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本編
13.もう気付いてる
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月が変わり、八月になる。
難航したものの無事に店のショーケースには八月の新ケーキとタルトがひとつずつと、夏の間は定番として置く新しいゼリーをメインにしたデザートが並んだ。蓜島に試食をしてもらって得たヒントから、少しイメージを変えた自信作だった。
新商品の時期はいつも忙しく、今回も例に漏れず毎日慌ただしかった。しかしながら、今回のサブのデザートメニューは時短と量産が可能なレシピになっているうえ価格を安く設定しており、所謂ついで買いを誘発する目的のもので、その狙いは見事的中していた。
要するに、この夏は新商品が大当たりし、大繁盛である。自信作で結果が出せたし、時短と量産の案を出して数字を伸ばせた和山も手応えを感じているようだった。
東はなんとかして蓜島にお礼を伝えたいと考えていた。けれど、あの日のタイミングで連絡先を聞けたわけではなかった。思えばあの日が一番自然なタイミングだったと思う。
今日は月曜日、明日は定休日だ。この前の土曜日は、蓜島は来てくれていたのだろうか。そんなことばかりが気になっている自分に東は気付いている。
新商品が出たばかりの混雑で厨房にこもりっきりだったので、店頭の様子は知らなかった。和山に彼が来たかどうか、新作を買って行ってくれたかどうか聞く気には、何故かなれなかった。
和山は、良いやつだ。商売上手で合理的にものを考えすぎるところはあるけれど、人の気持ちがわからないやつではない。
だから、きっと東が蓜島のことを尋ねたところで、変に勘繰ったり揶揄ったりされるわけではない。それは知っているのに、それでも和山に話す気に今はなれない。
それでも東は、どこかでわかっていた。自分の中で芽生えたこのむず痒いような気持ちを大切に、誰にも秘密にしておきたいのだ。まだこの気持ちの正体はわからないけれど、きっといずれ、恐らくすぐ近い未来にわかると予感している。
「男同士だとか、まだどんな人かもよく知らないとか、言い訳ばっかり思いつくけど」
もやもや、ぐるぐると惑っている心の中でも、東の頭の中はどこか冷静で。
まるで朝の厨房に居るときみたいに、考えることややるべきことが多くても、ひとつひとつのことに丁寧に処理していくと、完成の道のりがはっきりと見えてくる。そうしてしっかり自分と向き合って導き出されたものには間違いがなくて、だからそれが例え未知のものであっても、不思議と不安にはならないものだ。
「そんな言い訳探してる時点で、もう答え出てるんだよな」
きっと自分は、蓜島のことが好きになりかけてる。そしてその気持ちが好きに変わるのには、あとほんの少しの後押しだけで済むのだろうと、東は気付いていた。
難航したものの無事に店のショーケースには八月の新ケーキとタルトがひとつずつと、夏の間は定番として置く新しいゼリーをメインにしたデザートが並んだ。蓜島に試食をしてもらって得たヒントから、少しイメージを変えた自信作だった。
新商品の時期はいつも忙しく、今回も例に漏れず毎日慌ただしかった。しかしながら、今回のサブのデザートメニューは時短と量産が可能なレシピになっているうえ価格を安く設定しており、所謂ついで買いを誘発する目的のもので、その狙いは見事的中していた。
要するに、この夏は新商品が大当たりし、大繁盛である。自信作で結果が出せたし、時短と量産の案を出して数字を伸ばせた和山も手応えを感じているようだった。
東はなんとかして蓜島にお礼を伝えたいと考えていた。けれど、あの日のタイミングで連絡先を聞けたわけではなかった。思えばあの日が一番自然なタイミングだったと思う。
今日は月曜日、明日は定休日だ。この前の土曜日は、蓜島は来てくれていたのだろうか。そんなことばかりが気になっている自分に東は気付いている。
新商品が出たばかりの混雑で厨房にこもりっきりだったので、店頭の様子は知らなかった。和山に彼が来たかどうか、新作を買って行ってくれたかどうか聞く気には、何故かなれなかった。
和山は、良いやつだ。商売上手で合理的にものを考えすぎるところはあるけれど、人の気持ちがわからないやつではない。
だから、きっと東が蓜島のことを尋ねたところで、変に勘繰ったり揶揄ったりされるわけではない。それは知っているのに、それでも和山に話す気に今はなれない。
それでも東は、どこかでわかっていた。自分の中で芽生えたこのむず痒いような気持ちを大切に、誰にも秘密にしておきたいのだ。まだこの気持ちの正体はわからないけれど、きっといずれ、恐らくすぐ近い未来にわかると予感している。
「男同士だとか、まだどんな人かもよく知らないとか、言い訳ばっかり思いつくけど」
もやもや、ぐるぐると惑っている心の中でも、東の頭の中はどこか冷静で。
まるで朝の厨房に居るときみたいに、考えることややるべきことが多くても、ひとつひとつのことに丁寧に処理していくと、完成の道のりがはっきりと見えてくる。そうしてしっかり自分と向き合って導き出されたものには間違いがなくて、だからそれが例え未知のものであっても、不思議と不安にはならないものだ。
「そんな言い訳探してる時点で、もう答え出てるんだよな」
きっと自分は、蓜島のことが好きになりかけてる。そしてその気持ちが好きに変わるのには、あとほんの少しの後押しだけで済むのだろうと、東は気付いていた。
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