」
人間のもがき苦しむ様子を楽しむなど、やはり彼女は悪魔なのだと再認識した。
ミティスがどれほど嘆き、涙を流そうとも、クリスティーネはこれっぽっちも興味を示さなかったのだから。
「それで、さっきの質問なんだけど……これがわからなきゃ、あなた進めなさそうだものね。いいわ、教えてあげる」
レオーネの死因は、女神の嫉妬心。
そう、クリスティーネは告げた。
「あの子は女神から祝福を受けた。アルデバランの守護神はとても嫉妬深い。今まで女神から寵愛を受けるのは聖女だけだったから、こういったパターンは存在しなかったわね」
「……つまり、私と結ばれるからこそ、レオーネは死ぬと?」
「そういうこと。気づいてないでしょうけど、あなたは精霊に愛されている。精霊術師の適正があるわね。だからこそ、女神はあなたが気に食わないのでしょうけど」
凄まじい衝撃がミティスを襲った。
愛する人が、自分と結ばれるからこそ殺される。
レオーネを愛していたミティスにとって、事実はこれ以上ないほどの打撃を生み出した。
「じゃあっ、私とレオーネが、婚約破棄すれば……」
「あの子は救われるでしょうね」
「っ……」
まるで荒れ狂うような気持ちであった。
体がカッと熱くなったと思えば、芯は凍えるばかりに冷え切っている。
レオーネを助けるには、レオーネを失わなければならない。
それが身を引き裂かれるほど辛くとも、ミティスの答えは決まっていた。
「……レオーネに、婚約破棄を提案してみる」
ミティスの決断になんの意外性もなかったのか、クリスティーネはこちらに目を向けることなく、ふぅんと興味なさげに言うのみであった。
◆ ◆ ◆
結論を言うと、失敗した。
今までレオーネを溺愛してきただけあって、レオーネはミティスが何か企んでいることをすぐさま見抜いた。
「ミティス様、何か隠していますよね?」
「……いや」
「私に話してください。私はミティス様の婚約者なのですから」
レオーネの押しの強さに負け、ミティスは婚約破棄を取り下げた。
それと同時に、女神のこと、この先レオーネが死ぬ運命にあることも打ち明けた。
レオーネは、全てを疑うことなく飲み込んでくれた。
「わかりました……死ぬわけにはいきませんものね。私、女神の祝福を返却します」
「は、そんなことできるのか!?」
「教会で正式な手続きを踏めば、ですが。周囲からは残念がられるでしょうけど……これが私の価値ですし」
「レオーネの価値はレオーネ自身だ! 女神の祝福なんかじゃない」
ミティスがすぐさま反論してみせたので、レオーネは嬉しそうに頷いた。
「待っててください、ミティス様。私必ず、あなたと結ばれてみせますから」
ーーそう頼もしく言い切った矢先、教会に出向く道中でレオーネは死んだ。
今度はミティスが横でついていたのにも関わらず、だ。
一緒に街中を歩いていると、急にレオーネが横で刺されることになった。
血を流し倒れる婚約者に、ミティスは縋ることしかできなかった。
「ミティス、様……」
「レオーネ! 死ぬなっ、気をしっかり持て!」
「……愛してます……他の誰よりも、ミティス様のことを……」
か細い声でそれだけ残して、レオーネは事切れた。
ミティスはまた、繰り返した。
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