あまいの、いくつほしい?

白湯すい

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本編

11.しあわせのクリーム

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「この苺についているシロップの味が全然違うんですね。ベースになっているクリームも、定番のベリータルトのよりも爽やかです」
「そうです、さすがですね。フルーツの加工の仕方自体を変えていて、下のディプロマットクリームもそれに合うように隠し味が入ってるんですよ」
「全体的にさっぱりしていて、夏らしくて良いですね」
 蓜島は話しながらもひと口ひと口、丁寧にフォークに乗せて味わいながら食べていく。几帳面で綺麗な食べ方は、品があって蓜島らしいと東は思う。

 次に蓜島が手を伸ばしたのはクリームたっぷりのカップシフォンケーキで、これも中身は苺が入っている。
「これはまた、とても可愛らしいです。上のふわふわしたものは…綿飴ですか?」
「そうなんです。こういうの女性客にはウケがいいんですが、蓜島さん的にはどうですか?」
 所謂ゆめかわ、というようなデザインに仕上げたそれは、一見すると蓜島には似合わない。けれど蓜島自身は、それを愛でるような優しい目で見つめている。
「良いと思います。東さんのケーキは愛らしくて、どこか非現実的な……非日常と言いますか、特別な時間を過ごせる気がして」
 どこまでもギャップの激しい人だなと東は思ってしまう。ぴしっと整えられた短い黒髪に神経質そうな切長の目元、服装もシックな大人の男性というような蓜島が、こういういかにもな可愛さを全肯定しているのだ。
「……仕事で疲れ切っていても、これがあればまた頑張ろうって思えるんです」
 本当に好きなんだな、甘いものが。よくよく観察しなければわからない程のリアクションでも、確かに甘い菓子を前に、癒しだとか愛おしさだとか、そういうものを感じているのがわかる。
 それに蓜島の言葉は、選び抜かれたものでありながら真っ直ぐで、きっとそのままに受け止めたらいいのだろうと思える不思議な力があった。

「んっ……」
 ぱくり、とまたひと口、蓜島は東の作ったそれを口に運ぶ。とびきり甘く口どけの良い綿菓子とクリームに、ふわふわに仕上げたシフォン、その中にはフレッシュな甘酸っぱい苺が潜む。
 蓜島はたまらず喉の奥から声にもなっていない声を漏らしてしまう。とても微かなその声を、東はちゃんと聞いていた。

 どうしよう。普通に、ちょっとエッチだな。東はそんな風に感じてしまっていた。

「……しあわせです」
 そんな東の戸惑いや緊張など露知らず、蓜島は口の中に広がる甘い幸せを堪能し、そんな言葉を告げた。
「…たまらないですね、これは。ちょっとダメになってしまいそうです」
 お願いだからこれ以上変な気を起こしそうな台詞を言わないでほしい、と東はそれなりに本気で思っていた。
「……甘すぎないですか?」
 東はそう聞くので精一杯だった。
「私は好きですよ」
「それは、よかった」

 レビューなんかはできないと言っていたけれど、それからも一品ずつきちんと感じたことを素直に言語化してくれた蓜島のおかげで、東の新メニューは望んでいたあと一歩を進められそうだった。
 それに関して感謝はしているものの、結局東はずっとドキドキしっぱなしであった。心臓に悪いから、今度蓜島に試食を頼むことがあればもう少し品数は減らそうと、そう心に誓ったのだった。
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