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本編
20.デートしましょう
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「デートしませんか」
そう一言、東がメッセージを送ってきたのはあれから数日経った頃だった。
あの告白の日から、蓜島は真剣に東のことを考えていた。とは言え、あれから相変わらずのすれ違い生活を続けていたし、お互いの多忙が然程解決しているわけでもない。
そうなると、蓜島の中では「まだ東のことをよく知らない」という答えに行きつき、そこから先へ進むことはできなかった。「好きかどうか」の答えとして、「よく知らない」は適切ではない。事実ではあるが、回答にはなっておらず相応しくない。
我ながら理屈っぽすぎるとは蓜島も思っていたが、真剣に考えるがゆえの結論だ。なので、さらに東と知り合える機会の誘いをもらえることは喜ばしいことだった。
喜んでしまっている時点でなんだか答えが出てしまっているような気がして蓜島は少し悩んだが、せっかく考えるきっかけを彼がくれたのだからそれに甘えようと思った。
数日経ってもまだ答えが出せなかったはっきりしない男なのに、東はもういいよと見放さないでくれた。それだけ、真剣に想ってくれているということなのだろう。
そのことが、蓜島の胸をじんわりとあたたかくした。また彼に会える。そのときは、どんなにおいだろう?
隣の部屋に住んでいるというのに、その日は外で待ち合わせをしようと東は言ってきた。確かに家から一緒に出るデート、というのはなんだかちょっと違和感があるかもしれないと蓜島は思った。
約束の場所は、駅前の広場にある風変わりなオブジェが目印になる、待ち合わせの名所だった。少し早めの時間に着いたはずだったが、蓜島が着いたときにはもう東が立っていた。
「東さん」
声を掛けて手に持っていたスマートフォンから顔を上げた東は、やはり綺麗だった。少し遠くに見える東は、どこか異質な空気を感じる。きらきらと輝いていて、その美しさが普段通勤に使うような日常生活にある駅の風景に似合わない。この風景の中でたった一人だけ、絵画の世界から出てきたような、そんな雰囲気がある。
それなのに、蓜島の声と姿に気がついてパッと切り替わった人懐っこい笑顔はとても愛らしくて、親近感すら覚えるほどだった。東は蓜島のことを知るほどにギャップのある人間だと感じていたが、それは蓜島も同じだった。
「お待たせしてしまいましたか?」
「いえ、全然。僕もさっき来たとこです」
そんなベタなやりとりをするのも、お互いなんだかくすぐったい気持ちだった。東はそれに、堪えきれないという風にくすくすと笑い出した。
「やっぱり待ち合わせにして正解だったな。こういうの、デートっぽくないですか?」
「た、確かに」
東はその綺麗な見た目からは想像がつかないほどに、朗らかでノリの良い男だ。デートという言葉のチョイスもなんとなく蓜島は東らしいな、なんて考えていたが、いざ少し照れ笑いをしながらそう言われると、本当にこれはデートなんだと自覚せざるを得ない。蓜島はわずかに動揺したのだった。
ほんのりと綺麗なピンク色に頬を染めた彼は、ケーキを焼いてきたわけでもないだろうに、ひどく甘いにおいがした。
そう一言、東がメッセージを送ってきたのはあれから数日経った頃だった。
あの告白の日から、蓜島は真剣に東のことを考えていた。とは言え、あれから相変わらずのすれ違い生活を続けていたし、お互いの多忙が然程解決しているわけでもない。
そうなると、蓜島の中では「まだ東のことをよく知らない」という答えに行きつき、そこから先へ進むことはできなかった。「好きかどうか」の答えとして、「よく知らない」は適切ではない。事実ではあるが、回答にはなっておらず相応しくない。
我ながら理屈っぽすぎるとは蓜島も思っていたが、真剣に考えるがゆえの結論だ。なので、さらに東と知り合える機会の誘いをもらえることは喜ばしいことだった。
喜んでしまっている時点でなんだか答えが出てしまっているような気がして蓜島は少し悩んだが、せっかく考えるきっかけを彼がくれたのだからそれに甘えようと思った。
数日経ってもまだ答えが出せなかったはっきりしない男なのに、東はもういいよと見放さないでくれた。それだけ、真剣に想ってくれているということなのだろう。
そのことが、蓜島の胸をじんわりとあたたかくした。また彼に会える。そのときは、どんなにおいだろう?
隣の部屋に住んでいるというのに、その日は外で待ち合わせをしようと東は言ってきた。確かに家から一緒に出るデート、というのはなんだかちょっと違和感があるかもしれないと蓜島は思った。
約束の場所は、駅前の広場にある風変わりなオブジェが目印になる、待ち合わせの名所だった。少し早めの時間に着いたはずだったが、蓜島が着いたときにはもう東が立っていた。
「東さん」
声を掛けて手に持っていたスマートフォンから顔を上げた東は、やはり綺麗だった。少し遠くに見える東は、どこか異質な空気を感じる。きらきらと輝いていて、その美しさが普段通勤に使うような日常生活にある駅の風景に似合わない。この風景の中でたった一人だけ、絵画の世界から出てきたような、そんな雰囲気がある。
それなのに、蓜島の声と姿に気がついてパッと切り替わった人懐っこい笑顔はとても愛らしくて、親近感すら覚えるほどだった。東は蓜島のことを知るほどにギャップのある人間だと感じていたが、それは蓜島も同じだった。
「お待たせしてしまいましたか?」
「いえ、全然。僕もさっき来たとこです」
そんなベタなやりとりをするのも、お互いなんだかくすぐったい気持ちだった。東はそれに、堪えきれないという風にくすくすと笑い出した。
「やっぱり待ち合わせにして正解だったな。こういうの、デートっぽくないですか?」
「た、確かに」
東はその綺麗な見た目からは想像がつかないほどに、朗らかでノリの良い男だ。デートという言葉のチョイスもなんとなく蓜島は東らしいな、なんて考えていたが、いざ少し照れ笑いをしながらそう言われると、本当にこれはデートなんだと自覚せざるを得ない。蓜島はわずかに動揺したのだった。
ほんのりと綺麗なピンク色に頬を染めた彼は、ケーキを焼いてきたわけでもないだろうに、ひどく甘いにおいがした。
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