あまいの、いくつほしい?

白湯すい

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本編

58.いくつ欲しい? 終

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 それからの二人は、良い意味でとてもいつも通りだ。敢えて変わったことを挙げるとするならば、より距離感が近くなったことだろうか。

「ご馳走さまでした。蓜島さん、本当に料理上達しましたね」
「ええ、いつまでも作ってもらったり、買ったもので済ませるのも良くないですから」
 平日の夕飯や休みの日はほとんど一緒に過ごしている。家が隣同士だから、会うのも帰るのも気軽だ。毎日泊まるという訳でもないし、ご飯だけ一緒に食べるという日も多い。
 いつでも会えるけど、四六時中べったりというわけでもない。ほどよい距離感のまま、より親密になったという感じで、甘く穏やかな日々を過ごしている。



「ん、……はいしま、さん」
「……聡介さん、かわいいです」
「……っ、うん……」
 肌を合わせて、キスの合間に名前を呼び合う。
 蓜島はより甘やかに、東のことを下の名前で呼ぶようになった。東の実家での出来事から、そうしたほうが今後不都合がないと思った、という、なんとも蓜島らしい考えのもとそうすることにしたらしい。
 急な名前呼びに戸惑いむず痒くなってしまったとしても、蓜島から困り顔で「だめですか?」なんて言われてしまえば、東は断る術がない。
 東も本当は同じように名前で呼びたいとは思っているけれど、まだその名前を声に出すのも慣れていないし、どうしても気恥しさが拭えなかった。蓜島はそんな東に、ゆっくり自分のペースでいいしこのままでもいいと言ってくれた。

「あっ、ん……っ、そこ、や」
「気持ちいいですか?」
「きもちい、ぅ、んっ…」
 蓜島の指が胸の先をすりすりと擦りあげると、そこは次第にピンと主張してくる。
 始めは触られても気持ちいいと感じることは難しかったけれど、いつしかむずむずと快楽が生まれ滲んで、全身に広がるようになった。
「聡介さん、少しずつ感じやすくなってきましたね」
「うっ、んぅ……そう言われると、恥ずかし、んですけど……っ」
「私は嬉しいですよ」
「ひゃ、うっ!」
 そう言いながら胸の先に吸いつくようなキスをされると、あられもない声が出てしまう。たまらず蓜島の頭をぎゅっと抱きしめると、そのままそこをぺろりと舐められ、同時に背中側にまわされた手で後ろの穴を優しくくすぐられる。
「……いいですか?」
「……はい」
 だから、上目遣いで聞いてくるのはダメだって、と東は思う。そんなふうに言われたら、思わず東の身体も疼いてしまう。蓜島に抱かれる気持ち良さを、もう覚えてしまったから。


「あっ、ふ、んんっ……はいしま、さん……っ」
「痛くはないですか?」
「ふ、痛そうに、見えます……?」
「見えない……です」
 律儀に毎回東のことを気遣う蓜島に、東は思わず笑ってしまう。
 普段は綺麗にまとめられてる髪は乱れ、陶器のようにさらりと白い肌は汗で濡れ、赤く火照っている。形の良い眉は切なく寄せられ、艶やかな唇からは熱い息が漏れ出る。
 繋がっている場所はローションでぐずぐずに濡れていながらも、蓜島が少し動くたびにきゅうきゅうと甘く締めつける。奥の感じるところに触れてほしくて、腰は僅かに揺れてしまっている。

 目に見えるすべてが、肌で感じられるすべてが、気持ちいいと物語っていた。こんな姿を見せられて、東が無理をしているんじゃないかなんて気にかけるほうが野暮に思えた。
「中で感じるの、上手になってきましたね」
「んっ、奥……っきもち、よくて……あっ、そこ……!」
「ここ、好きでしょう?」
 東の感じるところを的確に刺激していく蓜島。蓜島には、もうすべてを知られてしまっている。きっと、東自身が知らない東のことまでも。
 初めてのときはうまく気持ちよさを感じることはできなかった。それが今はもうどこを触られても気持ちよくなってしまう。

 恥ずかしいけれど、そんな東のことを蓜島は心底愛おしそうに見つめるものだから、蓜島が喜んでくれているのなら、それでいいかと思える。

 自分が本当に感じていることを伝える怖さなんて、蓜島の前ではもう思い出すことさえなかった。



 二人の甘い夜は、まだ続く。
 シャワーを浴びて汗を流したら、東が思い出したように話し始めた。
「そういえば今日また新作の試作したんで、食べますか?」
「もちろん食べます。こんな時間にとなると、なんだかいけない気持ちになりますね……」
 東の言葉に蓜島はいつも仏頂面をほんの少しゆるめ、彼の周りにはぽわぽわと花が咲いたようだった。
「蓜島さん、かわいいですね」
「そ、そうでしょうか?」
「ふふふ。ケーキあるって、する前に言えばよかったですね」
「う……それは、どちらも誘惑に勝てなかったと思うので……」
 そんな素直な様子は先程自分を抱いていた男とは思えないくらいに可愛らしい。かわいいと言われて戸惑う顔も、自分と自分のケーキを何より好きでいてくれるところも。

 ただのひとりの客とパティシエでしかなかったときは知らなかった。こんなにもお互いを好きになれるなんて。自分がこんなにも恋に夢中になっていくなんて。
 でもそれも、今与え合っている分だけじゃ、全然足りないとも思っている。

 自分にだけ向けられるその甘やかな笑顔が、もっともっと欲しくなって。欲しがることで花咲く笑顔にもまた焦がれて。
 ガラスケースに並ぶキラキラと輝くような綺麗で甘いお菓子をひとつだけ選ぶなんて、大好きだからこそ、そんなことはできるはずもなかった。

 きっとこれからも、こうして二人で、どんどん欲張りになっていく。

「ねえ、甘いのいくつ、欲しいですか?」



***

End.
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