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いざ、アストロへ。
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ロールの熱が下がった頃。
突然エリクル様が全員を集めたかと思えば、パンパンと手を叩きました。
「はいはいみんな。暗い顔しない。明るくやってこう」
「いきなりどうしました?」
思わず口から出た言葉に、エリクル様は愉快げに笑いました。
「別になにも。ただ、ちょっと雰囲気が最悪だったじゃないか。僕達、楽しむかつロールちゃんの記憶を取り戻すってことで旅してたはずだよね?」
「俺はラティアンカをーー」
「はいそこ。口を挟むな」
旦那様が意見しかけたところを、容赦なくエリクル様は遮りました。
「む」と唸ったものの、おとなしく口を閉じる旦那様。
その反応に満足したのか、続けます。
「こういう雰囲気、僕、嫌いなんだよね」
「私もですけど」
「だろ? ロールちゃんは話がわかるね」
「だって半ば、私のせいでこんなことになってるようなものですし」
「そんなことはないさ。ロールちゃんがどんな子だって、僕はロールちゃんのことが好きだからね」
好き。歯が浮くようなセリフに過剰に反応してみせたロールが、恥ずかしがるようにうつむいてみせます。
旦那様はドン引きしてエリクル様を見ました。
「お前……それ、やめろ」
「え?」
「俺はもう、被害者を見たくない」
被害者というと、エリクル様が今までたぶらか……いえ。惚れられてきた女の人達のことを指しているのでしょう。
本人が自覚しているので、なおさらタチが悪いです。
「私もやめたほうがいいと思います」
「ラティアンカ嬢までかい? でも僕、ラティアンカ嬢よりはモテないよ。それにアルだって」
「言い出すとキリがないですよ!」
ロールは叫ぶと、ぐしゃぐしゃと、自身の白の髪をかき混ぜました。
「あーっ、元気なくてすみません! そうですね! 私は私ですもん! アストロ、行きましょう!」
「別に僕は行かなくていいと思ってるんだけど」
「いいえ! 行きます!」
ロールの調子が戻った気がします。
フンス、と鼻息を荒くして、ロールは私のほうへ向きました。
「ラティ様、ここまで本当にありがとうございます。凄く感謝してます。アストロまで、ご一緒してくれますか?」
「……ええ。もちろんよ」
迷いなくその手を取れば、照れ臭そうにロールは「へへ」と笑いました。
可愛いです。
ロールが自分でぐしゃぐしゃにした髪を撫でつけるようにすれば、旦那様は私の背後に立ちました。
「ラティアンカ」
「嫉妬は醜いよ、アル」
「俺にも」
「はいはい」
右手でロール、左手で旦那様を撫でていれば、周りの人達が一気にザワつき始めます。
そもそも話し合いをするのが宿の飲食スペースって、どうなんでしょう。
これ以上注目されるのも嫌なので手を離せば、二人は残念そうに私を見ました。
「ラティ様……」
「ラティアンカ……」
「後で、やってあげます」
パアァ、と二人の空気が明るくなりました。
この二人、似てないと思っていましたが、機嫌がわかりやすいのは似てますね。
最も旦那様の考えは機嫌と違ってわかりづらいのですが。
「もう風魔の調整終わってるだろうし、どうする? もう行くかい?」
「はい!」
「じゃあ、行こうか」
本当に全て、わかる時がやってきました。
私達はアストロへ行くため、宿の外へ足を踏み出しました。
突然エリクル様が全員を集めたかと思えば、パンパンと手を叩きました。
「はいはいみんな。暗い顔しない。明るくやってこう」
「いきなりどうしました?」
思わず口から出た言葉に、エリクル様は愉快げに笑いました。
「別になにも。ただ、ちょっと雰囲気が最悪だったじゃないか。僕達、楽しむかつロールちゃんの記憶を取り戻すってことで旅してたはずだよね?」
「俺はラティアンカをーー」
「はいそこ。口を挟むな」
旦那様が意見しかけたところを、容赦なくエリクル様は遮りました。
「む」と唸ったものの、おとなしく口を閉じる旦那様。
その反応に満足したのか、続けます。
「こういう雰囲気、僕、嫌いなんだよね」
「私もですけど」
「だろ? ロールちゃんは話がわかるね」
「だって半ば、私のせいでこんなことになってるようなものですし」
「そんなことはないさ。ロールちゃんがどんな子だって、僕はロールちゃんのことが好きだからね」
好き。歯が浮くようなセリフに過剰に反応してみせたロールが、恥ずかしがるようにうつむいてみせます。
旦那様はドン引きしてエリクル様を見ました。
「お前……それ、やめろ」
「え?」
「俺はもう、被害者を見たくない」
被害者というと、エリクル様が今までたぶらか……いえ。惚れられてきた女の人達のことを指しているのでしょう。
本人が自覚しているので、なおさらタチが悪いです。
「私もやめたほうがいいと思います」
「ラティアンカ嬢までかい? でも僕、ラティアンカ嬢よりはモテないよ。それにアルだって」
「言い出すとキリがないですよ!」
ロールは叫ぶと、ぐしゃぐしゃと、自身の白の髪をかき混ぜました。
「あーっ、元気なくてすみません! そうですね! 私は私ですもん! アストロ、行きましょう!」
「別に僕は行かなくていいと思ってるんだけど」
「いいえ! 行きます!」
ロールの調子が戻った気がします。
フンス、と鼻息を荒くして、ロールは私のほうへ向きました。
「ラティ様、ここまで本当にありがとうございます。凄く感謝してます。アストロまで、ご一緒してくれますか?」
「……ええ。もちろんよ」
迷いなくその手を取れば、照れ臭そうにロールは「へへ」と笑いました。
可愛いです。
ロールが自分でぐしゃぐしゃにした髪を撫でつけるようにすれば、旦那様は私の背後に立ちました。
「ラティアンカ」
「嫉妬は醜いよ、アル」
「俺にも」
「はいはい」
右手でロール、左手で旦那様を撫でていれば、周りの人達が一気にザワつき始めます。
そもそも話し合いをするのが宿の飲食スペースって、どうなんでしょう。
これ以上注目されるのも嫌なので手を離せば、二人は残念そうに私を見ました。
「ラティ様……」
「ラティアンカ……」
「後で、やってあげます」
パアァ、と二人の空気が明るくなりました。
この二人、似てないと思っていましたが、機嫌がわかりやすいのは似てますね。
最も旦那様の考えは機嫌と違ってわかりづらいのですが。
「もう風魔の調整終わってるだろうし、どうする? もう行くかい?」
「はい!」
「じゃあ、行こうか」
本当に全て、わかる時がやってきました。
私達はアストロへ行くため、宿の外へ足を踏み出しました。
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