あまいの、いくつほしい?

白湯すい

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本編

23.ゆっくりでいい

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「……なんか、またデートしてほしいみたいに言っちゃいました」
「あ、私のほうこそ……」
「…また、したいって思ってくれたってことですか?」
「……はい」
 蓜島は、嘘のない男だ。明らかに頬を赤く染めながらこくりと小さく頷く蓜島の姿に、東の胸は高鳴る。ジワジワと蝉の声が響いて、心臓の音と共鳴するみたいで、ひどくうるさく感じる。

「……本当は、ちゃんと自覚して、答えをはっきりさせてからお伝えしたかったんです」
「……はい」
「でも、今日まではわからなかったんです。私は告白の答えを出すにはまだ東さんのことを知らな過ぎました」
 それまでは、少し交流を持っただけのお隣さんであり、客とパティシエ、ただそれだけだった。
「…今日、お誘いしてくれて、私は嬉しかったんです。それに、もっと話したい、もっと東さんのことが知りたい……もっと一緒に居たいと、私自身気付かないほどとても自然に、そう思いました」
「……っ、はい」
 蓜島の言葉はひとつひとつ、丁寧に緻密に、ぐるぐるとたくさん考えたことを紐解いていくように紡がれる。それは東の胸に優しく響き、じわりと染み渡っていくようだった。

「きっとそう思ったのは、東さんの今まで知らなかった表情をかわいいと感じたからです。話す言葉が心地よかったからです。私を好きだと言ってくれたその気持ちが……愛おしかったからです」
 自覚は遅れたけれど、蓜島が気付くよりも前から、きっと答えは出ていた。けれどそんな風に想いを言葉にして、深く理解しようとする生真面目なところが蓜島のいいところだと東は感じていた。

「返事が遅くなってしまい申し訳ありません。まだ間に合うのであれば、お伝えさせてください」
「……遅くなんてないですよ」
 ゆっくりでいい。そういうペースがいい。東はそれが一番良いと、心からそう思った。

「……よかった。東さん、私はあなたが好きです。これからも一緒に居たいです。私の恋人になってもらえますか?」

 そう言って差し出された蓜島の手を、東は泣きそうな顔でぎゅっと握りしめる。二人の手は、お互いに笑ってしまうくらい汗をかいていた。それは決して、暑い夏のせいだけではなかった。

「……おれも、蓜島さんが好き。大好きです。おれと付き合ってください」
「喜んで」

 二人目を合わせると、緊張の糸が切れたみたいに脱力した。思わず二人で笑い出してしまう。
「よかったあ」
「…ものすごく緊張しました」
「おれも」
 けらけらと笑う東と、流石の蓜島もいつものお堅い表情がすっかり緩んでしまっている。

「……これから、よろしくお願いします」
「私のほうこそ、よろしくお願いします」
 まるで引っ越しのときの挨拶みたいにお互い頭を下げて、それがなんだかおかしくて、また二人で笑った。
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