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第二章
未発達
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クリスティーネから話をされた翌日、今度はレオーネがよく眠れない番だった。
頼りのヴィジーは祖国から帰ってこず、この気持ちを誰に吐露するかといえばーー婚約者であるミティスである。
女王の呪いの件は、真っ先にミティスに相談するつもりだった。
婚約者であるのだし、何よりミティスを信頼していた。
しかし、ミティスの澱んだ瞳を見て、レオーネはそれを止めることにした。
代わりに一言。
「何か、抱え込んでいるのではないですか?」
そう、声をかけた。
ここまで思い詰めた表情のミティスなど、見たことがない。
力になりたいし、支えたいとも思っている。
どうかこちらに頼ってくれることを願い、レオーネはミティスを見上げた。
「君はまた、その言葉を私にかけてくれるのだな」
「……前にも言ったことがありましたっけ」
「ああ。随分と前になるが。ありがとう、心配ない。少し夢見が悪くてな」
ミティスがついた嘘に、レオーネはとっくに気づいていた。
彼は何かで悩んでいるが、それをレオーネに打ち明けるつもりはないらしい。
なら、レオーネが一方的に悩みを相談するわけにはいかない。
レオーネは婚約者との公平性を強く意識していた。
「わかりました。覚悟ができましたら、言ってください」
気づいているぞ、と釘を刺すような発言に、ミティスは柔く微笑むだけだった。
腑に落ちない態度であるが、こちらにも手はある。
ミティスと離れ、レオーネはミティスの親友であるケイに声をかけた。
「ケイ。少しいいかしら」
「やあ、レオーネ様。来ると思ってたよ」
特に驚きもせず、ケイはレオーネを受け入れた。
こういうところから、彼の賢さを痛感させられる。
「ミティス様のことなのだけれど。あの人、あんなに隈を作って、思い悩んでいるところを見るのは初めてで。何か心当たりはない?」
「残念だけど、僕にも何も言ってない。まあレオーネ様が聞いていない時点でお察しだけどね。国の問題でも起きているのかも」
曖昧な回答に、レオーネは「そうですか」とあからさまに落ち込んでみせる。
唯一の手掛かりと言えるケイの当てが外れたので、後は待つことしかできない。
そんな様子のレオーネを見兼ねてか、ケイがこんな提案をした。
「僕が何とか理由を聞き出してみるさ。伊達に親友やってないからね」
「ケイ……できるの?」
「あはは、あんまり自信ないや。最近のあいつ、口数少なくてさ。僕にも何考えてるかわからないんだよ」
笑ってはいるものの、ケイの面差しは不安定であった。
まるで未発達な幼子のような顔をしてこちらを見てくるものだから、逆にレオーネが彼を慰めた。
「大丈夫。彼が話してくれるように促すことは、私にはできないから。あなたの選択は間違ってないわ」
「そうかなぁ。あのレオーネ様大好き人間が、僕なんかに口を開いてくれるものか」
「案外不安症なのね」
「珍しいんだよ? 僕がこんなに後ろ向きなの」
弾まない会話をダラダラと繰り返していると、介入者が現れた。
「レオーネ様はいらっしゃいますか」
レオーネに尋ね人だ。
振り返れば、教室の入り口にリオンが立っていた。
頼りのヴィジーは祖国から帰ってこず、この気持ちを誰に吐露するかといえばーー婚約者であるミティスである。
女王の呪いの件は、真っ先にミティスに相談するつもりだった。
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しかし、ミティスの澱んだ瞳を見て、レオーネはそれを止めることにした。
代わりに一言。
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そう、声をかけた。
ここまで思い詰めた表情のミティスなど、見たことがない。
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なら、レオーネが一方的に悩みを相談するわけにはいかない。
レオーネは婚約者との公平性を強く意識していた。
「わかりました。覚悟ができましたら、言ってください」
気づいているぞ、と釘を刺すような発言に、ミティスは柔く微笑むだけだった。
腑に落ちない態度であるが、こちらにも手はある。
ミティスと離れ、レオーネはミティスの親友であるケイに声をかけた。
「ケイ。少しいいかしら」
「やあ、レオーネ様。来ると思ってたよ」
特に驚きもせず、ケイはレオーネを受け入れた。
こういうところから、彼の賢さを痛感させられる。
「ミティス様のことなのだけれど。あの人、あんなに隈を作って、思い悩んでいるところを見るのは初めてで。何か心当たりはない?」
「残念だけど、僕にも何も言ってない。まあレオーネ様が聞いていない時点でお察しだけどね。国の問題でも起きているのかも」
曖昧な回答に、レオーネは「そうですか」とあからさまに落ち込んでみせる。
唯一の手掛かりと言えるケイの当てが外れたので、後は待つことしかできない。
そんな様子のレオーネを見兼ねてか、ケイがこんな提案をした。
「僕が何とか理由を聞き出してみるさ。伊達に親友やってないからね」
「ケイ……できるの?」
「あはは、あんまり自信ないや。最近のあいつ、口数少なくてさ。僕にも何考えてるかわからないんだよ」
笑ってはいるものの、ケイの面差しは不安定であった。
まるで未発達な幼子のような顔をしてこちらを見てくるものだから、逆にレオーネが彼を慰めた。
「大丈夫。彼が話してくれるように促すことは、私にはできないから。あなたの選択は間違ってないわ」
「そうかなぁ。あのレオーネ様大好き人間が、僕なんかに口を開いてくれるものか」
「案外不安症なのね」
「珍しいんだよ? 僕がこんなに後ろ向きなの」
弾まない会話をダラダラと繰り返していると、介入者が現れた。
「レオーネ様はいらっしゃいますか」
レオーネに尋ね人だ。
振り返れば、教室の入り口にリオンが立っていた。
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・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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