あまいの、いくつほしい?

白湯すい

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いつか熟して、あまくなる

歓迎会

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 ある夜、新しいスタッフの二人のちょっとした歓迎会のようなものが開かれた。珍しく販売スタッフたちも全員を交えた大人数での食事会だった。大人数とは言っても十人以下だが、なかなか新しいメンバーというものが増えなかったジュジュでは珍しい催しだった。
 スタッフたちはみんな穏やかでのんびりとした人だった。東が嫌がらないようにそういう人を選んだのだが、こういう食事会のときには騒がしくなりすぎず落ち着いた雰囲気で過ごせることは和山もよかったなと思うところだった。
「卯月くんと三上さんが入ってからすごいよね、わたしたちも目が回っちゃう」
「ほんとに! でもお客さんたちみんな嬉しそうでよかったよね~」
「わかる。なんでも選べちゃいますね~ってニコニコしてる人増えた」
 二人が加わった良い影響は他のスタッフたちにも伝わっていて、みんなそれを大変だけど嬉しい、と話している。

「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいです」
「ねえ、卯月くん毎日頑張ってるもの」
「三上さんが支えてくれるからですよ~」
 卯月と三上もずいぶん仲が良くなった。おっとりと優しい三上と明るく元気な卯月のコンビはスタッフ間でも癒されると話題だった。確かに二人ともかわいらしい雰囲気で、見ていて和む気持ちはわかると和山も東も頷いて聞いていた。


「わやまさぁん、僕酔っちゃいましたぁ」
「げ、誰だ卯月に酒飲ませたの」

 そろそろお開きにしようかと声をかけようとした頃、頬を染めてへろへろになっている卯月が和山のそばに寄ってきた。
 こいつ酒弱かったのか、と面倒くさく思いつつも、頼られたら断れないのが和山だった。

「みんな、そろそろ遅くなるし解散。女子は駅までちゃんとまとまって行けよ。最寄りから家までタクシー使ったら領収書貰って次の出勤のときに出して」
「はーい」
 食事会とはいえ少し酒も入っているみんなもほろ酔いという感じだ。でも節度は守っているのでべろべろというわけでもない。和山のきびきびとした指示出しにゆるい返事がくる。
 限度を超えてしまっていたのは卯月だけのようだった。

 みんなそれぞれ帰路についていく。残ったのは東と和山とほとんど潰れかけの卯月だけだった。
「東も帰っていいよ。卯月くんは俺が送っていくから」
「任せちゃっていいの?」
「いいよ、俺は車だから飲んでないし」
「わかった、じゃあお願いね」

 そんな流れで、和山はふらふらとしている卯月を駐車場まで連れていき、車に乗せた。
「卯月くん、住所言える? さすがに履歴書の住所覚えてないよ俺」
「……わやまさん」

 卯月はそこまでつぶれているという訳ではない。ただ少し目がとろんと虚ろになっていて、ぼーっとしているくらいだった。だから意思疎通は普通にできるはずだった。
 しかし、和山がナビの準備をしながらそう尋ねても返事は返ってこなかった。代わりに小さく名前を呼ぶ声がする。

「……帰りたくないです」
「……は?」
「…………」

 帰りたくない。卯月はそう言ってから、何も言わなくなってしまった。
 驚いた和山が後部座席を振り返ると、卯月の表情はぼーっとしているだけではない、ひどく寂しそうな顔をしていた。
 卯月に何があったのかは知らない。どういう理由でそういう気持ちになっているのかもわからない。

 けれど、寂しさが胸をいっぱいにしてしまって、帰りたくないと思う気持ちには、覚えがあった。
 だから和山は、どうしてとか、帰らなくても大丈夫なのかとか、そういう当たり前ことを聞き返す気にはなれなかった。

「……じゃあ、今日は俺の家に来るか?」
「え、」
 卯月はまさか和山がそう言ってくれるとは思っていなかったから、少し驚いていた。
「……いいんですか?」
「俺は別にいいよ。俺の家が嫌だったら適当にホテルとかでもいいし」
「いやじゃないです。むしろ和山さんが僕をあげるの嫌だったら、ホテルでも……」
「構わないよ。家で吐かれたらちょっと嫌だけど」
「は、吐かないです。そこまで酔ってないです」
 卯月はそれなりにきちんと受け答えはできているし、気遣いができる程度には意識もはっきりしているみたいだった。
 それなら一人でなんとかしろと投げ出すことは和山はしない。

「じゃ、ウチおいで」
「……はい、ありがとうございます」
 和山はそのまま車を出す。いつもは仕事終わりにひとりで車を走らせるのに、後ろに人を乗せるなんていつぶりだろうか。なんだか変な気分だった。
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