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最初の魔法⑤
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ーー城に戻る頃にはすっかり日は沈んでしまっていた。魔力で、火傷した彼を治療をしたためだった。
「後は私の仕事よ。おつかれさま」
彼女はすっかり、いつもの調子に戻っていた。
「あぁ、おつかれ。そんじゃ、また明日」
だが、手を振って帰ろうとした彼を、ミーナが呼び止める。
「ジャック。············ありがと」
「······あぁ。気にすんな」
そう言うと彼は、後ろを向いたまま手を振り、街の中へと消えていった。
ーー翌日。
「やっと終わったぁ······」
ミーナは目の下にクマを作って、机へと突っ伏していた。
彼女は、キメリア火山から戻ってからずっと籠もりっきりで研究、そして、その研究報告書を書いていたのだった。
机の上は、束になった紙で彼女の身体が隠れそうなほどだ。
「おう、おつかれー」
そこに、ちょうど昼食を食べ終え、帰ってきたジャックが部屋へ入って来る。
ミーナは体を起こし、やる気なさそうに手を振った。
「終わったのか?」
「ええ、ちょうど」
「ふーん」と言ってジャックは、置かれた紙の一つに目を向ける。だが、内容を理解出来なかったのか、すぐに読むのをやめて近くの椅子へと座る。
「なんかよく分かんないけど、これが魔法に繋がるのか?」
ジャックは怪訝な顔で彼女に尋ねる。
すると思い直したようにミーナは、あのツンと見下したような顔をしてジャックを見る。
「そうだ、折角だから今回の研究成果、あなた試してみなさいよ」
「おっ、いいのか?」
予想外の返事に、彼の声が弾む。
ミーナは立ち上がると、近くに置かれた、厳重に鍵の掛けられた棚の一つから、小さな薬包紙を一包取り出す。
そしてまた鍵を掛けると、手にしたそれを彼に渡す。
「薬?」
彼が中を開くと、入っていたのは深紅の粉だった。
「そう。クレイルの葉と土蛇の肉、ワタハチミツに······そしてドラゴンの血、それらを煮込んで結晶にした調合薬よ。
「うーん······なんかよく分かんないけど、飲んで大丈夫なのか?」
「えぇ。私も少量試したから大丈夫よ」
しかし、彼はまだ不安そうに、その薬包紙を見つめていた。
「貴重な調合薬だから大事にしてよ。私の試算からして······恐らく、効果は三十分ほど。そうでなくとも、あなたの魔力が尽きたら薬の効果も切れるわ。粉はそのまま飲んでもいいし、水で飲んでも大丈夫よ」
「ふーん」
説明を聞いた彼は立ち上がると、コップを持って、甕(かめ)の水を掬いに行く。
そして、水を持って彼女の前へ戻ってくる。
「飲むと少し身体が熱を持つけど大丈夫よ。気にしないで」
モンスターの一部を身体に入れる覚悟を決めたジャックは、上を向き、サラサラと粉を口に含む。
それを持ってきた水で流し込む。
二、三度、ゴクっ、ゴクっ、と喉を超える音がする。
「んはぁ。······で、飲んだはいいけど、どうすんの?」
特に熱以外変化のない自分の身体に、ジャックは戸惑う。
そんな彼に、ミーナが使い方を教授する。
「いい? 最初は、手の平に小さな炎をイメージをして。そして、イメージ出来たらゆっくりとそこに魔力を送り込むの」
「手の平にイメージ? ······わかった」
ジャックは、胸の辺りまで右腕を上げると、手の平を上に向け、目を瞑り、意識を集中した。
“炎をイメージ······そして魔力を······“
すると、程なくして「ポッ」という音が聞こえ、ジャックの手の平に小さく炎が現れた。
その音を聞いたジャックは、驚いたように目を開けた。
「うそだろ······すげぇ! すげぇよ!! 本当に炎が使えた! しかもこれ、熱くないのか!?」
「えぇ。あなたの魔力だもの。私は熱く感じるけど、あなた自身には馴染むのよ」
それを聞いたジャックは、子供のようにはしゃいで炎を放つ。
ーーボッ! ボウッ! ボウンッ!!
