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アルスフォード編
第八十五話 言えない
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「ど、どうして体を捨てたんですか……!? あれはお母様の贈り物です!」
動揺を隠し切れず、震えた声でナオが尋ねる。
その答えは案外シンプルであった。
「劣化に耐え切れなかったの」
「劣化……」
「私の元の体は劣化してた。核の力が強すぎて、耐え切れなかった」
納得の理由だ。
実際、ナオの最初の体は開発者であるガーベラと生体リンクしており、ガーベラが床に臥すと共に動かなくなった。
文句も言えぬままナオが唇を噛むと、アレクが横から問いかける。
「その体、どこから手に入れたんですか? 天族の体って、死んだら魔力の結晶になるんじゃ」
「うん。その通りだよ。この体は、精霊王が保存してた特別なやつだから。本当なら、とっくのとっくに結晶化してるんだよ」
自らの体に、労わるように触れる。
ガブリエルはこの体が、自分のものではないことを深く理解していた。
「じゃあ、じゃあ……」
「おっとここまで」
いくつもの質問を投げかけようとしたアレクの口を、ガブリエルが塞ぐ。
「君はティファンのことを知りたいと言う。なのに、ティファンのことは認めてくれない。それじゃあの子が可哀想だ」
「でも……! ティファンが『僕のことが知りたいなら、精霊王を見つけろ』って言ったんです! 僕は知らなくちゃならない」
「ティファンのことを兄だと認められない君に、話すことはできないよ」
強い言葉に言い切られ、アレクは口籠る。
しかし、この意見を曲げるつもりは毛頭なかった。
「……わかりました。今日はありがとうございます」
「アレク、いいのか」
ガディが確かめるように声をかけてくる。
それにエルルも続いた。
「アレク、私達のことは気にしなくていいのよ」
「兄様、姉様」
「知りたいなら、認めればいい話だ」
「それでも、僕は……嫌だ。あの人のこと、どうしても認められない」
最早意地のようなものであった。
アリスにあそこまでの形相をさせたティファンを、クリア達を封じたティファンを、どうしても許せそうになかった。
アレクの出した結論に、ガブリエルは苦笑いした。
「うん。普通そうなるよ。ここで認めるって言うわけがない」
「………」
「でも特別サービス。これだけは教えてあげる。エルル、君が持ってる探知機あるでしょう」
探知機の存在を言い当てられたが、エルルは特段驚いた様子も見せない。
「こういう事情って、なんですぐバレるのかしら」
「私は未来が見れるからね。君達がここに来るのも知っていた」
「ティファンにも色々バレてるかしら」
「あの子も工夫してるんだよ」
ガブリエルが、探知機に触れる。
ヴォンッという音と共に、空中に地図が表示された。
そこにはガブリエルと、ティファンの反応がある。
「お察しの通り、ここにはティファン達の拠点がある。このまま行っても入れないけどね」
「どうやったら入れるか、教えてもらえますか」
「……四大精霊のリーダーの力を借りるんだ」
ガブリエルが提示したのは、四大精霊の名前だった。
「サラマンダー、ウンディーネ、シルフィード、ノーム。この四人の力を借りれば、扉を開けられるはずだよ。なんせ四大精霊のリーダーは、唯一天族を戒める力を持ってるからね。アレク、君も覚えがあるだろう」
「……あ」
アレクはかつて、ウンディーネに記憶を消されたことがある。
精霊は天族を害すことができない。
それなのにウンディーネがアレクにそういったことをできた理由は、ひとえにそこに終結しているのだろう。
「ごめんね、これ以上は言えない。君がティファンのことを考え直してくれない限り」
「……わかりました。本当に、今日はありがとうございました」
一礼をして、アレク達が去っていく。
一人残されたガブリエルは、大きく息を吐いてこめかみを押さえる。
「ティファン……どうしよう……」
私別に、あなたと敵対したいわけじゃないのよ。
そう言いたくとも、とうの本人は姿を見せない。
『こんなやり方、間違ってるよ……! 私はここで抜けさせてもらう』
