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「嫁の貰い手に困った時って具体的にいつなんだろう

・・・」
 昨日の逸人さんの言葉でのぼせ上って舞い上がっていたが、しばらくするとふと疑問に思った。
逸人さんとのやりとりを思い出しながら考える。
(私はもう結婚できるけど今の逸人さんにその気がないんだよね。子供を産むなら30代くらいかな。40代だと遅いし。私が今19歳で40才まであと21年・・・・・・・。それまでに逸人さんが誰かと結婚しちゃう可能性だってあるし、それにもし結婚したら私は捨てられるんだろうし・・・)
「あぁあああ、不安だよぉおおお!!」
私は思わず叫ぶ。
(誰かに相談したい・・・・・したいけど)
親はいないも同然だし、だからと言って相談できる友達もいない。
「あぁ、私には頼れる人が誰もいないんだ・・・」
 まさかこんな話本に聞くわけにもいかない。あんまりしつこく聞いてやっぱりやめたって言ってなかったことにされても困る。
私はベッドに倒れ込む。
「うぅ、ぐすん、ぐすん」
涙が止まらない。もしかして私をあしらうのにわざと期待させるようなこと言ったとか・・・?
 ありうる・・・!!
「うぅ、うわーーーーーーーん」
私はパソコンのリモートの画面を閉じる。デスクトップには逸人さんの今までのベストショットが飾ってある。安らかな寝顔だ。
(そうか、友達じゃなくても相談に乗ってくれる人はいるはずだ。例えば匿名掲示板とか・・・・)
私はスマホで検索をかける。すると『恋愛板』というのが出てきた。
(ここだ!!)
私はクリックする。
【恋愛板】
1.名前:彼氏いない歴774年目@転載は禁止

15:20:15.22
ID:gYcv2eVp0 ここは恋バナや失恋した人の愚痴を聞く場所です。
荒らしはスルー、特定プレイヤーへの粘着、過度な誹謗中傷は通報対象となります。マナーを守って楽しくおしゃべりしましょう!!
2.名前:彼氏いない歴774年目@転載は禁止

15:20:15.22
ID:gYcv2eVp0 ここは恋バナや失恋した人の愚痴を聞く場所です。
荒らしはスルー、特定プレイヤーへの粘着、過度な誹謗中傷は通報対象となります。マナーを守って楽しくおしゃべりしましょう!!

私はルールを読み頭に入れたうえで聞いてみることにした。まさか相手はやくざだとかは言えない。年の差があること逸人さんに言われたこと一言一句間違いがないように慎重に打ち込む。
(うっ、結構辛らつだな)
『それは断るときの常套句だわ、アキラメロ』
『女として見られてねえよ。大切にされてるとか勘違いも甚だしい』
『たまにこんな勘違い女が相談に来るよな』
(やっぱりそうなのかな。女として見られてないって。幼児相手のようにごまかされてるってことだよね。)
はあ、ため息をついた。
(でも落ち込んでいる場合じゃない!!女として見られていないなら意識させればいいんだ。・・・・でもどうやって)
私は文章を考えて打ち込む。
『では男の人がどんな時女を意識するのか教えてください。』
その返答は結構早く帰ってきた。
『そんなのきかなくても分かるでしょ』
『裸で襲ってやれば一発だろ』
『でも主さん、処女じゃん。無理ゲーwwwww』
など返信が来る。
(うっ、確かに経験がないんじゃい逸人さんを襲うことなんてできない。でもベットには誘ってるんだよ。毎回一緒に寝るだけで何もないけど。)
やっぱり経験のない私に女を意識させる方法はないのかな。裸で抱き着いてみようかとも考えたが、驚かれて怒られてすぐに服を着せられるのは目に見えていた。
(セックスしようって言ってみるとか)
『でもあんまり直接的だと逆に萎える』
こんな書き込みを見つけて打ちひしがれる。
しばらくやり取りしているとこんなのを見つけた。
『俺は○○住みだけど主さんはどこ住みなの?』
(こうゆうのってあんまり言わないほうがいいんだよね。でもせっかく相談に乗ってもらえるんだし)
と特定できない範囲でこたえた。
『なんだ近いじゃん、もしよかったら実際に教えてあげようか』
(え?本当?)
この人は私にアドバイスしてくれるらしい。こんないい話はない。このままだとどうせ初老になるまで逸人さんは手を出してくれない。だったらさっさとジョジョなんて捨てて逸人さんが思わず手を出したくなるような女に生まれ変わって誘惑すればいいんだ。
『いいんでしょうか。ぜひお願いします!!』
私は嬉しくなって即レスしてしまった。

言われるがまま、メールアドレスを交換する。と言ってもいわゆる捨てアド。
(明日の10時、駅前広場・・・・)
私は迷わず了承の返事をした。
**************
珍しいこともあるものだ。仕事帰りに逸人さんが家に尋ねてきた。弁当を作った日は私の部屋の前まで来てくれるが、ドアノブに弁当箱をひっかけて帰ってしまうのに。
「その、明日なんだが、予定が空いたから久しぶりに出かけないか?」
「へぇ!?」
(デートのお誘いだ!!!!)
私は嬉しさのあまり変な声を出してしまった。
「そ、そうだね、うん、行こう!!」
私は笑顔を作って答える。
逸人さんも安心したように笑う。
「じゃあ「あぁーーーーーーー」なんだよ、でケえ声出しやがって」
(明日10時から、約束があるんだった。女にしてもらうんだ。でもせっかく珍しくデートに誘ってくれたのに)
私は心の中で血の涙流した。
「ご、ごめんなさいその日、用事があって」
「なんだ、大学の登校日だったのか、なら車で送ってって「ち、違うの、と、友達と約束があるから」・・・・・友達?」
怪訝そうな目で私を見る。
「お前に友達なんていたっけ」
「い、いるもん。ついこの間できた友達が」
(そんな危機片しなくたっていいじゃない。どうせ私には友達なんていませんよーだ。)
「フーン、気を付けて行けよ」

(なんとかごまかせた・・・?ごめんなさい逸人さん、でも私どうしてもあなたに振り向いてもらいたいの。しっかり大人のテクニック身に着けて戻ってくるからね)
 結局それ以降その話題が出ることもなくその日は終わった。
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