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ザマァレボリューション
18 エル視点
しおりを挟む「エルは貴族らしくない」
それは、私が暫く落ち込んでいるのを見たヴォルフの言った一言だ。当たり前だ。私は、今、貴族ではない。考えが顔に出ていたんだろう。ヴォルフは、言葉を付け加えた。
「元貴族だとしても、元の思考はなかなか変わらない。だが、エルは浮浪者みたいな奴らに同情する。まるで貴族じゃなかったみたいだ」
そう言われると確かにそうだ。貴族社会は差別と偏見に満ちている。私は、それに染まりきった人と生活してきたはずなのに、ずっと違和感を持って、反発を抱いて生きてきた。窮屈だった過去だが、やはり、私が混血だからだろうか。
例え、どんな理由だったとしても、貴族らしい人間になんてなりたくはない。だから、これでいい。悩んでいる私が一番正しい気がする。
まずは目の前のことに集中すべきなのだ。
目的のために強くなる。その為には、まずもっとヴォルフに認めてもらい、戦闘に参加しなければならない。
それから、三年ほどして私たちの関係は、多分凄く変わった。それまでの時々私に見せた甘さがヴォルフの義務的な、心のこもっていない優しさだと気付くくらいにはヴォルフのことを知って。そして、その義務から外れた優しさを見せられると、心から堪らないって感じで笑われると、胸がどくどくと煩い。その時に、足先から沸き立つ感情は、おそらく喜び。
付与魔法を強めるためのキス。最初は、本当に義務的な、でも強くなる為には仕方のない儀式みたいなものだと思っていた。強くなるためには手段を選ばない、ヴォルフがそう言うから、キスは強くなるための手段と言い聞かせて我慢する。秀麗な顔が近づくと、もう恥ずかしくて堪らなくて、目を閉じる。一回、その儀式を始めた初期の時、ヴォルフの儀式の時の様子を見たくて薄眼を開けてみたときがある。
ヴォルフの瞳には何の熱もなった。私がドキドキしているこれは、本当に作業と変わらなくて、ヴォルフにとっては何でもないことだとつくづく思い知らされた。それから、もうその時のヴォルフの様子を伺ったことはない。
だって、私が前より恥ずかしくて、心臓が飛び出そうなくらい緊張しているのに、ヴォルフが私のことを私が想うように思っていないことを知りたくなんてないから。
最初、ヴォルフは私にとって利用する相手でしかなかった。ヴォルフだってそうだ。ヴォルフは私を利用する相手としか見てなくて、付与魔法のために私をパーティに入れていた。ヴォルフはそれを最初巧妙に隠していたけど、ヴォルフの優しさが本当になるうち、漸く気付く。でも、お互い様で攻める気は無かったし、何よりその頃にはヴォルフが癖のように私に過保護になっているから、もうそれだけで充分だった。
いつからだろう、と考える。ヴォルフが近くにいると動悸が酷くて緊張してしまうようになったのは。私に向けられる笑顔に優越感を持つようになったのは。握られた手を離したくないと思うようになったのは。
いつのまにか、私は欲張りになっていた。
ヴォルフの彼女の受付嬢のミランダさんは、事あるごとに私を呼びつけ「ヴォルフは、あなたの魔法が必要だから優しくしてるだけ。勘違いしないことね」と釘を刺してくる。ミランダさんに言われなくたってそんなこと分かってる。
正直、彼女に図星を突かれて苦しかった。悲しかった。辛かった。でも、ヴォルフは、この誰よりも強く、凄い男が私の努力の結晶を認め執着している。それは、私を血筋とか見た目とか、そんなもの全部抜きで私自身を認めてくれたということ。貴族の時のまやかしみたいなものじゃなくて、今度は本物。私の実力が揺らがない限り絶対で、私がずっとずっと追い求めてきたもの。それが手に入ったのだから、それで満足すべきなのだ。
私の胸に咲いたこの恋心は無駄になる。
数多いた女性の中からミランダさんを選んで、ミランダさんはわざわざ私にその事実を告げてきた。だから、ヴォルフに手を出すなと。
見目麗しい彼女の私を睨む恐ろしい形相は、きっと彼女の内面を表している。ヴォルフにあんな女性は似合わないと正直思っている。でも、だからと言って私が選ばれることはないのだ。
あの手の早いヴォルフが三年、一緒に住んでいる女に手を出さないなんて、私のことをきっと女としてみていないのだ。大切にされてはいるから、ペットぐらいには思われていると思うけど。
確かに、パーティを組んで早々そういう奉仕はするつもりがないと断った。でも、もう一回誘われたら私はきっと断らないのに。だって、優しいヴォルフのことを知ってしまった。どんな理由であってもヴォルフの特別でいる恍惚感を私は味わってしまった。
きっと前より強く思っている。パーティを解消されたくないからじゃない。ヴォルフが好きだから。
ヴォルフに嫌われたくない。
ヴォルフに飽きられたくない。
ヴォルフに見捨てられたくない。
ヴォルフを不幸にしたくない。
いつしか、その想いは私の考えていたちっぽけな復讐や自尊心より上回っていた。
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この小説とこのユーザをお気に入り登録しているので、たまにお気に入りって何があったっけと見返しています。その時に久しぶりにこの小説を見つけて読みました。
女の子の方に視点変更してから、続きが気になる内容で終わっていましたので、続きが読みたくて感想を送ってみました。
これを読んでも、続きを書く気にならなければ、無視してくださって構いません。コメントも要らないですし、なんなら、承認もしなくていいです。
長文失礼しました。m(_ _)mm(_ _)m
クズ不器用×真っ直ぐピュアっ子、とても可愛いですね!
ヒーローがクズな物語だと、結構最後の方までヒロインが酷い目に合うことが多い為、ストレスが溜まってしまって正直あまり読まないのですが
こちらのお話は比較的早くヴォルフさんが
(エル限定で)闇堕ちならぬ光堕ち?してくれたので
ほのぼのした気持ちで読み進めています。
どうしようもない男が、特定の相手によって変わっていく
その相手だけにしか変えることができない、的な展開好きです…。
ツンデレやクーデレなどでも味わえる感覚ですが
クズヒーローの場合だと、クズであればあるほど
その後の変化が顕著で楽しいと思います。
これからヴォルフは、少しずつ自分の気持ちの名前を知っていくのかなー
とニヤニヤしつつ、その前にまずエルが無事に帰って来ることを祈ってます!
凄く面白いです!
私、この小説読むためにアプリをダウンロードしました。\( ⍢ )/
最初、利用するためだけの関係だったのに徐々に惹かれていく二人が凄く好きです!!
早く、二人に幸せになって欲しい所です( ᵕ̩̩ㅅᵕ̩̩ )
画面越しから二人を応援しています!
これからも楽しみにしています<(_ _)>
頑張ってください!!
お読み頂きありがとうございます!
ひえぇぇ!!!
なんと嬉しい言葉!
困りますよぉ〜。これから人と会うのに、ニマニマした顔が戻らなくなっちゃうじゃないですかぁ(*´∀`*)えへへ
基本、ハピエン主義なのでエルを幸せにしてみせます。
嬉しいご感想ありがとうございました!
毎日更新は少し難しいですが、早く二人を幸せにしますね!