そう言い放ったのは自分だというのに、ひとえに彼が恋しかった。
「君の弟、君にそっくりだもの」
動揺を隠し切れず、震えた声でナオが尋ねる。
その答えは案外シンプルであった。
「劣化に耐え切れなかったの」
「劣化……」
「私の元の体は劣化してた。核の力が強すぎて、耐え切れなかった」
納得の理由だ。
実際、ナオの最初の体は開発者であるガーベラと生体リンクしており、ガーベラが床に臥すと共に動かなくなった。
文句も言えぬままナオが唇を噛むと、アレクが横から問いかける。
「その体、どこから手に入れたんですか? 天族の体って、死んだら魔力の結晶になるんじゃ」
「うん。その通りだよ。この体は、精霊王が保存してた特別なやつだから。本当なら、とっくのとっくに結晶化してるんだよ」
自らの体に、労わるように触れる。
ガブリエルはこの体が、自分のものではないことを深く理解していた。
「じゃあ、じゃあ……」
「おっとここまで」
いくつもの質問を投げかけようとしたアレクの口を、ガブリエルが塞ぐ。
「君はティファンのことを知りたいと言う。なのに、ティファンのことは認めてくれない。それじゃあの子が可哀想だ」
「でも……! ティファンが『僕のことが知りたいなら、精霊王を見つけろ』って言ったんです! 僕は知らなくちゃならない」
「ティファンのことを兄だと認められない君に、話すことはできないよ」
強い言葉に言い切られ、アレクは口籠る。
しかし、この意見を曲げるつもりは毛頭なかった。
「……わかりました。今日はありがとうございます」
「アレク、いいのか」
ガディが確かめるように声をかけてくる。
それにエルルも続いた。
「アレク、私達のことは気にしなくていいのよ」
「兄様、姉様」
「知りたいなら、認めればいい話だ」
「それでも、僕は……嫌だ。あの人のこと、どうしても認められない」
最早意地のようなものであった。
アリスにあそこまでの形相をさせたティファンを、クリア達を封じたティファンを、どうしても許せそうになかった。
アレクの出した結論に、ガブリエルは苦笑いした。
「うん。普通そうなるよ。ここで認めるって言うわけがない」
「………」
「でも特別サービス。これだけは教えてあげる。エルル、君が持ってる探知機あるでしょう」
探知機の存在を言い当てられたが、エルルは特段驚いた様子も見せない。
「こういう事情って、なんですぐバレるのかしら」
「私は未来が見れるからね。君達がここに来るのも知っていた」
「ティファンにも色々バレてるかしら」
「あの子も工夫してるんだよ」
ガブリエルが、探知機に触れる。
ヴォンッという音と共に、空中に地図が表示された。
そこにはガブリエルと、ティファンの反応がある。
「お察しの通り、ここにはティファン達の拠点がある。このまま行っても入れないけどね」
「どうやったら入れるか、教えてもらえますか」
「……四大精霊のリーダーの力を借りるんだ」
ガブリエルが提示したのは、四大精霊の名前だった。
「サラマンダー、ウンディーネ、シルフィード、ノーム。この四人の力を借りれば、扉を開けられるはずだよ。なんせ四大精霊のリーダーは、唯一天族を戒める力を持ってるからね。アレク、君も覚えがあるだろう」
「……あ」
アレクはかつて、ウンディーネに記憶を消されたことがある。
精霊は天族を害すことができない。
それなのにウンディーネがアレクにそういったことをできた理由は、ひとえにそこに終結しているのだろう。
「ごめんね、これ以上は言えない。君がティファンのことを考え直してくれない限り」
「……わかりました。本当に、今日はありがとうございました」
一礼をして、アレク達が去っていく。
一人残されたガブリエルは、大きく息を吐いてこめかみを押さえる。
「ティファン……どうしよう……」
私別に、あなたと敵対したいわけじゃないのよ。
そう言いたくとも、とうの本人は姿を見せない。
『こんなやり方、間違ってるよ……! 私はここで抜けさせてもらう』
そう言い放ったのは自分だというのに、ひとえに彼が恋しかった。
「君の弟、君にそっくりだもの」
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