あまいの、いくつほしい?

白湯すい

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むかしのはなし(4) 終

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「和山くん、今日も泊まっていきなさいよ。和山くんの好きなもの晩ごはんに作ってあげる」
「ただいま~、わやまくん来てるの? ねえまたゲームやろうよ!」
「和山くん、うちのトマトが美味しくできたから食べていきなさい」
 東一家はすっかり和山のことを気に入った。みんな和山が驚いてしまうくらいに明るくて朗らかで優しくて、ちょっとお節介なくらいだ。世話好きで人に構うのが好きなこの人たちの中で育ったから東聡介という男はこんなにもふにゃふにゃなのかもしれないと和山は思った。

 和山自身も、自分の親が何も言わないのをいいことに、東家に入り浸ってしまっていた。それほどに、東のところは居心地がよかった。
「和山くんはいい子ね。本当にうちの子になってくれたら毎日楽しいのに」
 東の母は和山の家庭環境を知っているわけではない。だから何の他意もなく、和山にそう言って笑ってくれた。
 それが、その後の和山の大きな支えとなった言葉だった。


 始めは互いに打ち解けられなかったのに、それが信じられなくなるほどに東と和山は固い絆で結ばれていった。
 普通の仲良しとはまた違う。学校ではべったりいつでも一緒ということでもないが、昼休みは一緒に食事をとるし、帰りは一緒に帰っていく。周りの生徒からしたら、きっと奇妙な関係に見えただろう。

 あの裏庭での話をしてからも、東は完璧にうまくやっていたわけではない。優等生の和山とつるむようになってからいじめのような陰口ややっかみはかなり減ったものの、相変わらず浴びせられる心無い言葉で傷ついたり、好きになった女の子には「東くんの隣に立ちたくない」「他の女子たちになんて言われるかわからないから嫌」なんてことを言われてふられていたりした。
 和山はそのたびに、東のいいところは見た目じゃねーのにな、と考えていた。

「また泣いてんの」
「……だって、うう……」
 東は落ち込むと、あの初めてちゃんと話した裏庭でひっそりと泣いていた。そういうときは決まって、和山がそばにいてくれた。励ますでもなく、一緒に泣いたり怒ったりするわけでもなく。

 東にとってそのことが、なんだか心強かった。
「おれ、はやく大人になりたいな。大人になってこの町を出て、いつか自分のお店を持つんだ」
 東はこの頃から既にお菓子作りをしていて、ヘタな店で買うよりもずっとクオリティの高いものを作っていた。
「東の店か。売り方を考えればすごいことになりそう。絶対人気になるよ」
「ほんと? 和山がそのへんやってくれたら、心強いだろうな」
 東はきっと、何気ない気持ちでそう言ったのだろうと和山は思う。それが本当に未来のかたちになるとは思っていなかったはずだ。

「いいよ、やろうよ。俺は経営学やるつもりだったし、東のケーキ俺は好きだから」
「ほんとに一緒にやってくれるの? めっちゃ嬉しいんだけど、それ」

 このときは将来なんて漠然としか見えていなかった。それでも、それぞれの弱さを補いあって支え合う二人なら大丈夫なんじゃないかと予感していた。

 その予感はそう遠くない未来に、もっとたくさんの困難を乗り越えた先に実現していくことになる。
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