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むかしのはなし(3)
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「東くんってさ、なんでここ来たの? もっと上のとこ行けたんでしょ。もっと上の学校だったらこんなくだらないいちゃもんつけてくるやつも少ないんじゃないの」
「あー……おれさ、こんなんだから、中学でも同じような感じで。ちょっとしたいじめみたいな…そこまでではないんだけど。嫌なことしてきてたグループがひとつ上のランクの高校行くって聞いてたから……」
「あ~……なるほどね」
田舎町だから、高校の選択肢も少なかった。道理で、と和山は納得する。
「和山くんだって、おれより勉強できるんじゃん。主席入学って聞いてびっくりしたんだから」
「俺は二年からの選択コースで選びたいのがあったからだよ。大学もそっち系狙ってるし」
「わあ、ちゃんとした理由だ」
「まあお前のだって大事な理由だと思うよ。いくら勉強ができても頭が悪い奴とは距離を置くしかない」
和山がそう言うと、東はへへ、と情けなく笑う。傷ついたその笑い方になんだかもやもやして、和山もつい話したことのないことを東に聞かせてしまう。
「……俺はさ、家族とあんま仲良くないから。はやく家を出たくてそのための道を進んでるし、少しでも家にいたくないから家から遠い学校にしたんだ。……そんな立派なもんじゃないよ」
「……そう、だったんだ」
東は和山が思った通り、こんな話をしても「家族は大事にしなきゃだめだよ」なんてことを言ってくるやつではなかった。和山はそのことに、顔には出さなかったがほっとした。
親に感謝しなきゃ、悪く言うもんじゃない。そんなことは、誰にだってあてはまるものじゃない。和山自身、そんなことはわかりたくなかった。そうでありたくはなかった。だから、そう言ってくる人の気持ちもわからなくはない。
だったら、この俺の苦しい気持ちはどうなる? どうしようもないこの家族が嫌いだという感情はどこへやればいい?
和山は幼少期に起きた『とある出来事』が原因で、ずっとそういう気持ちを持ちながら苦しんでいた。
「まあ、いろいろあるよね」
だからこそ、東が下手に踏み込まず、哀れむこともなく、そう言って受け流してくれたことが和山は嬉しかった。
きっと東は怖くて聞けなかっただけだと笑うだろうが、東は無意識にそういうところがある。変に察しがよくて、その上で不躾に入り込まないように一定の距離を保つ。その性格が、和山にとっては心地よかった。
その日を境に、二人は少しずつ親交を深めていった。
なるべくはやく家に帰りたくないと言っていた和山に付き合って東も一緒に時間を潰してくれることがちょっとずつ増えていった。
「あのさ、和山が嫌じゃなかったら、うち泊まっていったら? どうしても嫌だってときには使ってもいいよ」
「そんな、家の人に迷惑だろ」
「え~? 多分迷惑なんて思わないよ。弟もしょっちゅう友達連れてきてるし。むしろおれに友達できたって知ったら喜ぶかも」
友達。東はそう言って笑った。そうか、俺たちって友達か。
和山は他人事のようにそう思った。
東とは気づけば色々なことを隠さずに話すようになってしまっていた。和山も人のことは言えないくらいに人と関わってこなかったから、友達とはっきり言えるような存在は東が初めてだったかもしれないと思った。
「もちろん和山が嫌じゃなければだけど」
「嫌なわけない。……東の家族なら、会ってみたいし」
和山がそう言うと、東はぱっと明るく笑った。それから、東の家で過ごす時間も増えた。
「あー……おれさ、こんなんだから、中学でも同じような感じで。ちょっとしたいじめみたいな…そこまでではないんだけど。嫌なことしてきてたグループがひとつ上のランクの高校行くって聞いてたから……」
「あ~……なるほどね」
田舎町だから、高校の選択肢も少なかった。道理で、と和山は納得する。
「和山くんだって、おれより勉強できるんじゃん。主席入学って聞いてびっくりしたんだから」
「俺は二年からの選択コースで選びたいのがあったからだよ。大学もそっち系狙ってるし」
「わあ、ちゃんとした理由だ」
「まあお前のだって大事な理由だと思うよ。いくら勉強ができても頭が悪い奴とは距離を置くしかない」
和山がそう言うと、東はへへ、と情けなく笑う。傷ついたその笑い方になんだかもやもやして、和山もつい話したことのないことを東に聞かせてしまう。
「……俺はさ、家族とあんま仲良くないから。はやく家を出たくてそのための道を進んでるし、少しでも家にいたくないから家から遠い学校にしたんだ。……そんな立派なもんじゃないよ」
「……そう、だったんだ」
東は和山が思った通り、こんな話をしても「家族は大事にしなきゃだめだよ」なんてことを言ってくるやつではなかった。和山はそのことに、顔には出さなかったがほっとした。
親に感謝しなきゃ、悪く言うもんじゃない。そんなことは、誰にだってあてはまるものじゃない。和山自身、そんなことはわかりたくなかった。そうでありたくはなかった。だから、そう言ってくる人の気持ちもわからなくはない。
だったら、この俺の苦しい気持ちはどうなる? どうしようもないこの家族が嫌いだという感情はどこへやればいい?
和山は幼少期に起きた『とある出来事』が原因で、ずっとそういう気持ちを持ちながら苦しんでいた。
「まあ、いろいろあるよね」
だからこそ、東が下手に踏み込まず、哀れむこともなく、そう言って受け流してくれたことが和山は嬉しかった。
きっと東は怖くて聞けなかっただけだと笑うだろうが、東は無意識にそういうところがある。変に察しがよくて、その上で不躾に入り込まないように一定の距離を保つ。その性格が、和山にとっては心地よかった。
その日を境に、二人は少しずつ親交を深めていった。
なるべくはやく家に帰りたくないと言っていた和山に付き合って東も一緒に時間を潰してくれることがちょっとずつ増えていった。
「あのさ、和山が嫌じゃなかったら、うち泊まっていったら? どうしても嫌だってときには使ってもいいよ」
「そんな、家の人に迷惑だろ」
「え~? 多分迷惑なんて思わないよ。弟もしょっちゅう友達連れてきてるし。むしろおれに友達できたって知ったら喜ぶかも」
友達。東はそう言って笑った。そうか、俺たちって友達か。
和山は他人事のようにそう思った。
東とは気づけば色々なことを隠さずに話すようになってしまっていた。和山も人のことは言えないくらいに人と関わってこなかったから、友達とはっきり言えるような存在は東が初めてだったかもしれないと思った。
「もちろん和山が嫌じゃなければだけど」
「嫌なわけない。……東の家族なら、会ってみたいし」
和山がそう言うと、東はぱっと明るく笑った。それから、東の家で過ごす時間も増えた。
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