次第に大きくなる炎を見て、ミーナは心配そうに言う。
「ちょっと、あんま調子に乗らないでよ。その辺、大事なもんが散らばってるんだか······」
だが、彼女が言い終える前に、ボウンッ!! という大きな音が響き、それと共に現れた炎が、机上の紙を燃やしていった。
それはあっという間に加速して、彼女の、あの徹夜の努力を炭へと変えていく。
それを見たジャックは、急いで側にある甕の水を机にかける。
幸い、それ以上燃え広がる事はなかったが、流石のジャックも冷静になり、魔法を放つのをやめる。
「······すまん。ワザとじゃないんだ······ハハ······」
ジャックはなんとか言い訳をして、その場を落ち着かせようとする。
「炎がこんな強くなると思ってなかったしさ······それに事前に言わないのが悪いっていうのか············そうだ! ほら、俺、昨日命懸けで頑張ったからさ! な? その分でチャラって······ことで······」
彼の横でプルプルと震えるミーナは、握り拳にその怨みの全てを込めていた。
「もう······二度と来んな!!」
――つづく。
「後は私の仕事よ。おつかれさま」
彼女はすっかり、いつもの調子に戻っていた。
「あぁ、おつかれ。そんじゃ、また明日」
だが、手を振って帰ろうとした彼を、ミーナが呼び止める。
「ジャック。············ありがと」
「······あぁ。気にすんな」
そう言うと彼は、後ろを向いたまま手を振り、街の中へと消えていった。
ーー翌日。
「やっと終わったぁ······」
ミーナは目の下にクマを作って、机へと突っ伏していた。
彼女は、キメリア火山から戻ってからずっと籠もりっきりで研究、そして、その研究報告書を書いていたのだった。
机の上は、束になった紙で彼女の身体が隠れそうなほどだ。
「おう、おつかれー」
そこに、ちょうど昼食を食べ終え、帰ってきたジャックが部屋へ入って来る。
ミーナは体を起こし、やる気なさそうに手を振った。
「終わったのか?」
「ええ、ちょうど」
「ふーん」と言ってジャックは、置かれた紙の一つに目を向ける。だが、内容を理解出来なかったのか、すぐに読むのをやめて近くの椅子へと座る。
「なんかよく分かんないけど、これが魔法に繋がるのか?」
ジャックは怪訝な顔で彼女に尋ねる。
すると思い直したようにミーナは、あのツンと見下したような顔をしてジャックを見る。
「そうだ、折角だから今回の研究成果、あなた試してみなさいよ」
「おっ、いいのか?」
予想外の返事に、彼の声が弾む。
ミーナは立ち上がると、近くに置かれた、厳重に鍵の掛けられた棚の一つから、小さな薬包紙を一包取り出す。
そしてまた鍵を掛けると、手にしたそれを彼に渡す。
「薬?」
彼が中を開くと、入っていたのは深紅の粉だった。
「そう。クレイルの葉と土蛇の肉、ワタハチミツに······そしてドラゴンの血、それらを煮込んで結晶にした調合薬よ。
「うーん······なんかよく分かんないけど、飲んで大丈夫なのか?」
「えぇ。私も少量試したから大丈夫よ」
しかし、彼はまだ不安そうに、その薬包紙を見つめていた。
「貴重な調合薬だから大事にしてよ。私の試算からして······恐らく、効果は三十分ほど。そうでなくとも、あなたの魔力が尽きたら薬の効果も切れるわ。粉はそのまま飲んでもいいし、水で飲んでも大丈夫よ」
「ふーん」
説明を聞いた彼は立ち上がると、コップを持って、甕(かめ)の水を掬いに行く。
そして、水を持って彼女の前へ戻ってくる。
「飲むと少し身体が熱を持つけど大丈夫よ。気にしないで」
モンスターの一部を身体に入れる覚悟を決めたジャックは、上を向き、サラサラと粉を口に含む。
それを持ってきた水で流し込む。
二、三度、ゴクっ、ゴクっ、と喉を超える音がする。
「んはぁ。······で、飲んだはいいけど、どうすんの?」
特に熱以外変化のない自分の身体に、ジャックは戸惑う。
そんな彼に、ミーナが使い方を教授する。
「いい? 最初は、手の平に小さな炎をイメージをして。そして、イメージ出来たらゆっくりとそこに魔力を送り込むの」
「手の平にイメージ? ······わかった」
ジャックは、胸の辺りまで右腕を上げると、手の平を上に向け、目を瞑り、意識を集中した。
“炎をイメージ······そして魔力を······“
すると、程なくして「ポッ」という音が聞こえ、ジャックの手の平に小さく炎が現れた。
その音を聞いたジャックは、驚いたように目を開けた。
「うそだろ······すげぇ! すげぇよ!! 本当に炎が使えた! しかもこれ、熱くないのか!?」
「えぇ。あなたの魔力だもの。私は熱く感じるけど、あなた自身には馴染むのよ」
それを聞いたジャックは、子供のようにはしゃいで炎を放つ。
ーーボッ! ボウッ! ボウンッ!!
次第に大きくなる炎を見て、ミーナは心配そうに言う。
「ちょっと、あんま調子に乗らないでよ。その辺、大事なもんが散らばってるんだか······」
だが、彼女が言い終える前に、ボウンッ!! という大きな音が響き、それと共に現れた炎が、机上の紙を燃やしていった。
それはあっという間に加速して、彼女の、あの徹夜の努力を炭へと変えていく。
それを見たジャックは、急いで側にある甕の水を机にかける。
幸い、それ以上燃え広がる事はなかったが、流石のジャックも冷静になり、魔法を放つのをやめる。
「······すまん。ワザとじゃないんだ······ハハ······」
ジャックはなんとか言い訳をして、その場を落ち着かせようとする。
「炎がこんな強くなると思ってなかったしさ······それに事前に言わないのが悪いっていうのか············そうだ! ほら、俺、昨日命懸けで頑張ったからさ! な? その分でチャラって······ことで······」
彼の横でプルプルと震えるミーナは、握り拳にその怨みの全てを込めていた。
「もう······二度と来んな!!」
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